そこで、生産者はハダニ防除に関しては大量の水を使います。多い人では10a当り1,000ℓ以上の散布をすると聞きました。この大量の水が栽培環境を悪化させているのではないかという話があります。ハウス内の湿度が高くなるとともに、薬剤によるストレスがバラにかかります。(薬剤散布で葉に薬害が発生しやすいことからもストレスがかかっていることが推察できます。)そして、高湿度とこのストレスにより気孔の開閉が少なくなることで、葉からの蒸散量が減少します。蒸散量が減るということは根からの水分および養分吸収が減ることになります。ということはバラの生育が抑制されると考えられます。
では、逆にハダニ防除による大量の水の散布がなくなるとどうなるでしょうか?
葉からの蒸散量が増加し、根からの水分および養分吸収が増加することになりませんか?それだけでかなりの改善効果が認められそうです。オランダのバラ栽培でIPM防除が広まっているのは、上記の理由からです。すなわち、散水量が減ったことによるバラの蒸散量の増加に伴う増収・品質向上です。実際にバラ栽培で天敵を利用してうまくいっている日本の生産者は、「養液の減りが早くなった。」「市場で品質がいいと言われた。」という話をしてくださいます。
さて、実際のバラでのIPM防除ですが、大きな問題があります。それは、バラ生産者のほぼ全員がペンタック水和剤を使用しており、この剤の天敵に対する影響が非常に長いことです。具体的に言いますと、ペンタック水和剤を散布した場合、最低でも2ヶ月間天敵を使うことができません。この2ヶ月間をいかに過ごすかが最大のポイントとなります。
ここで、弊社が現在考えているバラのIPM防除についてお話しいたします。
前述のように、ペンタック水和剤が定期的に散布されていますので、天敵を入れるに当たっては、ハダニが少なく、ペンタック水和剤の散布頻度が少ない時期から放飼すべきだと考えております。そこで以下の時期を考えています。
・ 害虫が少ない11月にペンタックを散布して2月頃に天敵を放飼、その後定期的に追加放飼。
このために、次頁の流れで年間の防除を考えています。