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天敵利用が進むカブリダニとは一体どんな生き物?
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天野 洋(京都大学大学院農学研究科)
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ダニって昆虫の仲間? 古来、私たち日本人は「○○ムシ」と称して、小さな生物を十把一絡げに読んできましたが、そのためダニもクモも虫(昆虫類)だと思い込む人が多くいます。下の2つの図は豊島真吾氏(北海道農業研究センター)が作られたダニ目(モク)、そしてカブリダニ(科)がどのような生物であるかを示したものです。因みに昆虫は下図の上から2段目の「大顎亜門」に、クモは同じく上から4 段目の「クモ亜綱」に入ります。今日の主役であるダニとの関係が分かります。
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日本の野外からは、100 種近いカブリダニの種が今まで発見されてきましたが、みなさんに身近な市販天敵資材であるカブリダニ種の多くは、外来性(日本には生息していなかった)のものが多く含まれています。 ククメリスカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、チリカブリダニなどはこれに当たります。かろうじてミヤコカブリダニが日本に在来する種と言えましょう。これら全ての種はムチカブリダニ亜科(カブリダニ科内の3 亜科の1つ)に属します。
植物を加害するハダニやフシダニの天敵はカブリダニだけ? 天敵類の利用法は、下表の最下段にある永続天敵的利用と生物農薬的利用に加えて、天敵保全・保護に大きく分けられます。実はハダニの天敵類には多種多様な捕食性昆虫・ダニ類が含まれます。それらの中でのカブリダニ科の位置づけはこの表の通りですが、他の昆虫天敵類に比べて利用形態には幅広いものが存在し得ます(野外での永続・保全、施設での生物農薬など)。
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日本で天敵として人為的に利用されているカブリダニ種は科(分類群の1つ)全体ではその一部で、属レベル(科の下位の分類群)での食性にも傾向が存在します(次の表)。チリカブリダニ(スパイデックス)を除く全ての市販天敵資材種が(旧) Amblyseius 属に入っています。 これは本属の種が適度な捕食性と定着性を有することによると考えられます。市販の生物農薬表ハダニ天敵の種類と特性(天野,1996)資材としての適合性は別として、著しく定着性の劣る天敵種の利用は、農家にとっては持続可能性の低い技術となります(もちろん、費用便益関係にもよる)。また、施設内などで併発する他種多様な害虫・害ダニ類に、個別の天敵資材をそれぞれ適用すると、複雑で経済的にも持続性を欠くIPM 技術となりがちとなり、農家にとっては大きな負担が生じます(各害虫種に対して、異なる農薬を施用せざるを得なかった状況の再現)。
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天敵カブリダニ利用における研究サイドの支援は?
まず、自然に存在する天敵カブリダニを利用する事は持続的で経済的な技術と言えます。では、日本のどの場所で、どのような在来性カブリダニが生存しているのでしょう。左の図は、在来性カブリダニの代表種でもあるケナガカブリダニの採集記録です。この様な調査によって本種が日本全国に分布している事が明確となり、天敵利用技術の確立を後押しします。
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上述しましたが、わが国には100 種近くの在来性カブリダニ種が生存します。私どもの研究は、その全ての種の分布を明らかにして来ましたが、中には寒冷地にしか分布しないものや、反対に温暖地のみで生息可能な種もいます。
研究では、さらに果樹園の防風樹上に生息するカブリダニ種の調査なども多くの府県(例えば、長崎、奈良、静岡、千葉など)で実施され、その利用が推進されています。さらに、生息するカブリダニ種を正確に把握する目的で、私達はより簡単な種の見分け方を作成して提供を始めています。下の図は、豊島真吾博士(北海道農業研究センター)の主導のもとで日本ダニ学会のHP に「カブリダニ識別マニュアル(Phytoseiid mite Portal)」として公開されているもので、だれでもネットから自由に入る事ができます。一般の方にとっては、この資料だけで種の判定をする事は少し困難かも知れませんが、カブリダニ全般のイメージを得るには十分かと思いますので、是非お試しください。
日本ダニ学会
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※2014年4月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。
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