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神奈川県「梨園/天敵資材を利用した難防除ハダニ対策」
~普及活動を通じて~
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アリスタ ライフサイエンス(株)
営業本部 東京営業所 川﨑 寛之
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【課題と天敵利用の背景】
神奈川県川崎エリアの梨栽培では、大きな三つの課題がありました。
①ナミハダニの薬剤抵抗性が確認され、化学農薬/殺ダニ剤を散布してもハダニ被害を抑制できない現状
②梨園の周囲に住宅地や公共施設等があり (都市部故に)、薬剤散布による住民や環境へのドリフト問題
③省力化(労力軽減) が挙げられます。そこで、この現状を打破すべく、神奈川県及び川崎市、農協等の協力のもと、ハダニ天敵となるミヤコカブリダニ剤
「スパイカルプラス (吊り下げタイプ)」 を基軸にしたIPM防除技術の普及に取り組んできた歴史があります。
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【活動内容】
① 講習会の開催
毎年5月、川崎市農業技術支援センター内 梨園で、生産者参集のもと講習会を開催します。
主に 「スパイカルプラス」 の使用法や設置方法等を実演説明します。
毎回参加者が一体となり、熱を帯びた講習会には感銘を受けるばかりです。ここに産地としてハダニ対策に真剣に取り組む姿勢「プライド」を感じることができます。
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<参考: スパイカルプラスの使用方法>
使用時期: 6月上旬 使用量: 1~5パック/樹 (約140パック/10a)
「スパイカルプラス」 設置前に殺虫剤/ダニ剤含を散布、害虫密度を下げる(天敵への影響日数注意)。天敵導入後もハダニ発生状況を観察し、天敵に影響が少ない農薬/ダニ剤のレスキュー散布に備える。
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② 圃場巡回
毎年6月から8月にかけて、県技術員・農協営農部等と協力して圃場巡回を行います。 6月は、新規天敵利用者を中心に「スパイカルプラス」の共同設置、7~8月は定期的に天敵の定着やハダニ、その他害虫の発生状況の調査を行います。ハダニの発生状況によっては、天敵に影響が少ない化学農薬/殺ダニ剤の散布等の提案も行います。常に、生産者と密接に関わることで、天敵による防除価の安定と生産者の不安解消を心がけています。
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【新しい取り組み】
① 神奈川県横浜エリア/ミヤコカブリダニ剤の本格導入
今シーズン、横浜エリアで 「スパイカルプラス」 の本格的な導入が開始されます。
川崎エリア同様、薬剤抵抗性問題、梨園周辺住宅地への化学農薬ドリフト問題の解決、生産者の省力化(人工授粉の手間などの労力軽減)
を主目的としています。
このエリアでは、新規天敵利用者が多数あり、天敵に対する不安を抱いている生産者が多くいます。講習会や定期的な圃場巡回を通して、生産者の課題や不安を払拭する手助けができればと思います。
② 在来種/クロマルハナバチを利用した受粉への取り組み
【課題: 生産者の声】
・ 人工授粉作業そのものが手間であること
・ 人工授粉用の花粉の精製が手間であることと、中国からの輸入花粉に頼っている購入花粉の入手が不安定であること
・ 気候変動などにより、これまで品種間でズレていた開花期が重なり、人工授粉が間に合わないこと
【メリット】
・ 品質向上/着果率・果形向上、省力化、花粉の調達が不要なので購入価や入手時期に悩まされない
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これまで、着果率の向上を目的にクロマルハナバチによる交配試験を実施してきました。その中で、クロマルハナバチによる受粉によって、着果率だけでなく果形の向上等の結果を得ることができました。まさに、生産者や関係機関の協力と努力の賜物です。
その結晶として、今シーズンからクロマルハナバチ資材「ナチュポール・ブラック」の本格的な導入が始まりました。
3月下旬、開花に合わせて 「ナチュポール・ブラック」 を導入する圃場を巡回し、設置方法等を説明。生産者と共同で
「ナチュポール・ブラック」 を圃場に設置しました。秋の収穫が楽しみですね。
※クロマルハナバチの利用には、鳥害防止や逃亡阻止を目的に、多目的防災網やハチネット等の展張が必要です。
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【活動を通じて感じたこと】
普及活動を通じて、生産者のリアルな声(課題)をより近くで耳にする機会が多くなりました。自社製品で 「この課題を解決することができないか!」
とワクワクしながらも苦闘する毎日です。
この神奈川県における天敵製剤 「スパイカルプラス」 の普及は、苦しみながらも楽しく 生産者の声を成功に導いた良い事例ではないでしょうか。やはり、生産者はじめ関係機関が一体となり、情熱をもって取り組むことが重要である
と改めて感じた次第です。
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今後、この「スパイカルプラス」を利用した技術を神奈川県から関東一円の産地へと広げていき、生産者の課題を解決できればと考えています。
どの産地でも、薬剤抵抗性問題、担い手や人手不足問題、周辺住宅への環境問題等を抱えているのが実情です。
私たちは、これまで同様に生産者に寄り添いながらこの課題解決に取り組んでいきたいです。 |
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※2023年4月28日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。
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