アリスタIPM通信 ギフパールの上手な使い方
 
 
ギフパールの上手な使い方
 
農研機構野菜花き研究部門
野菜病害虫・機能解析研究領域 虫害ユニット
太田 泉
 
1.ギフアブラバチについて

ギフアブラバチ(学名Aphidius gifuensis)(図1)は、アブラムシ類に寄生するハチの一種です。日本国内に広く生息するほか、中国や朝鮮半島、台湾にも分布しています。導入天敵のコレマンアブラバチ(アフィパールⓇ)と同じ属に分類されるため、両種は似通った形態をしていますが、寄生するアブラムシの種類が異なります。また、コレマンアブラバチは全体的に黒褐色系の体をしているのに対して、ギフアブラバチは黄褐色系です。体のサイズもコレマンアブラバチよりやや大きめです。


図1 ギフアブラバチ(雌成虫)
図1  ギフアブラバチ(雌成虫)
 
2.ギフパールⓇの特徴

ギフパールⓇはギフアブラバチが含まれた天敵製剤であり、平成28年1月20日に新規登録されました(農林水産省登録第23771号)。プラスチックボトルの中にギフアブラバチのマミーが250個以上入っており、製品受取時前後にマミーから成虫の羽化が始まります。適用病害虫はアブラムシ類ですが、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(以下ジャガヒゲ、図2)とモモアカアブラムシに対して防除効果があります。一方、ギフアブラバチはワタアブラムシやチューリップヒゲナガアブラムシなどにはほとんど寄生しないため、これらの害虫アブラムシ類に対する防除効果は期待できません。
図2 ジャガイモヒゲナガアブラムシ
図2  ジャガイモヒゲナガアブラムシ

したがって、ギフパールⓇを利用する際は、発生しているアブラムシの種類を正確に把握することが重要です。現時点でギフパールⓇが利用できる作物は、施設栽培のピーマン、トウガラシ類に限られていますが、将来的には、ナスで発生するジャガヒゲへの適用も検討されています。ギフアブラバチの活動に適した温度は概ね20~25℃ですが、温度15℃・10時間日長の低温短日条件下でも休眠しないことが分かっているため、加温栽培を行う施設内であれば冬季も活動できます。逆に30℃以上の高温では、発育遅延などの悪影響が現れます。ギフアブラバチはムギヒゲナガアブラムシにも寄生できます。そのため、ギフアブラバチの増殖やバンカー法(後述)には、ピーマンなどの野菜類を加害しないムギヒゲナガアブラムシを使用します。コレマンアブラバチのバンカー法に利用されるムギクビレアブラムシには寄生しません。
 
 
3.ギフパールⓇの上手な使い方

ギフパールⓇには、アフィパールⓇ(コレマンアブラバチ)で防除できないジャガヒゲに寄生できる特長があります。西日本の施設促成栽培ピーマンでは、スワルスキーカブリダニ等の天敵利用の普及にともなって農薬の使用量が減った結果、従来では問題にならなかったジャガヒゲが発生するようになり、被害が顕在化しています。ジャガヒゲに吸汁(加害)されたピーマンの果実には退色斑点が生じるため(図3左下)、可販果が減少して大きな経済的損失となります。今回は、西日本の施設促成栽培ピーマンにおけるジャガヒゲ防除のためのギフパールⓇの使い方を紹介します。
図3 ジャガイモヒゲナガアブラムシによるピーマンの被害(吸汁痕)  左上: 枝先端新葉の萎縮、 左下: 果実の退色斑点、 右: 成葉の黄化
図3 ジャガイモヒゲナガアブラムシによるピーマンの被害(吸汁痕)
左上: 枝先端新葉の萎縮、 左下: 果実の退色斑点、 右: 成葉の黄化

施設促成栽培ピーマンは9~10月に定植した後、翌年の5月頃まで栽培が続きます。ジャガヒゲが発生する時期は一定ではありませんが、定植後から年内と3月以降に発生しやすい傾向があります。ジャガヒゲの発生初期は、枝先端の新葉部分で萎縮症状が現れます(図3左上)。ジャガヒゲは他の害虫アブラムシ類のようにコロニー(集団)を作ることが少なく、移動分散しやすい習性があるため、被害部位でジャガイヒゲ自体を発見できなくても、被害痕を発見した時点で速やかにギフパールⓇを放飼します。500頭/10aの密度で2~3回放飼します。

被害株が多い場所に集中的に放飼するとより効果的です。放飼間隔は1週間より短くても構いません。ギフアブラバチが入った容器は、結露などが入らないように設置します。また、アリの食害などにも気を付けます。ジャガヒゲに対するギフパールⓇの防除効果は放飼後1週間程度で現れます。被害株の拡大や被害果の発生が止まります。

なお、ジャガヒゲの被害を発見した時点で被害株率が1%を大きく超えている場合や、ギフパールⓇを放飼してもジャガヒゲの被害が止まらない場合は、ピメトロジン水和剤などスワルスキーカブリダニなどに影響の少ない選択的殺虫剤を散布して、ジャガヒゲの密度を確実に低下される方法に切り替えてください。
 
 
4.ギフアブラバチのバンカー法

代替寄主にムギヒゲナガアブラムシ、その餌植物にムギ類を利用することで、ギフアブラバチのバンカー法が実施できます。コレマンアブラバチのバンカー法も実施している場合には、ムギクビレアブラムシ(コレマンアブラバチの代替寄主)がギフアブラバチのバンカー植物につかないように、両種のバンカーを離して設置します。また、バンカー法では、外気温が上昇する春以降に二次寄生蜂が侵入して、バンカー上でのギフアブラバチの増殖が低下することがあります。その場合は、ジャガイモヒゲナガアブラムシの発生に応じてギフパールⓇを集中的に放飼する方法が適しています。
 
 
 

※2016年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。