ボタニガードESは、ボーベリア バシアーナ菌GHA株という糸状菌の胞子を含む乳剤タイプの微生物殺虫剤です。コナジラミ類、アザミウマ類、チョウ目の幼虫類(コナガ、アオムシ、オオタバコガ等)に感染性があり、この糸状菌の胞子が害虫の体表面に付着し、発芽後に菌糸がその体内に侵入して感染が起きます。化学農薬の抵抗性の有無に関わらず対象害虫に対して効果があるために多くの栽培現場で利用性が高まっています。また、創刊号で特集しましたように化学農薬と混用した場合に対象害虫の死亡率が各薬剤の単独処理に比べて高く発現されます。
1.ヒラズハナアザミウマの薬剤感受性の低下
近年、イチゴだけでなく多くの果菜類において本種の被害が顕著になってきています。本種の被害一因には野外からの飛込みもあり、施設の側窓など開放部に防虫ネットを展張して侵入阻止をすることも重要な防除手段ですが、イチゴのように施設内の温度上昇に敏感な作物ではこの手段が利用できない場合もあります。イチゴでの本種の被害は、着果不良や奇形果の発生で品質、収量に大きく影響してきます。
防除薬剤としては、有機リン剤、ピレスロイド剤、ネオニコチノイド系薬剤、マクロライド系薬剤などがありますが、多くの薬剤で感受性の低下が目立ってきています。
2. イチゴ栽培でのヒラズハナアザミウマ防除プログラム
イチゴの促成栽培では、ハダニ防除を主体にビニル被覆後にスパイカルEX、スパイデックスを放飼しています。しかしアザミウマ類が目立ってくると、カブリダニに影響の少ない薬剤によるアザミウマ防除に限界がでてきます。従って、2月中旬~下旬を目処にまず幼虫対策でボタニガードESとスピノエース顆粒水和剤の混用を推奨しています。その後、ハダニ防除のためのカブリダニを温存させておきたい3月頃までは、ボタニガードES とIGR系薬剤の混用を推奨しています。地域によりますが、4月になるとハダニ防除よりもアザミウマ類防除がより深刻になってきますので、カブリダニに影響がある薬剤でもボタニガードESと混用して防除をしていくと有効です。イチゴに登録のある薬剤とその特徴を 表1.に示し、上記のプログラムを模式的に図1.に示しましたので参考にして下さい。本記事の内容の一部は、全国農業改良普及職員協議会機関誌 「技術と普及」2011年1月号(p.40-41)の静岡県東部農林事務所・藤浪裕幸主査の記事においても記載されておりますのでそちらも参考になさってください。
表1.イチゴでアザミウマに対して登録のある薬剤とその特徴
|
|
|
図1.イチゴ栽培でのヒラズハナアザミウマ防除プログラムモデル
|
|
3. トマトでのタバココナジラミ防除対策
タバココナジラミとこれを媒介虫とするトマト黄化葉巻病は既に関東地方以北へも拡大し、深刻な問題となっています。さらに、アザミウマ類と同様に防除薬剤に対する感受性の低下が多数報告されています。
一方、ボタニガードESはコナジラミ類の幼虫、成虫に対して高い感染性を有し、抵抗性の有無に関わらず使用することが可能です。本剤のタバココナジラミ各成育ステージに対する感受性を図2.に示しました。
ボタニガードESに対する感受性は、若令幼虫時期に高く、また成虫に対しても効果的です。しかし、卵、4令幼虫、蛹の時期の感受性は著しく低下します。
従って、ボタニガードES の上手な使い方として第1回目散布時に感受性の低いステージにあったコナジラミが成長する約5日~7日後に再度散布することで、より有効に密度を抑制できます。 |
|
|