アリスタ通信 天敵昆虫 パック製剤用防水カバーの紹介
 
 
天敵昆虫 パック製剤用防水カバーの紹介
 
アリスタ ライフサイエンス(株)
技術普及マネージャー 里見 純

弊社では、露地作物用のパック製剤の耐雨性向上を図るため、パック製剤を防水カバーに入れて設置することをお勧めしています。
具体的には、果樹類、野菜類、豆類(種実)、いも類で農薬登録を取得している 「スパイカルプラス」、露地なすで農薬登録を取得している 「スワルスキープラス」 が該当すると想定しています。

昨年、露地ナシでの利用面積が拡大したので、希望者に防水カバーを配布したところ、非常に好評であったため、本年度も配布用に防水カバーを用意しています。
枝が太い場合に取り付けるのが難しかったとの意見を反映し、V字の部分を広くした改良型を作成いたしました。使い方も袋に印刷し、初めての方でも設置方法がわかるようにいたしました。

写真1. 2017年度版のナシでの「スパイカルプラス」用防水カバーの設置例
写真1. 2017年度版のナシでの「スパイカルプラス」用防水カバーの設置例

2016年は、市販の果実袋を利用して、スパイカルプラスに対する浸水状況とハダニに対する効果を確認しました。

注) 「ピーチ22号V切」 以外の市販の防虫・防菌袋(果実袋)はカブリダニに対する影響を確認しておりません。 いつも使っている果実袋の使用はさけるようお願いいたします。
図1. 2016年度に用いた市販の果実袋 「ピーチ22号V切」(価格は100枚で約500円)
図1. 2016年度に用いた市販の果実袋 「ピーチ22号V切」(価格は100枚で約500円)

試験方法
試験場所:
千葉県船橋市
供試作物:
日本ナシ (品種:幸水、豊水、あきづき、新高、など多品種)
対象害虫:
ハダニ類 (ナミハダニ・カンザワハダニ混発)
供試薬剤:
スパイカルプラス 4パック/樹 (6月21日納品)
果実袋:
モモ用果実袋 ピーチ22号V切 (S-11) (小林製袋産業株式会社)
区制:
圃場の端1列をパックのみの区とし、その他を果実袋区に設定
放飼日:
2016年6月22日(水)
放飼方法:
果実袋区は、パックを果実袋に入れ、防水カバーの取り付け方(図2)にしたがって、外れないようにナシの枝の日陰になるような場所に設置しました。パックのみの区はパックをナシの枝の日陰になるような場所に設置し、ホチキスで止めました。
調査方法:
区当たり50葉をランダムに抽出し、葉裏のハダニ数、カブリダニ数について目視またはルーペを用いて約2週間間隔で測定しました。8月3日にパックを触って雨水がパック内に入っているかどうか確認しました。

天敵昆虫 パック製剤用防水カバーの紹介

天敵昆虫 パック製剤用防水カバーの紹介

結果の概要と考察
・放飼時のハダニおよびカブリダニ数は「0」でした。
・放飼4週間後までハダニの密度は高くなりませんでしたが、その後は両区ともハダニの発生とともにカブリダニの発生が確認できました。
・果実袋区は放飼6週間後でも雨の浸水は確認できなかったのですが、パックのみの区では約30%のパックに浸水が認められました(表1)。
・両区ともハダニの発生は局所的で周囲には広がらない様子でした。
・最高値でも葉当たり平均のハダニは5頭以下で、落葉することはありませんでした。
・両区ともに、ハダニの密度が上昇すると同時にカブリダニも順調に増殖し、8月下旬にはハダニの発生が収まり、ナシの収穫期に殺ダニ剤を散布することなく試験を終了することができました。
・毎年ハダニの発生が多い方角を果実袋区としたため、果実袋区とパックのみの区を比較すると、ハダニの発生量は果実袋区の方が多いがカブリダニ数も果実袋区の方が多いことが確認できました。

以上の結果から、スパイカルプラスをナシで利用する場合、安価な果実袋を利用することで雨の浸水を防ぐことができました。果実袋を利用した区と利用しなかった区の効果には大きな違いはなく、ハダニの発生が見られたものの、カブリダニが捕食したことにより、落葉までいたりませんでした。しかしながら、果実袋を利用することで、より安定的なカブリダニの供給が可能となり、ハダニの発生量が多くても対応できることが示唆されました。

2017年は、防水カバーを白色(写真1)に変更してナシのIPM防除に取り組んだ農協のナシ生産者8名にアンケートを実施しました。

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その他の意見
・ 果実袋の改良が必要。
・ スパイカルプラスの設置時期は、6月中・下旬が良いと思われた。

その他の意見の「改良が必要」というお言葉を受けて、2018年度は防水カバーを改良いたしました。特に太い枝に設置せざるを得ない場合に、2017年度版の防水カバーでは設置しにくいという意見が多かったため、V字の切込みの端を広くしました(図3)。

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2017年度版の防水カバーを用いて、浸水をどの程度防げるのかを確認しました。散水装置を用いて5時間で約80mmの水量(本散水装置の限界量)を散水したところ、スワルスキープラスではパックの外側から内部に浸水しましたが、防水カバーにスワルスキープラスを入れたものは、浸水がまったく見られませんでした(写真2)。
防水カバーに入れたスワルスキープラスの内容物は、サラサラしており、散水前の状態と差が認められませんでした。また、防水カバーが適度に濡れることで、パック内の湿度が維持され、高湿度を好むカブリダニ類にとって良好な環境になることが考えられます。
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※2018年5月11日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。