長年、施設園芸作としていちごを生産しております。赤く・甘い香りただよう美味しい いちごを消費者の皆さんにお届けする喜びの反面、春先からの忙しさには、いちごが熟れれば熟れるほど顔が真っ青になるくらい多忙になります。
JAの共販スケジュールをもとに、毎朝5時からの収穫・選別・パック詰め・出荷という作業が毎日続き、適期収穫をするためにまさに猫の手を借りたい日々で、病害虫防除作業の時間などほとんどないくらいです。
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左が木下さん、右がJA大浜 山内指導員
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いちご栽培でのハダニ防除 こんな時、毎年ホトホト困るのが微小害虫であるハダニの防除です。高齢化すると視力も弱り、発生初期はハダニをなかなか見つけられず、気が付けばいつの間にかクモの巣が張り巡っている始末です。
化学農薬のみでは、ダニ防除剤の種類も少なく使用回数も制限され、最近では感受性が低下している農薬もあります。また私自身、より安全・安心なものを作りたい、そのためにも化学農薬の使用を極力減らし、自らの農作業軽減も図りたいという思いが日頃からありました。そのため、防虫用サイドネットやハウス周辺への水張りでハダニの飛込み防止などの工夫もしておりますが、難しいのが現状です。
スパイカルEX(ミヤコカブリダニ) とスパイデックス(チリカブリダニ)の同時放飼
そんな折、JA大浜で天敵の話を聞き、どうしようかと迷いながらもハウスの現地調査もしてもらい、天敵放飼時期としては1か月ほど遅くなりましたが、12月13日にスパイカルEX・スパイデックスの同時放飼を行いました。 その後観察を続け、2月1日の調査結果ではハダニの確認株は1株のみで1か月以上農薬を散布しないで済み、他の農家では例年になくハダニが多いなか、天敵の防除効果を確認することができました。
ただ、このままハダニが抑えられればと思っておりましたが、今年はハダニが例年になく多く、2月下旬以降ハダニが増え、殺ダニ剤散布後、3月1日にスパイデックス(チリカブリダニ)を放飼しましたが、一部クモの巣が見られるなど完全に抑えきることはできませんでした。
天敵を利用しての感想 今回、天敵を利用して良かったことや改善点などを思いつくまま挙げると次のようになります。
1.
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定植後ハダニ剤を計画的に散布し、なるべく早く天敵を放飼すれば冬期までハダニを抑えることができる。 |
2.
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天敵利用で農薬散布回数が減少し、ハチによる受粉も盛んに行われ、奇形果も少なくなり品質が向上する。 |
3.
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天敵放飼後はツボ的に発生するハダニを作業中 良く観察し、気門封鎖剤等を上手に利用した。
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4.
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ツボ防除や下葉摘みを徹底するなど工夫すれば防除効果が高くなるのではないか。 |
5.
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農薬散布回数も削減でき労力軽減にもつながったが、天敵利用によるコストアップなどをJAと共に総合的に検討する必要がある。 |
今年もいちご栽培が本格的に始まる中で営農指導員とも相談し、いちご部会員11戸の皆さんにも天敵利用の体験をお話しながら、ハダニ防除への天敵利用を少しでも進めていきたいと思っております。
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