ところで広島県は、瀬戸内の島しょ・沿岸部から800mの高冷地域まで、個々の栽培面積は小さいものの多種多様な農作物が栽培されており、そのため大信産業では、地域に根差した、きめ細やかな営業活動を行っています。
広島県では、わが国では初めて、1974年にアメリカからのオンシツコナジラミの侵入・定着が確認され、翌年からオンシツツヤコバチによる天敵利用技術の開発が実施されました。
これらの成果をもとに、1995年にはアリスタ ライサイエンス社(当時は前身のトーメン)により天敵農薬として登録され、大信産業においても、県の研究・普及機関と連携して、天敵利用技術の現場への普及・定着を推進してきました。
2015年には、広島県立農業技術センターOBである林 英明氏を当社の技術顧問として迎え、IPM(総合的病害虫管理)の考え方の現場へのさらなる普及・推進を図っています。
当社ではあらためて、病害虫防除の基本に立ち返り、個々の地域・農作物にあった防除技術を支援するため、各営業部員と一緒にIPMの基本と実践について議論し合い、個々の作物へのIPM技術を普及しています。さらに、広島県で振興している、農業組合法人や企業の農業参入に対応できるIPM技術を推進しています。
病害虫防除の基本は、周辺環境の整備を徹底すること、さらに“入れない”、“増やさない”、“出さない”ことについて認識し、IPMの基本理念である
①モニタリング ②要防除密度水準の設定 及び ③各種防除手段の合理的統合をおこない、結果として経営としてなりたつ農業をお手伝いできるように、地域にあったIPM推進対象品目を設定し、現場への普及を徹底しています。
また、依頼があれば、作物の栽培前には、圃場の土壌診断による施肥設計を実施しています。
島しょ・沿岸部を担当する営業所は、カンキツ類、ブドウ、イチジク、キウイフルーツ等について、野菜・果菜類を担当する営業所は、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ(夏イチゴを含む)、アスパラガス、ネギ、ワケギ、パセリ、ハーブ等について、各担当名・作物・産地名・施設や露地栽培・問題病害虫・IPM推進品目
及び推進方法を策定しています。
具体的には、カンキツ類のミカンハダニに対して「スパイカルプラス」、「スワルスキープラス」、カミキリムシ類対策用微生物資材、フェロモン剤の利用を、トマトのコナジラミ類に対しては「エンストリップ」、「エルカード」、微生物資材を、イチゴ(夏イチゴを含む)のハダニ類に対しては「スパイカルEX」、「スパイデックス」を、キュウリでは「スワルスキー」、「リモニカ」の利用を提案しています。
研究段階あるいは現場で普及しつつある天敵利用は、土着天敵+インセクタリ植物+導入天敵
あるいは天敵に影響の少ない薬剤の利用が今後の技術の中心になっていくことが予想されています。
現場においても、トマトのコナジラミ対策としてタバコカスミカメの導入依頼もあり、土着天敵類の現場での利用ができるような資材の提供をお願いしたいものである。