露地ナスでのスワルスキー導入
「最初の年は、防風防塵、虫よけ目的でソルゴーの利用から始めました。でも、ナスに虫がつくと心配ですぐに農薬を散布していました。天敵に影響のある農薬も使っていましたね。抵抗性がつかないようにと同じ系統の農薬を続けて散布しないローテーションもしていましたが、何週間かするとすぐ害虫が出てきてしまって。多いときは1週間に1回とか、虫が増えているのを見つけたらすぐに農薬を散布していました。」
農薬散布で何とか被害を抑えていた藤倉さんですが、真夏の圃場での作業の厳しさを思い知ったそうです。
「館林は全国最高温度も記録するくらい暑い地域。その中での薬剤散布はかなりの重労働でした。涼しくなってきた夕方にやろうとするとゲリラ豪雨の心配がある。農薬の抵抗性の問題もあるから、このまま農薬での防除を続けるのは難しいと思っていました。それで去年、普及員さんからのお話もあって、土着天敵の利用と、露地ナスで登録のとれたスワルスキーでの防除に挑戦しました。」
藤倉さんは土着天敵の温存植物として、ナスの圃場周囲にソルゴーを播種し、株間にマリーゴールドを植えました。そして、スワルスキーを導入する圃場と、土着天敵だけの圃場とで害虫の発生と天敵の定着を観察しました(この2つの圃場を観察した調査結果は、文末をご覧ください)。
「館林地区農業指導センターの方に調査をしてもらいながら、一緒にいろんな虫を観察しました。今まで見たことの無い虫がたくさんいて、しかも害虫を食べる天敵がこんなにいるんだと驚きました。なかでも活躍していたのがヒメハナカメムシ。スワルスキーを導入した圃場では、6~7月の間はスワルスキーがあまり増えていないようでした。その代り、ヒメハナカメムシの黄色い幼虫が葉裏の葉脈に隠れるようにしてたくさん見つかりました。とても心強かったですね。スワルスキーはどこに行ったのかと心配になりましたが、担当の普及員さんが、下葉で増えているのを確認してくれました。上の方はヒメハナカメムシ、下の方はスワルスキーと、住み分けしていたんですね。アザミウマも少しいたけど、被害果はほとんどありませんでした。
土着天敵だけの圃場でもヒメハナカメムシがたくさん増えて、アザミウマの被害もしっかり抑えてくれていましたね。他の天敵も活躍しているようでした。ただ8月になったら、ヒメハナカメムシが少なくなってきた。アザミウマも増えてきているみたいだしどうしようと思って。薬剤散布をしようか迷っているうちにまたヒメハナカメムシが増えてきて、アザミウマを抑えてくれたから薬剤散布をしないで済んだけど、毎年こんな風に乗り切れるかはわからないですよね。
スワルスキーを放飼した圃場はヒメハナカメムシが少なくなってもアザミウマが急に増えることがなく、安心していられました。株全体の葉でも見つけられるくらい定着していましたよ。」
ヒメハナカメムシは、餌とするアザミウマが少なくなったことで少なくなり、またアザミウマが増えてきたので後を追うように増えたと考えられます。天敵の増減は餌である害虫の増減に左右され、気象条件によっても毎年変動するものです。スワルスキーを導入して圃場に定着させることで、不安定な土着天敵の効果を補い、害虫の発生を効果的に低く抑えることができると言えます。
藤倉さんの露地ナスでの天敵利用は大成功だったと思えますが、他の地域でもそうだったように、藤倉さんの圃場もハダニ類やカメムシ類、病気の発生に注意が必要でした。
「前半は薬剤散布が減ったことで病気の消毒もいっしょに減ってしまって、うどんこ病に悩まされました。後半は気を付けて、2週間に1回は殺菌剤を散布するように心がけました。6月末に害虫のカスミカメが発生したので、ネオニコチノイド系の農薬を被害株にだけ散布しました。ハダニは5月末から6月にかけて増えてきたので、その時は天敵に影響の少ない殺ダニ剤を2回連続で散布してハダニを減らすことができました。
害虫の発生は毎年どうなるかわかりません。特にハダニは急に増えるから、今年の露地ナスではスワルスキーに加えて、スパイカルEXも導入しようと思っています。」
|