天敵に影響のある薬剤の散布が含まれる防除体系や餌としての害虫がいなかったり花粉のない時期にスワルスキーを放飼するために、スワルスキーの集団を薬剤から隔離したり、徐々に放出できるようにするための方法としてコーヒーフィルターを用いた放飼方法を開発しました。特集では、この方法を用いたハウスカンキツでの利用と施設キュウリでの利用についてまとめました。
1.スワルスキーを利用したハウスカンキツでのミカンハダニ防除
スワルスキーのミカンハダニに対する適用拡大取得後、ハウスカンキツの現地圃場でいろいろな試験を行なってきました。施設における放飼時期は、施設の加温開始時期と密接な関係があることが分かり、またその地域のハダニの発生時期を考慮していく必要があります。ハウスミカンではジマンダイセンを使用しない傾向にありますが、中晩柑(デコポン等)では使用されるケースが多く、スワルスキーの利用が制限されることにもなります。スワルスキーの放飼量(適用表では250~1000頭/樹)としてもハダニの発生の程度により適正化していく必要があります。以下に放飼方法と放飼量についてまとめました。この最適化の技術はJAえひめ中央管内の山崎氏(愛媛県農業指導士)と当社四国地区フィールドアドバイザーとが鋭意研究し分かってきた情報です。
(1)放飼方法
コーヒーフィルター(1人用の一番小さなフィルター)に入れて植物に吊り下げる方法を開発しました。以下にその方法を示します。フスマ500g、酵母粉末25g、三温糖25gを加えたもの準備します。これをティースプーンに軽く山盛り2杯(2g以上)コーヒーフィルターに入れた後、スワルスキー約125頭(2振り程度)を入れて、フィルターを枝や枝先端の葉にホチキス等で止めます。(この配合はスワルスキー1本分、コーヒーフィルター200枚分目安です。)
(2)放飼量
ミカンハダニ発生程度により、直接放飼と上記のコーヒーフィルターによる放飼とを併用することが効果的であることが分かりました。
★ミカンハダニの発生がない場合には、2本/10aとし、コーヒーフィルターを利用します。
★ミカンハダニが発生している場合には、4本/10aとし、各樹の発生程度にあわせて直接放飼とコーヒーフィルターを併用します。
★中~多発生樹への放飼数が適用表における使用量より多くなりますが、使用回数制限がないため、葉上への直接放飼とコーヒーフィルターによる放飼を各1回の放飼と考えれば特に問題とはなりません。
2. キュウリにおけるスワルスキーの放飼
キュウリでは、褐斑病対策でジマンダイセンの使用が必須です。このため、スワルスキーを利用したIPMプログラムを開発するためには、スワルスキーが影響を受けにくい放飼方法としてコーヒーフィルター法を採用しました。アザミウマ類の発生程度とスワルスキーの処理量、処理方法の関係としては、
(1)アザミウマ類の発生がない場合には、2本/10aとして、葉上への直接放飼とコーヒーフィルターを利用します。
(2)アザミウマ類が発生している場合には、必ず複数の薬剤散布(アファーム、スピノエース等)を行い、その後スワルスキー放飼量は2本/10aとし、直接放飼とコーヒーフィルターを利用します。葉上への直接放飼は、目安として1株おきに1振りとして、フィルターの設置は、直接放飼していない株を対象としておよそ4-5株に1つの割合です。
(3)ハモグリバエにはスワルスキーに影響のないプレバソン5フロアブルを推奨します。
(4)うどんこ病には、現時点ではインプレッション水和剤とアフェットFLを推奨します。
(5)コーヒーフィルターを利用することで、褐斑病対策としてのジマンダイセンを使用して頂いても構いませんが、出来ればこの系統の薬剤の連用、多用については留意するようお願いします。
この方法は、メロンにも共通で利用できます。
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