アリスタ通信 <フィールドアドバイザーの声> 私の農家訪問記
 
 
<フィールドアドバイザーの声> 私の農家訪問記
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
福岡営業所 フィールドアドバイザー 吉田 修一

私は3年前にアリスタ ライフサイエンスの特約店を定年退職した後、弊社のフィールドアドバイザーとして活動しております。特別な技術力があるわけでもない私は、特約店時代の経験やJA、種苗店、肥料店、農家との人脈を活用して奈良県を中心に活動をしています。

そのような活動で、初めて天敵を利用して良い経験と実績を得られた生産者 瀧本様の事例を紹介いたします。

瀧本様は、奈良県広陵町でイチゴ、ナス、スイカ、トマト、キュウリ、水稲を栽培する複合農家で、ご本人の裕彦様、奥様、ご長男、ご長男の奥様の4人で営農なさっています。自宅前での販売のほか、スーパーや道の駅への販売に力を入れられている篤農家です。また農作業の省力化にも注力されていて、様々な機械化や栽培方法に工夫なさっています。幸いな事に瀧本様と私は特約店時代から化学農薬でのお付き合いもあり、年齢も同じ年で また私の高校時代の同級生や県内の生産者との共通の知人も多く親近感をもって接してくださっています。

現在、奈良県は、いちごの天敵普及が進んでおります(普及率60%程度、弊社算出)。そんな中、瀧本様は、天敵を利用した栽培の経験はなく、県内の天敵利用生産者様から効果についての高評価や情報は聞いておられたのですが、やはり天敵放飼と農薬の影響が難しいとの声もあり、天敵を利用した栽培を躊躇なさっていました。そんな中、弊社オリジナルのイチゴカレンダーとリーフレットを用い、天敵導入の流れや農薬の影響日数などを説明し、ご理解を頂いた上で、天敵を利用したイチゴ栽培を試みることとなりました。早速に試験圃場 (高設ハウス) に導入する 「スパスパトリオ*」 の注文を頂き、管轄するJA職員に連絡いたしました。 
*編集部注: スパスパトリオはスパイカルEX 1本とスパイデックス 3本のセット商品の名称です。

放飼当日は初めての天敵放飼とあって瀧本様とご長男、そして特約店営業担当者様と私で放飼方法の講習を兼ねての放飼となりました。面積がちょうど10aの高設ハウスで、天敵混用放飼器に「スパイカルEX (ミヤコカブリダニ剤)」 と 「スパイデックス (チリカブリダニ剤)」 を交互に投入してグルグルと攪拌し、放飼量を見計らう線を放飼器にマジックインクで付けて、約1m置きに放飼を行い、瀧本様もご長男もダニ剤農薬散布の労力に比べ余りの簡便さに驚かれた様子でした。なお、このハウスでは、天敵放飼以降収穫終了までの間にダニ剤の散布は皆無で終わることが出来ました。また特約店営業担当者様は、初めての天敵放飼作業体験をスマホで動画撮影し、天敵の営業活動の中で活用されているそうです。

イチゴでの天敵放飼のメリットを実感して頂いた瀧本様からは、「ナスのハダニとアザミウマに有効な天敵は何か?」  「スイカのアブラムシに有効な天敵は何か?」 と次々にご質問いただき、半促成ナスハウスで 「スパイカルEX」  と 「スワルスキー(スワルスキーカブリダニ剤)」 の利用を提案し、春3月奈良二月堂のお水取り (奈良では本格的な春を告げる行事)  後を目安に放飼する事になりました。

ここで役立ったのがイチゴで使用したスパスパトリオの付属品、混用放飼用の容器でした。混用放飼器に「スパイカルEX」 と 「スワルスキー」 を入れて、イチゴの時と同じように使用することで省力化に繋がりました。このハウスでも天敵の効果は著しく、放飼後収穫終了までダニ剤とアザミウマ剤の散布は皆無で終わることが出来ました。また、当時の試験の中で、特約店営業担当様と共に、目視やルーペを用いた現地での害虫の発生や天敵の定着を確認する経験を多く持つことができました。

更に露地ナスでの 「スパイカルEX」 と 「スワルスキー」 の放飼へと繋がっていきました。6月下旬に放飼をしたのですが、梅雨時期でもあり放飼後1週間程は小雨、その後土砂降りの雨が何日も続き、天敵が全て流されたのではないかと心配する程でした。終わってみれば、ハウスに比べて天敵の増殖は少ないものの、天敵放飼後から収穫終了までダニ剤とアザミウマ剤の散布は皆無で終わることが出来ました。

成功続きの天敵利用ではありましたが、一つの失敗事例を紹介します。
瀧本様は、スイカもハウスで栽培していらっしゃいます。6月中旬頃の田植えの時期とスイカのアブラムシ発生時期が重なってしまい防除が遅れがちになってしまうとの相談を受け、「アフィパール (コレマンアブラバチ剤)」 利用を提案しました。先ずは「アフィバンク (バンカープラント)」 設置から始めたのですが、私の経験不足で、未だ気温が低い時期であった為に 「アフィバンク」 設置までに 麦(天敵温存植物/バンカープラント) の生育が間に合いませんでした。小さな麦に 「アフィバンク」 を設置したことで 「アフィバンク」 から移動したムギクビレアブラムシが十分に増殖せず、効果不足が生じました。今はそれを教訓にしております。

複合農家である瀧本様と共に取り組んだ、イチゴ、ナス、スイカの天敵利用事例を紹介させて頂きました。今後の私の課題は、近隣農家様へのバイオスティミュラントやマルハナバチも含めた生物資材を利用したIPM (総合的病害虫管理) 技術の提案、普及であると考えております。


瀧本 裕彦さん
瀧本 裕彦さん

※2023年8月8日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。