アリスタ通信 イチゴのチリカブリダニの追加放飼
 
 
イチゴのチリカブリダニの追加放飼
 
アリスタ ライフサイエンス(株) 里見純

促成栽培イチゴでの天敵利用は普及拡大しており、多くの方々に利用されていることは大変ありがたく思います。

天敵を利用する方は増加していますが、年に数回しか使用する機会がないため、まだまだ天敵を使い慣れていない方も多いと思います。
そこで、イチゴでの天敵利用における年明けからの対応につきまして、おさらいをしておきたいと思います。

最近では多くの方が、10月下旬~11月下旬にかけて「スパスパ同時放飼」=10a当りに「スパイカルEX(250ml×1本)+スパイデックス(100ml×1~3本)」を利用されています。
また、殺ダニ剤の感受性低下が認められている地域では、天敵放飼前の徹底防除が困難になりつつあるため、導入時のスパイデックスの本数を3本にする方も増えています。
同様にレスキュー防除可能な薬剤についても感受性低下が著しいため、年内にハダニが発生した際にレスキュー防除だけではハダニの増加を抑えきれない場合も多く、スパイデックスの追加放飼(100ml×3本/10a)を早めに実施して対応する必要があります。

レスキュー防除:  天敵放飼後に、天敵に影響がなく対象害虫を減少させる目的で実施される薬剤防除

さて、図1はイチゴで天敵を利用している方だけに聞いたアンケート結果です。

イチゴのチリカブリダニの追加放飼
秋の天敵放飼時に27%の生産者がハダニの発生が中~多発生であると回答しています。
これは、放飼前に殺ダニ剤を散布してゼロ放飼を心がけているにもかかわらず感受性低下により、ハダニを防除しきれなかったことを示していると考えられます。

このような状況であるため、年内に天敵を放飼したにもかかわらず1~2月まではハダニが増加する傾向にあります。

アンケート結果でもそれが表れており、34%の生産者が中~多発生と天敵放飼時よりハダニが増加している状況です。特にハダニ多発生の株の周辺では天敵も確認できるようになりますが、クモの巣が張るようになりハダニが優勢な状況になっています。
また、一見ハダニが発生していないような株でも潜在的に発生しており、近辺の多発生株からの移動や人による持ち込みでハダニが拡散し始めるのもこの時期です。数匹程度のハダニが3月以降の暖候期を迎える頃には数百匹~数千匹まで増加します。

一方、天敵は放飼してから定着・効果発揮までに厳寒期は2~3ヶ月、暖候期でも1.5~2ヵ月の期間を必要とするため、ハダニ多発生前に天敵を導入しておくことが重要です。天敵の数がハダニの数に追いついておらず、手助けをしてあげる必要があります。

ここがスパイデックスの年明けの追加放飼のポイントです!

レスキュー防除後にスパイデックスを重点的に追加放飼することで、ハダニと天敵のバランスを整えることができます。
年内に放飼したスパイカルEXも数を増やしている時期ですが、現時点で発生しているハダニに対しては、捕食量が多く増殖能力の高いスパイデックスが有効です。
また、ハダニが発生していない状況でも、3月以降にハダニが急激に増える恐れがあるため遅くとも2月中にはレスキュー防除後にスパイデックスの追加放飼をお勧めします。追加放飼の際、ハダニが局所的に発生している場合には、発生箇所に集中的にスパイデックスを放飼するのがお勧めです。

アンケートに回答したほとんどの方は、スパイデックスの追加放飼を実施しています。
天敵を長くお使いの方にはスパイデックスの年明けの追加放飼はおなじみかと思いますが、年内からハダニが多発している場合にはレスキュー防除と追加放飼を前倒しで実施しましょう。
ポイントを押さえた追加放飼をすることで3~4月を迎える頃にはハダニを低密度に抑えることができ、ハダニの密度が無~少であると回答する方が9割に達することになります。

では、年明けのスパイデックスの追加放飼の薬剤防除ですが、すでに年内に天敵を放飼しているため、天敵に影響の少ない殺ダニ剤を選ぶ必要があります。
当社がお勧めする殺ダニ剤は、マイトコーネフロアブルやカネマイトフロアブルです。
マイトコーネフロアブルやカネマイトフロアブルを散布した直後にスパイデックスを放飼したほうが効率的ですので、上記殺ダニ剤を散布することを決めたらすぐにスパイデックスを発注する必要があります。
スパイデックスが届く日が決まったら、到着する前日までにこれらの殺ダニ剤を散布してください。
必ず殺ダニ剤を散布してハダニの密度を下げてからの天敵導入をお願いします。

年明けの追加放飼により、今年も春先のハダニ密度の上昇が抑えられることを期待いたします。

イチゴのチリカブリダニの追加放飼
天敵を利用する理由の一つに「春先のハダニの増殖を抑えて、収穫期が伸びたことによる増収」を挙げる方が多いようです。
イチゴでの天敵利用者が年々増加していることから、天敵を上手に利用することで繁忙期である3~4月のイチゴ本圃での殺ダニ剤散布回数が減らせることを望んでいる生産者がどれだけ多いことかお分かりかと思います。

追加放飼は重要ですが、スパイデックスは餌となるハダニに増減が左右される特徴があります。
春先は広食性で飢餓耐性の高いスパイカルEXが圃場全体で定着してくるので、収穫終了までハダニを抑えることができます。

ハダニが春先に落ち着くと、次に問題になるのはアザミウマです。

アザミウマの殺虫剤は天敵にも影響のあるものが多いですが、2種類の天敵で比較するとスパイデックスよりスパイカルEXのほうが農薬に対する耐性があります。春先にハダニが落ち着いてアザミウマの防除を優先したい時は、スピノエース等を散布すればスパイカルEXが生き残り、ハダニの発生を抑え続けます。
スパイカルEX

※2017年2月2日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。