その1 定植後、2週間以内をめどに早めの放飼 (遅くとも3週間以内) を順守する。
スワルスキーを中心に、その基本放飼量は、10a当たり5万頭 (2ボトル) となっている。この5万頭が定植株の葉の1枚、1枚に定着・増殖し防除効果を発揮していくには一定期間を要する。
定植時には、ポット苗へ害虫防除の粒剤や灌注処理をされていると思うが、この処理効果が少しでも有効なうちに、スワルスキーを定着させ、葉裏などで生まれてくるアザミウマの幼虫などを捕食する態勢をつくりだすことが重要である。
定植後2週間位では作物の展開葉数も5~8枚程度でスワルスキーの定着も早いが、1か月もすれば葉数も倍以上になり定着も遅れる。また、促成作など冬場に入る作だと最低夜温も低くなってくるため、その分スワルスキーの増殖も遅く活動も緩慢となる。巡回してみると、天敵放飼が遅れている事例が良くある。
農作業に忙しい毎日、「定植して一安心」
ではなく 「天敵を放飼して一安心」 の習慣にしたいものである。
その2 ゼロ放飼防除を順守する。
定植から天敵を放飼するまでの2週間のうちに、いかに害虫密度をゼロにするかが、その作全体での天敵利用を大きく左右する。スワルスキーの捕食対象害虫(アザミウマ類、コナジラミ類、チャノホコリダニ)やその他の害虫を含めて極力ゼロにするため、天敵にも強い影響のある農薬(散布後7日程度の影響)を選択し防除をする。これら農薬は天敵放飼後には使えない。また、購入苗の場合は、農薬散布履歴を確認することを忘れてはならない。
ゼロ放飼防除をしたとしても、ハウス内の土中にいるアザミウマ類の蛹、散布ムラで残っている害虫、外から飛び込む害虫などがいるということを思い防除に徹することが大事である。スワルスキーは、これら害虫の卵や幼虫を捕食しながら、ハウス内で
「害虫を増やさない防除」 に貢献する。天敵放飼後、これら害虫密度が高いとバランスが崩れ、スワルスキーが増えても害虫の成虫が増えて抑制できないようである。天敵放飼前に
「親の敵と思い害虫防除を徹底すること」 が肝心!!!
その3 天敵にやさしい農薬使用を順守する。
過去には、天敵に対する農薬の影響などが不明で、効果が発揮できないといった時代もあったようである。
現在では、日本生物防除協議会(旧バイオロジカルコントロール協議会)などの研究努力で登録農薬毎の天敵影響実証試験や影響度のランク付けなどの整理が進み、「農薬影響表」として公表され大幅に農薬の選択がしやすくなっている。
この影響表は、農薬毎に◎天敵への影響が少ない(0日)、〇天敵に多少影響あり(約7日)、△天敵に影響あり(約7日~14日)、×天敵に強い影響、使用しない(約20日~80日以上)の4つに分類されている。
この表をもとに、天敵放飼後は、天敵の安定的な定着を図るために7日~14日間農薬散布を我慢し、その後、病害虫の発生程度を見ながら、◎農薬のみを選択して散布。どうしても◎農薬だけではむずかしい場合、葉裏の天敵を観察して、増えていれば、〇の農薬を選択し極力回数を少なく使用。また、化学農薬と微生物殺虫剤との混用散布や気門封鎖剤などのスポット散布なども効果的である。
現場巡回で、「スワルスキーを放飼しても、放飼しても増えない」 といわれ、よく聞くと
「影響のある展着剤をいつも使っていた」 などの農薬使用間違い事例も数多い。この農薬は「大丈夫だろう」
と思わず 「今一つたしかめてみる」 行動を!!!
おしまいに、ちょっと一服、作業の合間をぬい、虫眼鏡などを使い、天敵や害虫の観察をしてみると興味が湧いてくるものである。