アリスタ通信 生産者の声(いちご、スパイカルEX、スパイデックス、ミニポール・ブラック、ククメリス、アフィパール)
熊本県 鍬守 芳寿さん
 
 
生産者の声 イチゴ作で天敵利用15年・地域農業の若きリーダー
熊本県宇土市網田町(JA熊本うき網田支所)
鍬守 芳寿(くわもり よしかず) さん
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
熊本県 IPMフィールドアドバイザー 荒木 均

宇土市は、熊本県のほぼ中央に位置する温暖な海岸島しょ地域。キリシタン大名 小西 行長の居城、江戸時代には細川藩御用窯の網田 (おうだ) 焼きなどなど歴史や文化が栄えた地域である。また、海岸沿いから眺望できる 「有明海の干潟」 は、景行天皇の時代から景勝地として観光客も大変多い。農業面では、古くから果樹地域として知られ、明治時代に和歌山県からワシントンネーブルが導入され、皇族方への献上品として扱われ全国4大ネーブル産地の一つとして知られている。

「暮らしてよし、農業によし、景観もよし」 の宇土市網田町で、篤農家として100年生にもなるネーブルやデコポンなどの果樹作とイチゴ作などを親子世代夫婦で営まれている。JA熊本うき  イチゴ部会(54戸・11ha)では、部会ぐるみでの天敵利用によるハダニ防除が始まったが、鍬守さんは、先駆けること15年前から天敵利用による減農薬栽培に取り組まれてきた。
そんな鍬守さんのIPMにチャレンジする横顔を紹介します。

イチゴ栽培歴50年 高設栽培での減農薬と省力化を目指して
子供のころから、イチゴやミカンのある風景や両親の暮らしぶり、仕事ぶりが好きでした。父も私も熊本農業高等学校卒業で、大相撲で現在人気の関脇の正代関と同じ、学び舎、同じ郷土です。高卒後、もっと勉強したいと宮崎大学の農学部(当時:農林生産学科 植物生産科学コース)に学び、卒業と同時に就農しました。特に、大学での先生や友人たちと培ってきた人脈や学んだことは我が家の経営に大いに役立っています。
 
鍬守 芳寿さん
就農当時は果樹作 (デコポン・温州ミカン・ネーブル) が約3ha、イチゴ土耕栽培  約25aを中心とする複合経営を家族労力と臨時雇用だけで賄っていました。春になると、柑橘の剪定や肥培管理、イチゴの収穫・出荷・防除管理などとの労力が競合しあう毎日でした。イチゴ作の始まりは、昭和45年、本格的なコメの減反政策に対応して、父が水稲に替わる換金作物として、土耕栽培 (品種「はるのか」) を導入したのがはじまりです。栽培歴はもう50年にもなり、今では、経営規模も大きくなり、我が家ならではの栽培技術も確立し基幹品目となっています。

就農当時、イチゴでは毎年春先にハダニが蔓延し、4月には防除が困難となり、収穫をやめるありさまで、病害虫防除作業などは工夫しだいで必須作業から減らすことができると、減農薬への取り組みをいつも考えていました。

景観は素晴らしくても、台風などの自然災害には勝てません。平成17年の台風で、連棟のパイプハウスはペッチャンコになり全壊しました。今だから、笑えるのですがあの時は必死でした。災害をバネにと、自力更生で再建・拡大をして、現在の40aの高設栽培規模になりました。 



天敵利用は15年前 ミヤコカブリダニ (スパイカルEX) の利用から
就農後、宇城地方4Hクラブ (全国的組織である青年農業者クラブ) に加入し 「イチゴ栽培における天敵・微生物資材の活用方法を探る」 を農業技術改善のプロジェクトとして取り組みました。当時は、イチゴ栽培での天敵利用について全く普及もしておらず、過去に地域で失敗した経験もあり、指導機関等でも相談する余地はありませんでした。宮崎大学の先生や友人 (現普及指導員) などから 「天敵ミヤコカブリダニの利用技術」 を教えてもらい、4Hクラブの仲間と大学の先生を訪問したりして、天敵利用技術を学びました。

