現在、我が国でトマトを始めとする施設果菜類の受粉用資材として利用されているマルハナバチの約6割は、セイヨウオオマルハナバチという欧州原産のマルハナバチです。
マルハナバチを利用する技術は、1980年代後半にベルギー、オランダで生まれ、欧州でもっともポピュラーで研究されていたセイヨウオオマルハナバチから始まったためであり、日本にもそのまま導入されました。
当社でも前身の(株)トーメン時代に、オランダのコパート社にて商業的に生産されたセイヨウオオマルハナバチ製品を1992年から輸入し、この事業におけるフロントランナー、リーデイングカンパニーとしてマルハナバチの普及に努めてきました。
一方で、セイヨウオオマルハナバチは種間競争力が強いことも知られ、在来のマルハナバチの衰退もしくは、国内生態系に悪い影響もたらす実態が報告されていました。
1996年に北海道でセイヨウオオマルハナバチの野生巣が発見されて以来、野外での女王バチや自然巣の捕獲例は増加しています。
セイヨウオオマルハナバチが国内に定着することで起こる環境影響には、
①在来のマルハナバチの営巣場所や餌資源を独占して、在来種の生息数を減少させてしまった地域がある。
②野外でセイヨウオオマルハナバチのオスが近縁な在来マルハナバチの女王と交尾していることが北海道
および本州で確認され、繁殖を妨げている可能性がある。
③外国産寄生生物の随伴の可能性と在来マルハナバチに病害を蔓延させるおそれがある。
④在来マルハナバチに受粉を強く依存している在来植物の繁殖を妨げる可能性を示唆するデータがある。
このように国内の生態系にセイヨウオオマルハナバチが与える影響の実態が明らかになり、2006年9月1日にセイヨウオオマルハナバチは「特定外来生物」に指定されました。
以降、10年に渡り、セイヨウオオマルハナバチの販売、取り扱い、飼養(利用)には許可制度が導入され、外来生物法による厳しい規制の元での利用が続いてきました。
しかし、本年4月20日に環境省と農林水産省の両省は、約2年間の専門家委員等による会合、議論を経て、2020年までにセイヨウオオマルハナバチの使用量を現在の半分に減少させると同時に、国内で利用されるマルハナバチを在来種に転換する方針を発表しました。