アリスタ通信 アスコフィラム・ノドサムを利用したバイオスティミュラント ―後編―
 
 
アスコフィラム・ノドサムを利用したバイオスティミュラント ―後編―
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
バイオスティミュラント プロダクトマネージャー 須藤 修

【アスコフィラム・ノドサム抽出物(以下、ANE:Ascophyllum nodosum extract) の代表的な商品例】

① ルーターⓇ (Nutrient enhancer)
海藻抽出物入り肥料 「ルーター」 は天然オリゴ糖、りん酸、カリウムを含むバイオスティミュラントです。栄養吸収に関わる各種酵素を活性化し、植物が本来持っている能力を呼び起こします。ストレスの多い環境下でも高品質、増収へと導きます。

ルータールーター

【ルーターの特長】
■ 海藻由来の有効成分である天然のオリゴ糖の効果で、肥料吸収と肥料の利用効率がアップします。
■ 大きく粒ぞろいの良い収穫物を提供します。秀品率がアップし、廃棄ロスの軽減に寄与します。
■ 育苗期に使用することにより、移植時のストレスに強くなります。
■ 光合成を活発にして、より早いサイクルでの収穫が期待できます。
■ 複合液肥GA3号(輸第104262号)液状複合肥料

【ルーターの作用機作】
■ 硝酸還元酵素の働きを活性化し、アミノ酸やタンパク質の合成を促します。
■ 土壌中の有機態リン酸を加水分解し、植物が利用可能な状態にします。
■ 土壌中の3価鉄を還元して利用可能な状態にすると同時に鉄分子の取り入れ口であるIRT(2価鉄トランスポータ)を活性化します。
■最終的に光合成を活発にし、糖や炭水化物(バイオマス)の増大に寄与します。

アスコフィラム・ノドサムを利用したバイオスティミュラント

【ルーターの効果】
●ほうれんそう
試験場所: 茨城県牛久市(露地栽培)
品種: ミストラル
播種日: 2017年8月30日
散布時期: 第1回 発芽時、第2回 4~5葉期、第3回 8~10葉期
ルーターの効果

ルーターⓇをほうれんそうの初期生長ステージより散布処理することによって、収穫時の地上部重の増加が確認されました。また、無処理区に比較してサイズのばらつきが少なく、秀品率が向上しました。
ルーターの効果

●ブロッコリー
試験場所: 北海道長沼町
品種: トップスター
播種日: 2021年7月19日
散布時期: 育苗期1回散布
ルーターの効果

結果
ルーターの効果
ルーターⓇを育苗期に1回処理することにより、ブロッコリーの花蕾重の増加が認められました。また、慣行区に比べ、サイズのばらつきが少なく、秀品率も向上しました。
ルーターの効果

糖度(BRIX)とビタミンC含量は慣行区に比べ増加しており、味の改善が期待できます。また、硝酸イオン濃度が低いため、徒長を抑え、健全な生育が出来ていたことが伺え、日持ちの改善も期待できます。



② タフプラントチャージ、タフプラントカラー (Fruits setter)
海藻抽出物入り肥料 「タフプラントⓇ」 シリーズは、果樹用のバイオスティミュラント製品です。「タフプラントⓇチャージ」 は着果~果実肥大期に、「タフプラントⓇカラー」 は着色期に使用します。均一な果実肥大と豊かな果実の色づきで、果実の価値を高めます。
タフプラントチャージ、タフプラントカラー

タフプラントチャージ、タフプラントカラー


【果実サイズの均一化、品質改善の作用】
りんごやぶどうなどの果実は、ポリアミンという物質が開花から幼果期に多く合成されます。経験的にポリアミン含有量の多い果実はサイズや品質の均一性が良好になる傾向が確認されています。タフプラントチャージを葉面散布することによって、ポリアミン含有濃度が増え、結果的に均一性の優れた果実が提供できました。

果実サイズの均一化、品質改善の作用

果実サイズの均一化、品質改善の作用

【果実着色促進・着色の早期化の作用】
近年の気候変動により秋口の夜温が高めに推移しています。このため、生理的にアントシアニン合成に切り替わりにくくなり、りんごの着色は全国的に悪くなっています。タフプラントカラーはANEと亜リン酸が処方された製品です。亜リン酸には健全性の向上、結実や着色の改善効果があると言われています。
果実サイズの均一化、品質改善の作用

【終わりに】
バイオスティミュラントは、植物やその周辺環境が本来持つ自然な力を活用することにより、植物の健全さ、ストレスへの耐性、収量と品質、収穫後の状態及び貯蔵などについて、植物に良好な影響を与えるものです。しかし、施用場面によってはストレスの程度が軽微である場合や、散布タイミングが不適切な場合など、望みの効果が得られないという事例も数多くあります。少なくとも数年間の反復の中で、栽培体系にマッチしたバイオスティミュラントの適切な使用方法を確立していくことをお勧めします。

参考文献
Shukla et al. Ascophyllum nodosum-Based Biostimulants: Sustainable Applications in Agriculture for the Stimulation of Plant Growth, Stress Tolerance, and Disease Management / Article in Frontiers in Plant Science · May 2019
Turan, M., and Köse, C. (2004). Seaweed extracts improve copper uptake of grapevine. Acta Agric. Scand. Sect. B Soil Plant Sci. 54,
Cassan, L., Jeannin, I., Lamaze, T., and Morot-Gaudry, J. F. (1992). The effect of the Ascophyllum nodosum extract Goëmar GA 14 on the growth of spinach.
Bot. Mar. 35,
Chrysargyris, A., Xylia, P., Anastasiou, M., Pantelides, I., and Tzortzakis, N. (2018). Effects of Ascophyllum nodosum seaweed extracts on lettuce growth, physiology and fresh-cut salad storage under potassium deficiency. J. Sci. Food Agric. 98,
Basak, A. (2008). Effect of preharvest treatment with seaweed products, Kelpak R and Goëmar BM 86 R , on fruit quality in apple. Int. J. Fruit Sci. 8
Norrie, J., Branson, T., and Keathley, P. E. (2002). Marine plant extracts impact on grape yield and quality. Acta Hortic. 594



※2023年2月9日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。