その当時の防除技術のポイントは、一口にいって 「天敵力」 と 「我慢力」 です。
1) 定植、ビニル展張後、天敵放飼前のハダニ防除を徹底
2) 「早めに入れて・早めに増やす」 をモットーに10月中にはミヤコカブリダニを放飼
3) 放飼後、殺ダニ剤は1月まで散布しない。やむを得ない場合は、スポットで気門封鎖剤などを散布(天敵に対する農薬別影響情報もあまりなく気門封鎖剤を中心にできるだけ少ない散布を心がけた)
4) 1月になってからハダニが多くなった時、天敵に影響のない殺ダニ剤を散布
(殺ダニ剤の散布回数が減ったことで、抵抗性の回避を期待)

この4つを、ポイントに天敵を放飼。始めてから数年間は、12月にハダニが増えて、父から農薬散布を強制されてもそこは我慢と辛抱で乗り越えてきました。結果として、待ち受け型のミヤコカブリダニ(スパイカルEX) 5千頭/10a放飼と化学農薬の適期利用で農薬散布回数を慣行の1/3まで削減することができ5月まで収穫も延長することができるようになりました。こうした、減農薬栽培の取り組み成果は、県4Hクラブのプロジェクト成果発表会で最優秀賞となり、九州大会に発表・提案させていただきました。


ミヤコカブリダニ(スパイカルEX)、チリカブリダニ(スパイデックス)の部会ぐるみでの利用がはじまりました。私は、経験からミヤコカブリダニだけで良いと思っていましたが、使ってみたらチリカブリダニの防除効果が思った以上に良く、スパスパ同時放飼の効果を実感しているところです。また、JA熊本うきではイチゴ新品種  「恋みのり」 を統一ブランド商標 「恋のぞみ」 として生産・販売しています。現在、統一品種として11.4haの面積まで拡大していますが、いち早く試験栽培などのプロジェクトに取り組み、産地貢献ができたと嬉しく思っています。
 
生産者の声(いちご、スパイカルEX、スパイデックス、ミニポール・ブラック、ククメリス、アフィパール)

 

イチゴ・奇形果を減らすためのクロマルハナバチ(ミニポール・ブラック)の有効利用
私の高設栽培では、平段(1段) とひな段(上下2段) のハウスがあるのですが、ひな段ハウスの下段は日陰になり低温とも重なりミツバチの訪花がとても悪く、奇形果の発生が一つの悩みでした。アリスタさんからアドバイスを受け、クロマルハナバチを利用したところ奇形果はほとんどなくなり大変喜んでいます。現在、「ミニポール・ブラック」  とミツバチを併用していますが、今後、地域のイチゴ作でもクロマルハナバチの利用が進むかと思います。
 
生産者の声(いちご、スパイカルEX、スパイデックス、ミニポール・ブラック、ククメリス、アフィパール)

 

ククメリスカブリダニ (ククメリス) やコレマンアブラバチ (アフィパール) も使ってみて
一昨年、主にヒラズハナアザミウマ対策として、ククメリスカブリダニによる防除試験を行いました。年内から2月上旬位までハウス内でのアザミウマ類は抑えられたと思いますが、2月下旬から飛び込み成虫が異常に多く、難防除害虫となっています。赤いネットを張ってみましたが、谷部やサイド開放時の飛び込みに対応できていません。青色の粘着板 「ホリバー」をハウス内に大量に付けることも必要かと思っています。

また、アブラムシ対策にバンカープランツとしてアフィバンクを設け、コレマンアブラバチ (アフィパール) を増殖させて防除することにも取り組んでみましたが、アブラバチを増やすためのバンカープランツのムギクビレアブラムシがあまり増えず再挑戦です。ただ、アブラバチにより、イチゴの葉裏にマミーが付着しているのは確認できました。

これから、安全・安心で高品質のイチゴづくりを進めるにはIPM技術は必須と思っています。最近、アブラムシが多いせいか、ヒラタアブがよく飛来しています。これから、一層土着天敵が増えるハウス環境づくりにも努めたいと思っています。

生産者の声(いちご、スパイカルEX、スパイデックス、ミニポール・ブラック、ククメリス、アフィパール)

 

 

取材を終えて
鍬守さんのプロジェクトには人生設計の課題もあり 「私達夫婦が50歳になった時に、子供たちは20歳に」を目標に25歳で恋愛結婚。現在3人の子供さんとこれからの人生目標を立てておられる姿に 「目標をもって生きる」 ことのすばらしさを実感したしだいである。進取な気質と篤農家として、常に新しいことにチャレンジする鍬守家が地域農業のリーダーとして、益々活躍発展されることを期待している。

※2020年5月8日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。