例年3月下旬に開催される日本応用動物昆虫学会(以下応動昆)大会に参加し、特にIPMに関連する話題を中心に情報収集を行いました。
これらを報告するとともにIPMに関する今後の方向性を考察してみたいと思います。
スワルスキー前(まえ)・スワルスキー後(ご)と言われるようにスワルスキーカブリダニの登場以前の生物農薬の利用は慣行防除のプログラムの中に生物農薬を代替として使用する考えであり、生物農薬の普及も低い状態でした。本種の登場は安定して増殖、定着することから、抜本的に防除プログラムを作り上げるという考え方に変わり各作物でIPMプログラム利用が高まってきたところです。
このような背景から、生物農薬をより安定して利用できるような技術やそれらを用いたIPMプログラムの発表が多く、施設果菜類(ピーマン、ナス、キュウリ)などから、施設花き類、露地ナス、オクラ、ネギ等の野菜類、さらにカンキツ、リンゴ、ブドウ等の果樹類に到るまでその技術確立と周辺研究の発表の幅や種類が広がってきています。
★施設及び露地におけるカブリダニの利用では、やはりスワルスキーカブリダニ利用の発表課題が目立ちました。
しかし着目すべきはポスト・スワルスキーと言われるリモニカスカブリダニについて鹿児島県農業開発センターならびに弊社の発表内容です。
鹿児島県農業開発センター: スワルスキーカブリダニとリモニカスカブリダニの放飼量(25頭/㎡~100頭/㎡)と温度(平均15℃、18℃、21℃、25℃)条件でピーマンでの増殖性、ミナミキイロアザミウマに対する防除効果を調査し、リモニカスカブリダニはスワルスキーカブリダニと比較して低温条件になるほどその増殖性、防除効果の優位性は顕著だったとのこと。
アリスタ ライフサイエンス株式会社: リモニカスカブリダニはスワルスキーカブリダニに比べヒラズハナアザミウマの捕食量が多く、2齢幼虫も捕食可能。低温条件ではその差はさらに大きいとのこと。
★スワルスキーカブリダニを中心としたIPMプログラムでもタバコカスミカメを併用することでより安定した効果が得られています。このタバコカスミカメに関する発表でも興味ある話題がありました。
近畿大学: タバコカスミカメのミナミキイロアザミウマ幼虫とタバココナジラミ幼虫に対する選択性を比較するとアザミウマの方が有意に捕食されると発表。やはり、動くものの方が捕食され易いのかもしれません。
★露地作物でのIPM防除技術の研究では、土着天敵を強化させるインセクタリープラント(天敵温存植物)の有効性等の発表がありました。
宮崎大学: インセクタリープラントとしてオクラが有効であり、露地ナス圃場にオクラがない場合にはアザミウマ密度が低下すると土着のヒメハナカメムシ類の密度も低下しますが、オクラが存在する場合には長期にわたってヒメハナカメムシが安定して発生し、アザミウマがいなくても密度が持続することが報告されました。
この安定した密度維持はオクラが作り出す真珠体の栄養にあるようです。これを利用するとヒメハナカメムシ1齢幼虫の生存率が非常に高まることが報告されました。