アリスタIPM通信 施設メロンにおけるIPM防除技術の取り組み
 
 
施設メロンにおけるIPM防除技術の取り組み
 
フィールドアドバイザー四国担当
中村幸生
 
 
本取り組みは高知県中央農業振興センター農業改良普及課山田美保江・徳永裕代(旧所属)両氏が (一社)全国農業改良普及支援協会主催の全国農業システム化研究会(重要病害虫対策にかかわる生物農薬等の利活用に関する実証調査)の事業によって、3か年にわたり実施されたものです。
 
高知県香南市夜須町におけるアールスメロンに対する天敵による防除効果の確認
メロンにおいては、キュウリ、ナスなどの増殖パターンと異なり、天敵の確認に1ヶ月近くを要したが、ミナミキイロアザミウマやタバココナジラミの密度抑制効果が認められた。
 
図1. 施設メロン抑制作における天敵および害虫の推移(H25)
図1.  施設メロン抑制作における天敵および害虫の推移(H25)
 
 
メロン部会15戸のうち14戸46圃場について集計したアンケート結果による効果の判断
88%の圃場で天敵を使用してもこれまで以上の防除が実現できる感触をつかんだと評価された。
収量の増加、品質の向上を評価された生産者もいた。大半の方が、農薬使用が少なくなり、圃場の緑が増し、生き生きとした感じを実感されていた。
メロン部会15戸のうち14戸46圃場について集計したアンケート結果による効果の判断
 
 
新たな発見 上位節雄花の意義
メロン栽培では摘芯や芽かきも行われることから生長点が存在しない。さらに、摘花も行われる。しかも、メロンは節水栽培であり、天敵スワルスキーには過酷な条件といえる。しかし、よく観察すると、図2、3に示すように雄花は産卵場所、花粉供給、棲家などとして機能していると判断された。さらに、上位節に雄花を残すことにより、それより下の節位への花粉の飛散と花殻の落下による棲家の提供につながっていることが分かった。

これらのことは栽培終了時の全葉調査からも確認でき(図4)、上位節雄花を残すと葉表でも多くのスワルスキーが計測でき、葉裏を含めた絶対数が増加した。
一方、害虫のアザミウマも上位節雄花を残すことで同様に増加することが明らかになり、リスクは増加することがうかがえた。また、花を残すリスクとして、つる枯れ病、菌核病の発生助長も懸念された。
 
新たな発見 上位節雄花の意義
 
 
◆まとめ
3か年の取り組みで得られた結果をもとに作成されたマニュアルが表1である。

(1)天敵(スワルスキーカブリダニ)の活用方法
(放飼時期)誘引後交配前、花が開花し始めてから。放飼前には天敵への影響日数が短く、効果の高い薬剤で事前に防除する(ゼロ放飼の徹底)。
(放飼回数・量)1回・基準量(50,000頭/10a)とする。
(天敵剤の形態)ボトル製剤、プラス製剤どちらでも可能。ボトル製剤は1株ずつ散布し、パック製剤は数株おきに等間隔に設置する。
(放飼位置)天敵は害虫がいない時には花粉をエサとする。また、雄花のガク毛じを産卵場所とすることから、花に近い位置に放飼する。
(定着・増殖促進)放飼後は天敵の定着を促すために薬剤の散布は控える。天敵のエサとなる花粉を多く確保するために、できるだけ雄花を残す。

(2)物理的防除
(防虫ネット)ハウスサイド、天窓、入口などの開口部にネットを被覆する。目合いは、なるべく小さい0.4mmが最適だが、少なくとも0.8mmまでの目合いまでの規格で展張する。目合いは小さいほど害虫の侵入防止効果が高まると推測されるが、換気が不十分となるので、ハウス内の気温ムラを解消するために循環扇の設置や高温期には遮光剤の塗布など昇温抑制対策をとることが望ましい。
(粘着板)スワルスキーは若齢幼虫しか食べることができないので、成虫捕殺用として少なくともホリバー 青、黄各100枚以上を設置することを推奨する。

(3)その他天敵対象害虫以外の病害虫に対する防除

薬剤を使用する場合は、天敵への影響を考慮する。
(害虫)スワルスキーで防除ができないアブラムシやハダニなどに対しては、発生を見逃さず適期に有効な薬剤を使用する。トマトハモグリバエ、ウリノメイガには育苗期間中および定植後に「クロラントラニリプロール剤」を予防的に使用する。
(病気)予防的に有効な薬剤を使用する。天敵増殖促進のために雄花を残した場合につる枯れ病や菌核病が発病しやすくなるので予防に努める。
 
アースメロンの天敵を活用した防除体系
 
 
 
 

※2016年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。