イチゴ栽培では、スパイカルEX(ミヤコカブリダニ剤) +スパイデックス(チリカブリダニ剤)
の利用が普及しました。現在、アザミウマの天敵である 「リモニカ(リモニカスカブリダニ剤)」 と 「ククメリス(ククメリスカブリダニ剤)」
の利用者も増えてきたところです。実用化に向けた試験に御協力いただいた生産者の皆さん、JAの指導員や県の普及指導員の皆さんには感謝いたします。
ところが、普及が進んだ現状でも、天敵カブリダニの定着・増殖が思わしくないと相談を受けることがあります。まずは天敵導入前からの農薬散布履歴を確認するわけですが、影響日数については、弊社の資料や指導機関からの情報をもとに徹底されており、化学農薬が原因と考えられることは多くありません。そんな時に確認したいのがハウスの温湿度管理です。
下の表にイチゴで利用されるカブリダニ4種の温湿度適性を示します。それぞれの活動可能温湿度を厳寒期のハウスでどれだけ長時間保つことができるか、カブリダニ利用が成功するための大きなポイントです。暖房機で加温しているハウスでは、最低気温10℃以上を維持している場合が多く、温度面では天敵利用に支障はありません。しかし、特に軒の高いハウスは乾燥しやすく、湿度を保つ工夫が必要です。
高設栽培では、草勢維持のために通路やベンチ下に積極的に散水して湿度を保っている事例がありますが、このようなハウスでは、カブリダニ類の定着も良好です。一方、ウォーターカーテン保温のハウスでは、最低気温10℃以上を維持している所は少ないのではないでしょうか。設定温度6℃というハウスも少なくありません。しかもウォーターカーテンの散水量が少ないと保温効果が落ちるので、実際の最低気温が設定温度を下回っていることもあります。
また、太平洋側の地域では、厳寒期=異常乾燥期間でもあります。特にパイプハウスでは、換気による湿度低下が著しいことにも注意が必要です。冬にメガネが曇らないハウスが時々ありますが、かなりの乾燥が考えられます。厳寒期のハウス内の温湿度を高めることは、カブリダニ類の定着・増殖に有効で、草勢維持にもつながります。一方で、うどんこ病や灰色かび病の発生を助長し、害虫の増殖にも好条件になってしまいます。
イチゴ生産者が様々な条件を踏また上で温度・湿度を設定しているので、いきなり変更することは難しいですが、カブリダニ類の定着・増殖が思わしくない場合は、温湿度の実態を把握した上で、改善を検討することをお勧めします。