近年、施設栽培で用いられる管理指標に『飽差』ということばがあります。植物生長、特に蒸散作用(呼吸)に大きな影響をあたえる環境条件になります。今回は、栽培管理技術の一つとして標準化されつつある『飽差』を管理指標とした『飽差管理』について、お話をさせていただきたいと思います。
『飽差』と呼ばれるものには、単位が「hPa」のものと「g/m3」のものがあります。いずれも値が高いほうが乾燥していることを示します。
① 飽差(VDP): Vapour Pressure Dificit (単位:hPa)
② 飽差(HD): Humidity Deficit (単位:g/ m3)
日本における飽差管理では、②飽差(HD)を使用することが一般的になっております。飽差(HD)は、1m3の空気の中に、あと何グラムの水蒸気を含むことができるかを示す数値です。
例に挙げると、湿度70%の空気が二つある場合(表1. 飽差管理表)、一方は15℃の温度環境では水蒸気をあと3.9gしか含むことはできません(飽差3.9g/
m3)。同じ湿度70%でももう一方は30℃の温度環境では、約9.1gもの水蒸気を含むことができます(飽差9.1g/
m3)。たくさん水蒸気を含むことができる空気は「水蒸気を奪うことができる乾きやすい空気」と言い換えることができます。単に湿度だけで乾燥した状態か、状態でないかを判断することはできません。