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生産者の声
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響灘菜園株式会社 IPM担当 福永 敬輔さん(福岡県北九州市)
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響灘菜園株式会社(以下、響灘菜園)は、福岡県北九州市若松区響灘地区に位置するトマト生産法人です。温度・湿度・灌水などをコンピューターで制御した、総面積約8.5haの大規模フィルム温室で、 カゴメブランド「こくみトマト」や業務用「デリカトマト」などの生鮮トマトを栽培しています。カゴメ独自の自主基準で使用農薬を制限し、「電解水」や「生物農薬」なども活用したIPMに取り組むことで、化学合成農薬の使用を最低限に減らした、安全・安心なトマトの生産に取り組まれています。生態系にも配慮し、授粉には日本在来種のクロマルハナバチを使用されています。
今回はIPM担当の福永さんに、響灘菜園におけるIPMの取り組みについて伺いました。
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モニタリングによる病害虫発生状況の把握が基本 当菜園は、2006年の設立当初からアリスタ ライフサイエンス(株)(以下、アリスタ)と一緒にIPMに取り組んできました。 IPMにおいて、最も大切で基礎となるのは病害虫発生状況のモニタリングです。例えば害虫、特にコナジラミ、アブラムシのモニタリングには、「ホリバー イエロー」(黄色粘着板)を全面に使用していますが、設置しているホリバーのうち、1ha当り約50枚をモニタリング用として観察しています。モニタリングは毎週8人体制で行ない、その結果を基に防除対策などを立案しています。発生状況を十分に把握することで、適切な薬剤を、必要な時に必要な範囲に散布すれば済むという利点が生まれます。
当菜園以外のカゴメ系列菜園も共通のモニタリングを行なっており、その結果や防除対策、栽培状況、収量などの情報も菜園間で共有して参考にしています。またモニタリング結果は、毎週アリスタさんにもメールで報告して、その都度フィードバックしてもらっているほか、月に一度防除会議も開催して、モニタリング結果を基に防除方法を協議したり、アドバイスをいただいたりして、非常に助かっています。
病害虫防除は発生の少ない時期から徹底的に 害虫、特にコナジラミの被害を抑えるには、発生が少ない冬場からしっかり叩いて減らしておくことが重要だと思います。冬場は収穫量も少ないので手をかけられますが、温度の上がる春から防除をしようと思うと収穫で忙しくなり十分に手が割けなくなりますし、害虫の増殖が速いので間に合わなくなります。そこで飛び込みのなくなる11月に密度をしっかり下げ、その状態を春まで維持できるような対応を心掛けています。
コナジラミの防除には気門封鎖剤や微生物殺虫剤「ボタニガードES」を利用して、化学合成殺虫剤の使用回数を低減しています。薬剤散布は、自走式の散布機を利用していますが、葉の裏にしっかりかけるのはなかなか難しく、植物体も大きくなるので、既定の散布液量ではなかなか十分にかからないのが悩みの種です。
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その部分をカバーするため、天敵殺虫剤 「エンストリップ」や「エルカード」も活用して補完しています。
「ホリバー イエロー」(黄色粘着板)による成虫のトラップも欠かせません。当菜園では、1ha当り約4,400枚のホリバーを生長点の付近に設置し、トマトの生育や温度環境に合わせて位置をずらすことで、コナジラミを誘殺しています。また夏、秋は周囲からの飛び込みが多いので、ハウス周りの雑草などの発生源を減らすことにも力を注ぎます。
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トマトの生長点付近に吊下げられたホリバー
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病害の中では、まだ課題は多いものの特に灰色かび病に気を付けています。万延してからではなかなか止まらないので、発生しないような環境づくりや適期の農薬散布を心掛けています。環境面では湿度管理が重要ですので、湿度が高くなり過ぎないように、今夏新たな送風システムも導入する予定です。病気の発生箇所にはマーキングして、作業者の意識付けを促すと共に、感染部位の処理や感染葉の除去などの物理的防除を迅速に行ない、発生状況に合わせて、薬剤散布も組み合わせています。バチルス菌を主成分とした「バチスター水和剤」も最近使用しています。
マルハナバチに働いてもらうためには、こまめな管理が重要 授粉には、在来種のクロマルハナバチを活用しています。トーン処理よりも省力的なだけでなく、果形が良くなることが大きなメリットです。温度が高過ぎる時期はトーン処理をしていますが、9月の使える温度になると、すぐさまマルハナバチを導入します。
マルハナバチに長い期間、活発に働いてもらうためには、巣箱を定期的に観察して、蜜の補充、花粉の給餌をしっかり行なうことが大切だと思います。特にマルハナバチが蜜を積極的に消費する時期は、巣箱の蜜が1か月足らずで無くなることもよくあるので、切らさないようにいつも補充しています。花粉は、2日に一度パートさんに給餌してもらっています。昔はマルハナバチが巣箱の幼虫を捨てる現象が見られましたが、餌を十分に与えることでそうしたことは非常に少なくなりました。働き蜂は基本、巣内の幼虫を養うためにどんどん訪花活動しますので、環境の悪化等で育児放棄しないように、人工的に蜜、花粉を提供し続けて、巣を肥培管理してあげることが大事かなと思います。またいつもバイトマークをチェックしていて、その状況に応じて設置する箱数を変えたり、特定の巣箱に集中しすぎないように細かく移動したりして、安定した授粉活動を誘導しています。
これからもIPMを通じて、安全・安心・安定供給を目指します 当菜園には、流通や市場関係者など多くの方が栽培状況を見学に来られますが、その際にはIPMの取り組みや、クロマルハナバチによる授粉のメリットなどを説明して積極的にPRしています。お客様のニーズに合うように、今後もより安全・安心なトマトをいつも安定して生産できるように、従業員一同、力を合わせて取り組んでいきたいと思っています。
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アリスタさんには、いつも相談に乗っていただいて非常に感謝しています。
これからも引き続き、技術的なアドバイスをお願いすると共に、既存のIPM 資材の改良や、トマトに定着しやすい新しい天敵など、より効果的で使いやすい資材の開発をさらに期待しています。
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月に一度の防除会議の様子(右テーブルの奥が福永さん)
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※2013年4月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。
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