アリスタIPM通信 植物保護における患者と医者とクスリ 生物的防除に求められるもの
 
 
植物保護における患者と医者とクスリ
~生物的防除に求められるもの~
 
元静岡県柑橘試験場 古橋嘉一
 
 

農家からの農薬散布後におけるクレーム数で一番多いのは?
「効果のふれ」と「薬害」である。

生物的防除の実用性とは
1.実際に利用する場合に価値があること。
2.または、実際の現場などで利用して有効であること。

医者にとって生物的防除を採用するかどうかは従来の防除手法と比較して決定される

生物的防除に求めるもの⇒医者(農家)の場合
何故、患者の面倒を見ているか⇒金もうけのため、環境のためではない。

・防除効果の再現性
・全体の防除経費がクスリでやるより安い
・防除効果がクスリより高い
・利用方法がクスリなみかクスリより易しい
・いつでも手に入り、品質が常に一定で効果が確実であること
・生産された農産物がクスリで生産されたものより高い

生物的防除に求めるもの⇒クスリ屋(供給者側)
1.防除効果の再現性が高い⇒誰がやっても防除効果が得られる
2.生産費が安い
3.野外でも使用できる
4.医者に対する技術的支援なしでも実用性がある
5.クスリに対する抵抗性の付与
6.貯蔵性がある

実用化されたはずの技術が何故普及しないか
1.試験方法に過誤があった
2.試験を実施した人だけの主観による実用性だった

仮説とは⇒自然科学その他で、一定の現象を統一的に説明しえるように設けた仮定。
⇒ここから理論的に導き出した結果が観察や実験で実証されると仮説の域を出て一定の限界内で妥当とする真理(定説、法則)となり、普遍化された技術となる。

●農薬の防除効果試験(実験)を考えてみると⇒試験を実施する前にどのような仮説を立て試験設計を作成し実施しているか。
・作物の生態、 ・病害虫の生態 ・農薬の特性(基礎活性)などをよく知り試験を実施すべき
●試験結果の考察⇒なぜそうなったか?
⇒仮説の検証ができたか⇒普遍化(真理、定説、法則)⇒再現性⇒技術の確立⇒実用性あり⇒実用化・普及へ⇒農家が使える技術

得られたデータは普遍的か!再現性があるか!
⇒誰がやっても何処でやっても同じ結果が得られるのが普遍性・再現性⇒実用性がある。
☆登録された農薬のすべての試験結果に普遍性(再現性)があるわけではない。

●科学とは主観を客観にするためのプロセスである⇒日高敏隆

●どの会社や研究機関のHPを開いても
・コンプライアンス(法令順守)やCSR(企業の社会的責任)を強調している。⇒技術者(研究者)倫理

1.防除基準や防除暦に採択・削除する農薬に対する説明責任
2.不効や薬害事例などの追跡実証での確認
3.リスク管理(間違いへの対応)
4.自己研鑽(CPD=Continuing Professional Development)

●過ちを改むるに憚ることなかれ

●農薬の不効は農家の不幸である!


※本稿は、東京農業大学総合研究所生物防除部会での講演スライドを講演者の許可をもらった上で和田哲夫が要約したものです。

 
 
※2014年7月23日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。