そんな中、最初に天敵の効果を実感したのがアフィパールによるアブラムシ防除です。イチゴの温室内に放飼したアフィパールですが、どこで活動しているのかもわからずに数週間が経過したある日、花房に無数のマミーを発見したのです。
これが天敵の効果なんだ! と感動したことを今でも鮮明に覚えています。
今一つ安定しなかったアフィパールの効果も、バンカープランツのアフィバンクを併用することで成功事例は増えていきました。その後静岡県における天敵利用はイチゴを中心に進んでいくわけですが、アフィパールにアフィバンクを取り入れて成功したように、ハダニ防除も徐々に進化を重ねています。
ハダニの多発場所への放飼はどうもうまくいかないようだという経験から、ハダニの発生株率を調査して発生株率10%以下での利用を進めるようにしました。これはそれまでと比べて効果は安定したものの、ハダニの発生状況を調査するのに手間がかかりすぎ、この手法が定着するには至りませんでした。
しかしスパイカルの登場で天敵利用の様子はガラリと変わります。
捕食力が高いスパイデックスと比較して、食べる量は少なくても耐飢餓性に強いスパイカルはハダニ防除のベースとして利用され始め、高い効果を実感する機会が増えました。スパイカルは餌ダニ入りのスパイカルEXに進化して、このあたりから害虫ゼロでの放飼を推奨するようになりました。近年ではハダニの薬剤抵抗性問題でゼロ放飼が困難になり、再びスパイデックスの追加放飼が注目されています。
以上のように天敵の利用技術は日々進化の過程をたどってきました。
果実の被害痕が商品価値を著しく落とすナスでの天敵利用は当初は進まないだろうと考えられていましたが、今では一番安定した効果を発揮できる作物になっています。ハダニの薬剤抵抗性やスリップス類に対する防除効果など、これからも解決していかなくてはならない問題はたくさんありますが、今までも諸問題を乗り越えてきたように今後もIPMの手法は進化し続けて難防除病害虫に対する切り札となっていくことと信じています。