神奈川県天敵利用研究会が発足して翌年の平成7年に企画した天敵利用シンポジウムには、80余名の参加者が有り大盛況になりました。こんなに若い生産者がいたのかと心強い思いでした。
天敵を利用した栽培が始まったのを察して、東京農業大学の教授が天敵利用をしているハウスを見たいと、数名の方がバラバラにやって来ました。
マミーの付いたカードや導入現場を確認され、天敵利用の将来を見込まれたのか、学校内に生物的防除部会を立ち上げ、天敵農薬に関しての研究者や関係者を講師に招いて、一年に3回の研究会の開催となりました。今も続いて、参加者も年々と多くなっています。
神奈川県天敵利用研究会も新しい技術の吸収のため地元の研究指導機関の指導をはじめ、天敵導入に成功されている指導者を講師に来ていただき勉強しました。
平成9年には、長野県善光寺平のJAちくまの森良延先生、平成10年に「天敵
農薬の利用技術」について、埼玉園試の根本久博士のご指導を受けました。
すると、今度は高知県のシンポジウムにパネラーとして我ら研究会の石川会長に講師の依頼があり、その後JA南国とJA香美に招かれて、現状を3回ご披露したことも有りました。
帰って来て、高知で天敵を本気で使い始めたらかなわないと言う。何でと聞くと、展示圃を1年で60ヶ所も作るらしいよ、1年で答えが出るからなー!
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海外の赴任先のブラジルから帰国して早々にトーメンの生物産業部長になられた堀部長が、天敵利用の現状を見たいと依頼が有りました。技術的に初期、中、上級の栽培者の3ハウスを案内しました。その時に朝日新聞のベテラン記者が同行して来ました。
現地を一緒に見てまわって案内しての話の中での質問で、栽培、害虫、天敵の働きを充分に理解した人からしか出てこない質問がスパッとされた時にはビックリしました。
新聞社にはこの方のよう現場をいち早く理解して、問題点をすばやく指摘する記者が大勢いて、編集者がまた選んで記事として載るのであろうから、新聞はおろそかにできないなと、その後読み方が変わりました。
そして今では天敵農薬は化学農薬の抵抗性の対策剤の立場も加わり、両剤を組み合わせての防除暦も組まれるようになりました。
先日の新聞で、ビール類が量販店で仕入れより安く売られていて、行政が動きだしたとの報道が有りましたが、化学農薬はずっと昔からそのような問題が常に有り、天敵農薬が同一扱いされないよう心配しています。天敵販売は化学農薬の新薬発売の普及と同じことを毎年やらなければならない手間のかかる剤です。技術の普及をしながらうまくマーケットが拡大して行けるように願っています。
天敵農薬は生き物で在庫がききません。受注してから生産することも時間的に無理。出荷を予想して、いつ何時にいくつ注文が来ても供給できる体制を維持することは、ロスの多いことになります。
化学農薬は乾物屋、天敵農薬は寿司屋ではないかと思います。
生きのいいネタで回転寿司のようになれば、販売総数に対するロスも少なくなって安価になっていくのではないでしょうか。