IYSVの感染拡大を防ぐためには、タマネギ、葉ネギ含め、地域全体でネギアザミウマの密度を低く抑える必要があります。しかし、同産地における、各薬剤のネギアザミウマに対する殺虫効果は10年以上調査されていなかったため、プロチオホス乳剤
(商品名:トクチオン乳剤) やアセフェート水和剤 (商品名:オルトラン水和剤) を含め、近年、使用されている主な薬剤の殺虫効果は不明でした。そこで、タマネギ、葉ネギ栽培の現地指導に供することを目的に、ネギアザミウマ雌成虫に対する各薬剤の殺虫効果を調査しました。
2021年4月中旬から5月上旬にかけて、同産地内のタマネギ圃場6地区からネギアザミウマを採集しました。そのうち3地区(地区①~③)
については、同一地区内に葉ネギ圃場が混在しており、採集を行ったタマネギ圃場と近接する圃場から採集を行いました。
殺虫効果の評価は、柴尾 (2013) に準じて、インゲンマメ葉片を用いた食餌浸漬法と容器内部に供試薬液を処理するドライフィルム法を組み合わせて行い、採集した当代または次世代を供試虫としました。
各薬剤の殺虫効果は次ページの表の通りとなりました (冨原・田中、2022)。
全地区で補正死虫率が90%以上の殺虫効果を示した薬剤は、プロチオホス乳剤 (トクチオン乳剤)、アセフェート水和剤
(オルトラン水和剤※注)、フルキサメタミド乳剤およびフロメトキン水和剤の計4剤でした。
※注 オルトラン水和剤は、2023年6月現在、「ねぎ」での作物登録はないため、使用しないこと。
一方、合成ピレスロイド系のA乳剤 (IRACコード: 3A)、ネオニコチノイド系のB水溶剤 (同: 4A)、スピノシン系のC水和剤
(同: 5) は、殺虫効果に地区間で差が認められました。特にタマネギ圃場と葉ネギ圃場が混在する地区 (地区①~③)
では、両作物ともに殺虫効果が低くなりました。
また、若干のばらつきはありますが、同一地区内のタマネギと葉ネギ圃場における3剤の補正死虫率は同程度となる傾向が認められました。その要因として、両作物間をネギアザミウマが行き来することにより、各圃場における殺虫効果に影響を与えたことが考えられました。