1.キュウリ促成栽培
スワルスキーを利用したIPMプログラムの多くの実証試験事例からキュウリ黄化えそ病媒介虫であるミナミキイロアザミウマの密度を低レベルに抑えることでこのウィルス病の発生率が低下することが分かってきました。IPMプログラム導入は、キュウリ黄化えそ病発生地域における1つの重要な対応策であると考えています。
IPMプログラムをうまく成功させる鍵は、褐斑病耐病性品種を利用してなるべく殺菌剤の使用を抑え、スワルスキーカブリダニの定着、増殖を促し、カブリダニ密度を長期間維持させることです。
促成栽培では、定植から翌年の2月中旬までは通常の防除暦に従った慣行防除を実施して構いません。3月中旬~4月上旬のスワルスキー放飼を目標として、影響があるけれど必要な薬剤であるジマンダイセン、ハチハチ乳剤散布も2月中旬までは可能です。その後の必要な殺菌剤選定は影響のない薬剤に切り替えてください。
定植から翌年3月スワルスキー放飼までの作業
■なるべく早めに物理的防除資材の設置をしてください
・アザミウマ対策 ホリバー ブルー 100枚/10a ・コナジラミ対策 ホリバー イエロー 100枚/10a ・防虫ネット(サンサンネット目合い0.6mm以下又はスリムホワイト30等)
■定植時粒剤処理: スタークル/アルバリン 粒剤等
■定植日から2月中旬まで ・防除暦に従った慣行防除(残効性の長い有機リン剤、ピレスロイド剤は除く)
・アザミウマの発生有無にかかわらず、ハチハチ乳剤のような高活性を期待できる薬剤を散布し、アザミウマ密度をゼロにする。
・褐斑病、ベと病などでポリカーバメート系薬剤を利用するのも2月中旬までに行なう。
■スワルスキー放飼2週間前にボタニガードES+アファーム乳剤を処理してください。
■3月中旬~4月上旬にスワルスキー放飼 ・スワルスキー放飼量 2本/10a
■スワルスキー放飼後2週間は薬剤の散布は控えてください。
■放飼後の対応 ・殺菌剤は影響のない薬剤より選定(オーソサイド、セイビアー、カスミンボルドー、ランマン、ゲッター、フォリオブラボ、ベフドー、スミブレンド、ダコニール1000、カンタス等)
・殺虫剤は影響のない薬剤より選定(マイコタール、ウララ、スタークル/アルバリン、アクタラ等)
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2. ナス促成栽培
ナス促成栽培におけるIPMプログラムの時期別作業は、アリスタIPM通信第5号にその詳細を掲載したところですが、再度、1月以降3月までのポイントを説明します。
■1月の作業 ・アザミウマの発生有無にかかわらず、アファーム乳剤やハチハチ乳剤のような高活性を期待できる薬剤を散布し、アザミウマ密度をゼロにする。
■2月~3月中旬(スワルスキー春放飼前)
・この時期にアザミウマ密度が増加した場合には、3月中旬のスワルスキー放飼までに影響の残らない薬剤を利用する。
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ポイント: ナス促成栽培では、1月の厳寒期はスワルスキー密度が極端に低下します。ここで無理にスワルスキーを温存させようとして薬剤散布を控えると、3月以降アザミウマ密度の急激な復活につながるということが分かりました。この時期は、あくまでアザミウマ密度をゼロにすることを心がけ、影響があってもアファーム乳剤やハチハチ乳剤などの効果の確実な薬剤を利用してください。
3. ナス促成栽培
12月~1月定植の作型と、定植を1~2ヶ月遅らせた作型がありますが、スワルスキーの放飼は西日本では3月中旬を目安に、近畿から東日本にかけては3月下旬~4月下旬に実施することがポイントとなります。 スワルスキー放飼から逆算した1月以降の作業について示します。
定植から放飼までの作業
■物理的防除資材の設置
・アザミウマ対策 ホリバー ブルー 100枚/10a
・防虫ネット(サンサンネット目合い1mm以下又はスリムホワイト30等)
■定植時粒剤処理:スタークル/アルバリン、ベストガード粒剤等
■定植日からスワルスキー放飼予定時期まで40日以上の間隔のある場合
・アザミウマの発生有無にかかわらず、スワルスキー放飼の40日前までにハチハチ乳剤などの高活性を期待できる薬剤を散布し、アザミウマ密度をゼロにする。
■定植日からスワルスキー放飼予定時期まで1ヶ月以内の場合
・スワルスキー放飼の14日前までに、アザミウマの発生有無にかかわらず、アファーム、スピノエース、コテツ、スタークル/アルバリン、ベストガード等とボタニガードESを混用して散布し、アザミウマ密度をゼロにする。(薬剤の選択に当ってはハチの影響日数にご注意下さい)
■スワルスキー放飼が近づいてきたら
・スワルスキー放飼後2週間は定着促進のために薬剤散布を控えることが望ましい為、スワルスキー放飼前に殺菌剤を散布しておく。アザミウマが見られる場合は必ずボタニガードES+プレオを散布する。
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4. ピーマン、パプリカ、シシトウ等の促成栽培
ピーマン、パプリカ、シシトウなどの施設栽培は夜温管理が他の作物に比べて高く、厳寒期でもスワルスキーカブリダニは十分な密度を維持している傾向にあります。このため厳寒期から春期にかけてアザミウマ、コナジラミの発生も低密度に抑えられ春期におけるスワルスキーの追加放飼が必ず必要という訳ではありません。
しかし、シシトウでのヒラズハナアザミウマの要防除水準(被害がでる密度)は低いため、シシトウでのヒラズハナアザミウマの対策は十分な対応をしていく必要があります。そのために、2月上旬にヒラズハナアザミウマの発生が見られる場合には、スワルスキーに影響があっても効果が高い薬剤 (例えばボタニガードESと スピノエースの混用等)で一度ヒラズハナアザミウマの密度をできる限りゼロにしたうえで、3月上旬にスワルスキーを再放飼することもひとつの方法です。この場合、ホリバー ブルーの設置(100枚/10a)は必ず行う必要があります。
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