アリスタ通信生産者の声(いちご、スパスパトリオ+スパイデックス)
 
 
<生産者の声>
佐賀県の新ブランド‘いちごさん’をカブリダニとマルハナバチで安定生産!
佐賀県神埼市千代田町(JAさが・神埼地域) 中島 辰義様・美千子様 ご夫妻
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
フィールドアドバイザー 嶽本弘之

今、九州最大の河川、「筑後川」の北側に広がる水田地帯の真ん中にいる。直線の水路に区切られた大きな水田が並んでいる。ところどころに、ビニールハウスがあって、風景にアクセントをつけている。

ここは佐賀県神埼市千代田町、主力の米麦大豆に加え、ビニールハウスではイチゴやアスパラガスの生産が盛んである。

今回は、この地で長年にわたりイチゴを生産し、佐賀県の新ブランド ‘いちごさん’ の安定生産に取り組んでいる中島さんご夫妻を紹介する。なお、神埼市千代田町は、不朽の名作 「次郎物語」 の作者である下村 湖人と、上半身裸のお笑いタレント 江頭2:50という、対照的な偉人・異人を生んでいて、この町の懐の深さを感じる。
中島 辰義様・美千子様 ご夫妻
仲睦まじい中島さんご夫婦

就農当時を振り返る
中島 辰義さんは昭和31年生まれの64才。実家は水稲と麦の専業農家だったが、「農業では飯が食えん」と、高校卒業後に農機具メーカーに就職。しかし、22才で一念発起し、就農と同時にハウスでイチゴ栽培を始めた。同じ年に、2つ年上の美千子さんと結婚 (ちなみに、年上女房の家系だそうだ)。神埼地域は50年以上の歴史を誇るイチゴの産地で、『イチゴは儲かるぜ』 という先輩生産者の言葉を鵜呑みにして、いきなり600坪のハウスを建てた。しかし、イチゴ栽培はそうそう簡単ではなく、ここから苦労が始まった。

最強のハダニ、そして失敗に終わった天敵への初挑戦
イチゴを始めた時の品種は ‘はるのか’、その後、‘とよのか’、‘さちのか’ を経て、‘さがほのか’ を2018年までの約15年間栽培した。その間、多くの問題に悩まされたが、ハダニの防除が最も厄介だった。
力技で農薬を散布し続けたが、散布しても散布してもなかなかハダニが減ってくれない。いつしか、中島ハウスのハダニは ‘最強のハダニ’ になってしまった。そのころ、イチゴでのカブリダニの利用が始まっていて、仲間の生産者からカブリダニの話を聞きつけ、さっそく、「農薬を使う感覚」 でカブリダニを放してみた。放した時にはすでにハダニが多く、ハダニは減るどころか増えてしまった。自称 「短気で心配性」 の中島さんは、我慢できずにすぐにリセット。ここに 『10日でリセット』 の逸話が誕生した。当時はまだ、カブリダニの体系的な利用法や 『ゼロ放飼』 の考えが生産者に浸透していなかった。

‘いちごさん’ で、再挑戦
佐賀県は、2018年に ‘いちごさん’ を開発し、新しいブランドとして生産を振興している。中島さんも2019年から840坪のハウスを全面的に ‘いちごさん’ に切り替えた。‘いちごさん’ は、品種の開発段階から ‘さがほのか’ と同じく、ハダニが増えやすいことが分かっていた。
中島さんは、「もう、ハダニで苦労したくない。今度こそ、カブリダニでうまく防除したい」 という決意で、JAと普及センターの協力をもとに、カブリダニの利用に取り組んだ。試したのは、『スパスパトリオ (スパイカルEX (ミヤコカブリダニ剤) 1本+スパイデックス (チリカブリダニ剤) 3本)』 と 『スパイデックス』 の体系。
2019年は放飼した時にはすでにハダニがめだち、年内はハダニが多発。それでも、中島さんは(短気で心配性だけど)、ぐっと我慢、スパイデックスを追加放飼し、ハウスの温湿度を高く設定して、カブリダニが増えるのを待った。すると、カブリダニが爆発的に増加し、ハダニは激減、イチゴ株の勢いは劇的に回復し、栽培終了まで維持された。ここで、中島さんは 「天敵すごいぜ」 を実感し、「我慢する」 ことを学んだ。
2020年はハダニがほぼいない状態で放飼ができた。部分的にハダニは増えても、カブリダニの働きで、伝家の宝刀 ‘ダニオーテ’ を抜くまでもなく、ハダニの被害を栽培終盤まで抑制している。

カブリダニは凄か
二年間の試験を経験して、カブリダニに対する評価がはっきりした。一言でいうと 「カブリダニは凄か」。中島さんにとって、カブリダニを使いたい一番の理由は、「農薬散布はきつい。農薬を使わずに楽をしたい」。環境にやさしいとか、減農薬といったきれいごとではない。カブリダニを放飼することで、収穫に追われる時期に、きつい目をして農薬を散布する必要がなくなった。まさに、所期の目的を達成した。
しかし、カブリダニのメリットはそれだけではない。カブリダニを使うと農薬散布が少なくなるから、「ハチの飛びがいい」、「ハチが長持ちする」、「奇形果が少ない」、「果実がきれい、汚れない」、「株の勢いがいい」 と、いいことづくめ。
カブリダニ利用のポイントを聞いたところ、「効果が現れるまで、我慢すること」 との答え。我慢できるためには、「我慢すれば成功するという体験が必要」。つまり 「我慢と成功体験」 がポイントだという。

マルハナバチ、決して高い保険ではない
中島さんがイチゴの栽培でハダニ以外に気にしているのが、ミツバチによる授粉。ミツバチの働きは時として不安定で、農薬散布の影響を受けやすく、温度が低くなったり、曇天が続くと、不受精や奇形果が発生してしまう。イチゴは受粉・着果しないと何にもならない。そこで、中島さんは10年くらい前からクロマルハナバチ(ナチュポールブラック) をミツバチと併用している。具体的には、420坪のハウス2棟に対し、1番果房の開花の頃に1箱、12月下旬頃に2箱、2月下旬頃に1箱設置。「カブリダニを年内から利用する場合には、1番果房の開花時期のマルハナバチは欠かせない」と中島さんは言う。「カブリダニを放飼する前にハダニをゼロにするために農薬を散布すると、どうしてもミツバチの飛びが悪くなる。大事な頂果が台無しになる心配がある」。その点、「マルハナバチを早めに導入していれば、その心配は全くない」。ミツバチに加え、マルハナバチを使うとコストは高くなるが、農薬散布の影響や天候不順について何も心配することはない。「保険と思えば、決して高くない」と笑い飛ばす。

今季のイチゴ栽培も終盤に差し掛かった3月下旬の暖かい日、イチゴハウスの外で、ご夫妻とJAの営農指導員、普及指導員が車座になってイチゴ談義。

今季はアザミウマとコナジラミが多いというくだりになると、二人が口を揃えて「アザミウマとコナジラミも天敵を使って、できるだけ農薬に頼らずに防除したい。」
ご夫妻の挑戦はまだまだ続く。
生産者の声(いちご、スパスパトリオ+スパイデックス)
※2021年4月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。