アリスタ通信 ボタニガードESによるうどんこ病抑制およびシソサビダニ防除効果について ~微生物殺虫剤から微生物殺虫殺菌剤へ~
 
 
ボタニガードESによるうどんこ病抑制およびシソサビダニ防除効果について
~微生物殺虫剤から微生物殺虫殺菌剤へ~
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
業務統括グループ 桃下 光敏


ボタニガードESは、昆虫寄生菌 ボーベリア・バシアーナ (Beauveria bassiana GHA株) を有効成分とする微生物殺虫剤であり、これまで主に野菜類のアザミウマ類やコナジラミ類などに対して使用されてきました。近年はその他の病害虫に対しても適用拡大を進めており、昨年は 「野菜類のハダニ類」 および 「しそのマデイラコナカイガムシとチャノホコリダニ」 に適用拡大しました。

今回2019年11月20日付で 「野菜類のうどんこ病」 および 「しそのシソサビダニ」に適用拡大となりましたのでそれぞれの病害虫に対する防除効果や使用上の注意点をご紹介します。
ボタニガードES
ボタニガードES

1) うどんこ病に対する防除効果
昆虫寄生菌による植物病害抑制効果については、IPM通信第34号前編の帯広畜産大学 小池 正徳教授による寄稿 「昆虫病原糸状菌の昆虫への病原性以外の重要な特性とその作用」 において植物病害に対する誘導抵抗性と植物病原菌への拮抗作用が紹介されています。

アリスタライフサイエンスは平成29年度から農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の 「微生物殺虫剤を用いた野菜重要病害虫のデュアルコントロール技術の開発」 に参加し、本事業のなかでボーベリア・バシアーナの植物病害に対する抵抗性の誘導が確認されたことから、ボタニガードESを害虫と病害の両方に防除効果を持った 「デュアルコントロール剤(微生物殺虫殺菌剤)」 とするために適用拡大のための試験を進めてきました。
ボタニガードESには製剤に油成分が含まれていますが、既存のオイルを原料としたマシン油や気門封鎖剤のような作用機作でうどんこ病を抑制するのではなく、有効成分のボーベリア・バシアーナ菌が植物表面や植物内部に定着し、植物の病害抵抗性を誘導することが同研究において解明されています。

図1および図2にはボタニガードESによるキュウリおよびイチゴでのうどんこ病防除試験結果を示していますが、キュウリの試験では既存の微生物殺菌剤より優れた効果および化学殺菌剤と同等の効果が得られており、イチゴの試験でも化学殺菌剤と同等以上の効果が得られています。図3はトマトでのうどんこ病防除試験時の写真ですが、ボタニガードES処理区でうどんこ病が抑制されている様子が良くわかります。

ボタニガードESによるうどんこ病抑制およびシソサビダニ防除効果について

なお、ボタニガードESによって誘導される抵抗性は植物体の全身に獲得されるものではなく、処理部位のみに限られることがわかっています。よって薬液を散布する際には作物全体にまんべんなく処理する必要があり、散布後に新しく展開した葉や芽についても追加で処理する必要があります。
ボタニガードESによるうどんこ病防除においては予防効果が主体なので、“発病前~発病初期”から7日程度の間隔で十分量を複数回散布することが重要です。微生物殺虫剤の利用については散布の際に同時使用できる殺菌剤の種類が少ないということが使用上の課題の一つとなっていましたが、今後はボタニガードES自身が殺菌剤としても利用できるようになったことで防除作業の効率化や経費削減が期待されます。

2) シソサビダニに対する防除効果
シソサビダニはシソ属の植物に寄生する体長約0.15~0.2mmの微小なサビダニの一種で、オオバ(青しそ)にシソモザイク病を引き起こすシソモザイクウイルスを媒介することで近年問題になっています。比較的新しい害虫ということで効果的な防除手段が不明であったため、平成27年から農林水産省・農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業において 「シソサビダニが引き起こすオオバのモザイク病およびさび症の防除体系確立」 の研究開発が取り組まれていました。この事業に参画していた高知県農業技術センターによって、ボーベリア・バシアーナによるシソサビダニへの殺ダニ活性が確認され、また圃場試験でもボタニガードESがシソサビダニに対して防除効果を示すことが明らかとなりました(図4)。
今後は昨年適用拡大となったチャノホコリダニやマデイラコナカイガラムシと併せてシソのマイナー害虫防除への活用が期待されます。

ボタニガードESによるうどんこ病抑制およびシソサビダニ防除効果について

ボタニガードESは広範囲の害虫やダニ類に防除効果を示し、また病害防除にも使用できるようになったことで今後さらに利用の機会が増えてくることが期待されます。当社では薬剤抵抗性害虫 および 薬剤耐性菌対策の一つとして各場面で採用いただけるよう、引き続き利用技術の向上に努めて参ります。

参考文献
・IPM通信 第34号 前編 「昆虫病原糸状菌の昆虫への病原性以外の重要な特性とその作用」
・微生物殺虫剤を用いた野菜重要病害虫のデュアルコントロール技術の開発
http://www.g-agri.rd.pref.gifu.lg.jp/kenkyukadai/h30/chiiki-13.pdf
・オオバのシソサビダニおよびシソモザイク病 防除マニュアル (高知県版・暫定版)
https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=8219


※2019年11月25日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。