農薬の抵抗性は、農薬を散布しすぎるために、起こる現象です。
近年は農薬の種類ごとに、その作用点の違いを丁寧に説明して、同じ系統の薬剤を散布しないように防除暦で、指導されています。
ただ全ての生産者が、そのような違う系統の薬剤を使っているかどうかは、抵抗性が実際に発現している畑やハウスでの試験結果をみると、懸念されるところがあります。またその畑、ハウスで抵抗性の害虫、菌が発生したのではなくて、他の畑、ハウスから飛来、飛散してきた可能性もあります。
いずれにしても、同系統の薬剤を使わない、つまり、有機リン剤・・・ピレスロイド剤・・・ジアミド剤・・・微生物系殺虫剤・・・天敵昆虫製剤などを、上手にローテーションしていくことが、抵抗性問題を起こさないためのABCです。
それ以上に、重要なことは、この文章のタイトルにもしたフィールド・スカウティングという行動です。
IPMの第一歩ともいえるこの「圃場偵察」と訳される作業は、病害虫の初発 最初の発生源をいかに早く発見できるか、という習慣ともいえます。
メモと鉛筆、そして後で場所が分からなくならないように葉を挟む目印となる洗濯バサミなどをもって、病害虫が例年発生してきた場所を中心にスカウティング。
実際の作業としては、葉っぱを裏返しすることです。表からでは、みつかりません。
他の作業の前に、圃場を軽く一回りして、初発を発見できれば、まだ病気も虫も若いステージで、農薬や、天敵昆虫の効果も高いのです。
大発生してからでは、どんな薬剤も天敵も効果は望めません。そこで散布することは、むしろ抵抗性の害虫、病気をわざわざ選択して、生き残らせて、繁殖させていることを手助けしていることと同じです。
大発生のときは、物理的な防除薬剤、つまり気門封鎖剤のようなもの、発生源の植物を除去するなどの方法を優先すべきでしょう。
天敵昆虫の利用の場合、大発生したときには、その部分が天敵によって、寄生されているものが多い場合は、わざわざ、その害虫の巣を残すというテクニックもあります。
フィールド・スカウティングは毎日行うことによって、病害虫の抵抗性発現を確実に遅らせることができます。
フィールド・スカウティングは最初に英国、そして米国のカリフォルニアで提唱され、その後、オランダのハウス栽培でも使われるようになった言葉です。
抵抗性を問題にするのは勿論本質的に病害虫が抵抗性を獲得したケースもありますが、手遅れになってから、散布、天敵放飼するケースも多いようです。