アリスタ通信 都市近郊ナシ園における天敵殺虫剤「スパイカルプラス」を用いたハダニ防除技術の普及と課題
 
 
都市近郊ナシ園における天敵殺虫剤「スパイカルプラス」を用いた
ハダニ防除技術の普及と課題
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
プロダクトマネージャー 田中 栄嗣

近年、都市近郊のナシ栽培における課題として、ナミハダニ(Tetranychus urticae)の防除が挙げられます。これまで、ハダニ類に対する防除は、化学的防除(殺ダニ剤)に大きく依存してきました。その中、ナミハダニにおいては、多くの殺ダニ剤に対する薬剤感受性の低下が報告されており、特に関東近郊のナシ園で問題が顕在化しています。化学殺虫・ダニ剤のみ用いた慣行防除だけでは、ハダニ類の被害を抑えることが出来ないため、天敵殺虫剤 ミヤコカブリダニや微生物殺虫剤を併用した防除体系(IPM)への見直しが必要とされています。
改めて、弊社ミヤコカブリダニ剤 「スパイカルプラス」 の製品特徴と効果的な使用方法、また、ナシ園における有効性および今後の課題のについて述べさせていただき、一層の普及推進につなげていきたいと考えています。

<スパイカルプラス>
「スパイカルプラス」 は、捕食性天敵ミヤコカブリダニと 餌としてサヤアシニクダニが紙袋パックに小分充填された製品です。紙製パック内で餌を捕食し増殖したミヤコカブリダニが数週間にかけて紙製パックから放出され、作物上に広がり、持続的な防除効果を発揮します。
現在、天敵殺虫剤として市販されているミヤコカブリダニ剤には、剤型がボトル剤と吊り下げ型パック剤もの2種類、餌が入っているものと入っていないものに分けられます。弊社のミヤコカブリダニ剤は、ボトル剤のスパイカルEXを含め全てに餌が含まれており、輸送・一時保管時に品質が低下することなく、有効成分であるミヤコカブリダニの活性が高い状態でご利用者のもとにお届けできます。

<ミヤコカブリダニ生物学的情報>

<効果的な使用および定着確認方法>
有効成分であるミヤコカブリダニは、花粉や微小生物などを餌にして植物上や圃場内の雑草上で増殖することが出来るため、ハダニ発生前に放飼して定着させることが成功のカギになります。なお、ミヤコカブリダニの放飼前にハダニが発生していると、ミヤコカブリダニだけでは抑えきれません。導入前に殺ダニ剤を用い、ハダニを徹底防除した後に天敵を放飼することを推奨しております。
効果的な使用および定着確認方法
   
夏のハダニ増殖前に、葉が生い茂る5月下旬~6月に「スパイカルプラス」を、一樹に3~4パックを装着します。ミヤコカブリダニは、ハダニが発生している葉裏を集中的に見回すことで、定着を確認することができます。なお、ハダニの発生が少ない時期は、ミヤコカブリダニを見つけることが難しくなります。ハダニの発生に合わせ、ミヤコカブリダニも確認しやすくなることが一般的です。ナシ園など露地栽培において 「スパイカルプラス」 を使用する際、雨水対策として専用防水袋を提供しています。
   
多目的防災網の設置は、雹害や風害の軽減につながると共に大型害虫の侵入を抑制し、天敵昆虫などに影響のある殺虫剤の使用を控えることにつながります。結果、土着天敵を含めたカブリダニ類の増殖や定着が促進されます。
効果的な使用および定着確認方法

<ナシ園ハダニ防除における 「スパイカルプラス」 の有用性>
都市近郊に立地するナシ園において、ハダニ防除を目的とした頻度の高い化学農薬の散布は、近隣住民への配慮が必要不可欠であり、課題の一つです。天敵殺虫剤を用い、化学殺虫剤の散布頻度を下げることができます。
「スパイカルプラス」 放飼後、ミヤコカブリダニに影響の少ない選択制殺虫・殺ダニ剤を使用することで土着天敵 (ニセラーゴカブリダニ、コウズケカブリダニ、ミチノクカブリダニなど) の温存につながり、相乗効果が期待できます。
化学的防除に依存した体系において、長雨により薬剤散布機会の減少など十分に防除が出来なかった場合、梅雨明け後、急にハダニなどの害虫が増加することがあります。「スパイカルプラス」 を梅雨時期前に放飼することで、長雨が続いている間もハダニの密度増加を抑制し、梅雨明け後のハダニ増加を最小限に抑えることができます。

<ナシ園病害虫対策における今後の課題>
天敵殺虫剤を利用に伴い化学殺虫・ダニ剤の使用を制限することでアブラムシ、ニセナシサビダニ、シンクイガ、カイガラムシの発生が増加しやすくなります。今後、選択性殺虫、殺ダニ剤に加え、天敵殺虫剤や微生物殺虫剤を組み合わせたIPM体系の構築が必要とされています。
「スパイカルプラス」 放飼後、ミヤコカブリダニに影響の少ない選択制殺虫・殺ダニ剤を使用することで土着天敵 (ニセラーゴカブリダニ、コウズケカブリダニ、ミチノクカブリダニなど) の温存につながり、相乗効果が期待できます。

※2021年4月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。