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群馬県のナスにおけるIPMの現状と展望
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群馬県館林地区農業指導センター 蓼沼 優
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1.はじめに
群馬県では平成22年ころから、施設ナスを中心に天敵製剤を利用した防除体系が導入され、アザミウマ類、コナジラミ類、ハダニ類などの有効な防除対策として定着しています(写真1)。
しかし露地ナスでは、ヒメハナカメムシ類 (以下、ヒメハナ) などの土着天敵温存技術の導入に向けた取り組みも行われていましたが、防除効果が不安定となる事例もあり、普及には至らない状況にありました。
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写真1
施設ナスほ場の状況 (天敵製剤、粘着板、防虫ネット)
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2.天敵製剤導入の経過
露地ナスでは、平成27年より 「スワルスキー (スワルスキーカブリダニ、以下 スワルスキー)」
および「スパイカルEX (ミヤコカブリダニ、以下 ミヤコ)」 の導入に向けた取り組みを行っています(図1)。
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露地ナスでは、アザミウマ類の土着天敵であるヒメハナの移動性が高く、効果が不安定な事例も報告されていましたが、スワルスキーを併用することで長期間安定した被害抑制効果を得られることがわかりました。また、ハダニ類は土着天敵の種類が多く確認されましたが、土着天敵のみによる明確な抑制効果は確認できませんでした。しかしミヤコを併用したほ場では、ハダニ類の発生が大幅に抑制され、防除が必要となった事例でも大半が数株単位の局所散布で済んでおり、これまでのところ予想を上回る被害抑制効果も確認されています。
施設ナスは平成26年の雪害により一時的に栽培面積が減少しましたが、現在は施設復旧にともない面積もほぼ回復しました。
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3.天敵製剤の導入状況
これまでのところ、露地ナスにおける天敵製剤導入はスワルスキーを中心に行われていますが、ほ場管理についてはヒメハナを中心とした土着天敵の温存技術と並行して推進しています(写真2)。
ミヤコはスワルスキーに比べるとまだ利用面積が少ないですが、露地ナスでは施設での導入事例と比較してハダニ類の抑制効果が明確に現れる印象を受けます(図3)。
露地では作物が直接風雨にさらされることなどにより、ハダニ類の増殖が施設栽培に比べて緩やかであることもプラス要因になっているものと推測され、露地ナスでは今後ミヤコの導入がさらに増加するのではないかと考えています。
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写真2
露地ナス ほ場の状況
編集者注: 写真2に写る右側の植物はソルゴー。
防風とアブラムシ天敵の増殖目的にオススメ。
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図3
ミヤコ放飼区の発生消長調査結果
(開花節直下60葉あたり、平成28年館林市)
:10月14日、アセキノシル水和剤1000倍
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4.今後の課題
天敵製剤利用は関連情報が充実していることが大きな利点で、今後も露地ナスを含む様々な作物において、天敵利用技術を導入する際の第一歩として重要な役割を持ち続けるものと思います。しかし現状では天敵利用技術の導入をためらう生産者や地域があるのも事実です。特に露地ナスの場合は、具体的な理由の一つとして、テントウムシダマシ類やハムシ類などマイナー害虫対策への不安が指摘されています。
これまで天敵製剤導入において、特に重要な役割を果たしてきた薬剤影響関連の情報は、施設栽培を前提に作られてきたものだと思います。今後露地作物での天敵利用技術導入を進めるにあたって、施設とは環境が異なることを前提とした薬剤影響程度の再評価も必要になってくるのではないかと考えています。
また、天敵製剤および土着天敵の温存に適したほ場管理法など、露地作物を対象とした情報を整理して農薬や管理方法の選択肢が充実すれば、露地作物における天敵製剤利用技術はさらに拡大するのではないかと思います。
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※2018年8月31日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。
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