アリスタIPM通信 生産者の声(みかん、スワルスキー、スワルスキープラス)
 
 
生産者の声
 
JAおおいた佐伯 ハウスミカン
広末 喜八郎さん(分県佐伯市)
 

大分県の県南ハウスミカン部会では、平成21年からミカンハダニを対象としたスワルスキー導入試験を始められました。生産者、試験場、振興局が一体となって試行錯誤を重ねて効果的な使用方法を模索されており、今シーズンでは、全12戸総面積約2.5ha中、6戸約1.1haでスワルスキーが使用されています。特に9月に加温を開始する、「超早期型」の作型での利用が進んでいます。

今回は、部会内で一番最初からスワルスキー導入試験に取り組まれている広末さんに、導入の経緯、現在の使用方法、使用のメリット、今後の課題などをお聞きしました。

ミカンハダニは何をかけても減らない状態でした
以前は、ミカンハダニに何を散布しても減らない状態で、非常に困っていました。そんな中、試験場・振興局からの紹介で、スワルスキーの導入試験を開始しました。最初は、スワルスキーをモミガラと混ぜてティッシュにくるみ、ミカンネットに入れて主枝の分岐部に設置する方法を試し、その後コーヒーフィルターにスワルスキーとふすまと三温糖を混合して入れて、枝に設置する方法を試すなど、試行錯誤が続きました。

このコーヒーフィルター法は、1樹あたりの設置数を多く設置できることや、ハダニの多いところに集中して多めに設置できるなどの利点がありましたが、作成に手間がかかることと、コーヒーフィルターごとのスワルスキーの数にばらつきが出てしまい、少ないところでは効果が劣るという欠点もありました。

その後、パック製剤のスワルスキープラスが登場しました。1樹あたりの設置数は少なくなりますが、設置が非常に簡便で、ばらつきもないので、現在はこちらを使用しています。


スワルスキー導入以前は、被覆前に殺ダニ剤を1週間おきに3連発散布し、被覆後にも2、3回散布していましたが、それでもなかなか抑えられませんでした。

スワルスキープラス放飼の体系では、放飼前にダニ剤を1回散布し、その後スワルスキープラスを適期に放飼することで、加温後の殺ダニ剤散布がほとんど必要なくなりました。樹高が高い樹では屋根のビニールに枝葉がくっつき、その部分には農薬が十分かからず、そこにハダニが残ってしまうこともありましたが、現在は樹高を低めに管理していますので、作業も楽であり、薬液もかかりやすくなり、防除しやすくなっています。

 
生産者の声(みかん、スワルスキー、スワルスキープラス)

ミカンハダニ以外の害虫防除も重要です。ヨトウムシとハマキムシはフェロモン剤により防除するようになりました。以前は、発生するたびに農薬を何度も使用していましたが、今はスワルスキープラス放飼の1か月以上前にラービンを散布してから、フェロモン剤を使用すれば、ほとんど被害が出なくなりました。カイガラムシは、スワルスキーカブリダニに影響の少ないアプロードで防除できます。超早期型栽培は収穫が早いので、アザミウマはほとんど問題にはなりません。殺ダニ剤は、特に散布液量が多く、丁寧に散布しようとすると10aで2時間以上かかる重労働でしたが、スワルスキーカブリダニ放飼により、そうした重労働から解放されたのが大きなメリットです。

天敵やフェロモン剤を利用することによって、「あれを防除しなくてはいけない、これを防除しなくてはいけない」と心配する必要が少なくなり、その他の作業スケジュールが立てやすくなりました。資材代は決して安くはありませんが、薬剤を使わなくても済むことや、散布コストを考えると、同等以上になります。


防除を成功させるには、こまめな観察と、時に我慢
以前は葉にも実にもほとんど被害が出ないように心掛けて薬剤防除をしていましたので、「多少ハダニが発生して被害が出ても我慢する。」というのに不安を覚えることもありました。これまでの試験から、ミカンハダニが少しぐらい見られてもスワルスキーが抑えてくれることや、水戻し前までの多少の被害であれば、収穫時には被害痕が目立たなくなり出荷には問題ないことがわかりました。ミカンハダニの密度がどれくらいの時に放飼をするのか、レスキュー防除をした方がいいのかの見極めが非常に重要で、難しいところです。

なかでも着色初期から十分着色するまでの間は農薬散布ができず、その時期の被害は収穫物に影響が出てしまうので、特に重要です。最適な方法を確立することが今後の課題です。理想的には、放飼したスワルスキーで収穫までミカンハダニを抑えたいので、そのためにどのような方法が最適か、これからも検討していきたいと思います。

 
 
※2013年2月28日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。