アリスタ通信 タマネギ・葉ネギにおけるネギアザミウマに対する各種薬剤の殺虫効果
 
 
<フィールドアドバイザーの声> 北海道特産の作物 「てん菜」 について
 
アリスタ ライフサイエンス(株) 
札幌営業所 フィールドアドバイザー 渡辺 康宏

1.はじめに
北海道の耕地面積は1,143,000ha、国内の約4分の1を占めている。地域によって気候や土地の状態が異なるため、多様な農産物が栽培されています。

作物別では牧草地500,000ha、麦類126,100ha、水稲96,000ha、豆類67,600ha、てん菜55,200ha、馬鈴薯49,600ha、たまねぎ14,600haなどが栽培されています。生産量が全国1位の作物は小麦・大豆・たまねぎ・馬鈴薯・てん菜があります。特に、てん菜は北海道の輪作体系において欠かせない作物になります。札幌営業所も化学農薬 「オルトラン水和剤」、「トクチオン乳剤」、「セレクト乳剤」 をてん菜・たまねぎ・大豆の害虫・雑草防除に販売しています。

2.てん菜って何?
てん菜 (甜菜) は砂糖の原料となるヒユ科 (旧アカザ科) の植物です。ビート又は砂糖大根と呼ばれているが、アブラナ科のダイコンとはほど遠く、ホウレンソウの仲間になります。

「舌に甘い」 と書くが、生のままだと 「えぐ味」 があるので生食には適しません。日本で砂糖といえば、「サトウキビ」 を思い浮かべますが、ヨーロッパで砂糖と言えば、てん菜からのものをさします。全世界の砂糖消費量の約30%、日本では約25%がてん菜から作られた砂糖で占められています。原産地は地中海・カスピ海からコーカサス地方とされており、夏は高温乾燥、冬は雨量の多い地域でした。しかし、現在は温帯から亜寒帯の地域で栽培されている為に寒冷地作物と呼ばれています。

栽培は古くから行われていましたが、砂糖用のてん菜が栽培されたのは18世紀半ばに飼料用ビートから砂糖を分離することに成功してからになります。日本の製糖業は1879年に道内2ヶ所 (現在の伊達市と札幌市) に工場が建設されたことに始まりました。後に、2工場は原料不足、技術の未熟、経営力の不備などから閉鎖されました (札幌市の工場は後にビール工場に転用となり、工場敷地は現在観光名所となっているサッポロビール園に様変わりしています)。しばらくの間、中断していた日本の製糖業は第一次世界大戦による砂糖価格の暴騰を受けてビート栽培が本格化し、1919年に北海道製糖  (現:日本甜菜製糖株式会社) が帯広製糖所を建設しました。その後、ホクレン農業協同組合連合会と北海道糖業株式会社を加えた2社1団体で今日に至っています。

3.てん菜の病害虫とアリスタ剤について
てん菜の生育ステージと病害虫の発生消長を模式図にしたアリスタ暦(札幌営業所作成)を添付します。

※上の図の拡大画像はこちら(別ウインドウで開きます)


てん菜に被害を及ぼす病害虫としては、病害で褐斑病、そう根病、黒根病、葉腐病及び根腐病があり、害虫ではヨトウガ、テンサイトビハムシ、テンサイモグリハナバエ、アブラムシ、カメノコハムシ、アシグロハモグリバエ及びシロオビノメイガなどが問題になります。特に褐斑病やヨトウガが発生すると地上部の茎葉が消失し、根部の重量や糖含量が低下して甚大な被害となります。2008年以後に、てん菜の主要産地である十勝・オホーツク地方で大発生し、甚大な被害を与えたテンサイ黄化病 (旧 西部萎黄病) があります。黄化病はモモアカアブラムシにより媒介され、てん菜に感染することで発生するウイルス病です。黄化病は2017年~2018年にピークを迎えた感があり、近年では本病の発生は減少してきています。

製糖会社は防除暦 (防除予定表) を作成し、生産者に配布・説明しています。防除暦には、てん菜の生育ステージに応じて、発生が見込まれる病害虫・雑草を防除するためのスケジュールが薬剤名、使用方法などを含めて記載されています。これを確実に実施することで、突発的な発生を除き確実に防除できるようにしています。当然、てん菜向けの農薬を販売するには製糖会社の防除暦に採用されることがキーになります。

製糖会社 (オホーツク地方) の防除暦には1化期のヨトウガとアブラムシの同時防除剤として 「ネオニコチノイドとIGRの混合剤」 又は 「有機リン (クロルピリホス剤)」 が指導されています。アブラムシの発生が少なくなった地域では、1化期のヨトウガに残効性に優れた 「オルトラン水和剤」 を、カメノコハムシや2化期のヨトウガとハダニの発生が確認された時には総合防除の 「トクチオン乳剤」 を提案しています。

4.おわりに
生産者のコスト負担と効果のバランスを考えた提案をしていくことで、有機リン剤の効果を維持した防除体系をアリスタとして推進していきたいと考えています。

※2023年8月8日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。