アリスタIPM通信 生産者の声(なす、タイリク、スワルスキー)
 
 
生産者の声
 
JA岡山西
宮崎 昭雄さん(岡山県総社市)
 

JA岡山西のなす部会は約10名、岡山県内では最も古いなす産地です。今回は、岡山県総社市で合計18aのハウスでなすを栽培され、平成21年度農水省「農業技術の匠」にも選ばれておられます宮崎昭雄さんにお話を伺いました。宮崎さんはご自分で苗づくりもされていますが、育苗期より天敵導入を視野に準備をされています。

 
タイリク、スワルスキーから土着天敵の活用へ

天敵を導入して15年以上になるけれど、最初はアザミウマ防除にタイリク(タイリクヒメハナカメムシ)を導入したことがぼくの天敵利用の始まりでした。タイリクは苗を定植した直後の8月20日ころに放飼。当初はよく増えて働きも申し分なかったけれど、だんだん気温が下がり、日が短くなってくると数が減ってくることが弱点でしたね。


 
宮崎 昭雄さん
 
宮崎 昭雄さん

そしてスワルスキーの販売開始とともに導入を開始して、一昨年からは土着天敵のタバコカスミカメも使い始めた。 8月中旬に苗を定植してから、その1週間後には スワルスキー、スパイカルEX、アフィパールを同時に放飼して、あらかじめハウスの外に植えておいたゴマの株に集まってきたタバコカスミカメをゴマの株ごとハウスの中に入れてやる。

 

ポイントは放飼のタイミングとバンカープラント活用

アザミウマは、特にタバコカスミカメを使い始めてからは今ではほとんど怖くなくなりましたね。ハウスに少しいるだけでそれも放っておけばいなくなる。去年は結局天敵導入前に一度農薬を撒いただけで、その後は一度もアザミウマ防除はせずに済みましたよ。タバコカスミカメは冬場でもよく働いてくれるので、タイリクに代わって使うようになっています。スワルスキーもアザミウマ防除に関しては今や補完的な位置づけですが、チャノホコリダニ防除によく効くのでこれは欠かせません。スワルスキーは8月に導入してから、ハウス内で冬越しもしてくれて、春にも3月20日頃に入れますが、それまでも結構生き延びてくれます。アゲラタムや宿根バーベナをバンカープラントとしてハウスの中に植えておくとより定着しやすいですよ。

アブラムシ防除はバンカープラントとしてソルゴーをあらかじめ外に植えておいて、それにアブラムシがついたらハウスの中に入れる。そして他の天敵と一緒にアフィパールを定植1週間後に放飼する。それでもアブラムシが発生することはあるので、去年は農薬を2回ほど部分散布してアフィパールを追加放飼した。アブラムシ防除については導入のタイミングがまだつかめていないところもあって、もう少し勉強が必要ですね。
ハダニ防除は、スワルスキーと同時にスパイカルEXを入れる。その後、ハダニが増加傾向だったら、被害が広がらないうちにスパイカルEXとスパイデックスを同時に放飼することでほぼ問題はなくなります。

 
薬剤散布時には細心の注意

ぼくは農薬を散布するときも葉裏までかかるほどしっかりとは撒かないんですよ。上から静かに散布するだけにして、葉裏にいる天敵にはなるべくかからないようにする。いくら天敵に影響が少ない農薬とはいっても、全く影響がないわけではないと思っております。農薬を上からかけただけでは害虫への効きも悪くなる。でもそれでいいんです。そもそも全滅させる必要はないんだ。全滅させないで餌になる程度害虫も残るけれど、あとは天敵とのバランスで防除できる。天敵を導入しようとした当初、試験場の先生から全圃場で天敵を導入して失敗したら大変だから一部だけにするように言われたので半分のハウスだけで天敵を導入した。他のハウスは慣行防除をしていた。天敵を入れたハウスには影響の少ない農薬だけを使っていたけれど、天敵が増えなかった。これは、散布機のホースの中に慣行防除で使った農薬がわずかに残っていて、それを使って影響の少ない農薬を天敵のハウスに散布したことが原因だったんだな。それから、一部で天敵を導入するのは難しいと考えて全棟で天敵を導入した。そうしたら天敵はよく増えた。天敵を使うときは必ず天敵用ハウスと慣行防除用ハウスの散布機やタンクは別にしなければならないと思う。天敵を使うにはそれくらい気を使った方がいいですよ。

 
天敵の定着、増殖のカギはタイミングと餌

最初タイリクを試験導入したとき、8月20日前後に入れたら1株に30頭くらいに増えた。温度が高く、日もまだ長いのでタイリクの成長サイクルが早い。でも9月の終わりや10月初めでは増えなかった。これは、スワルスキーでも同じ。天敵を入れるタイミングが天敵を増やすコツの一つだと思う。ぼくは定植から1週間後くらいで天敵を入れる。指導されているよりは早いけれど、自分で苗を作っているので、天敵を入れることも考えて苗づくりの時期から防除には気を付けている。そして定植時にはすでに1~2花咲いているように苗づくりをする。その花をきちんと咲かせて単花処理をしていくことにより、実もそろっていく。購入苗では本当の意味での天敵利用にはつながらないんじゃないかと思う。そして、天敵はすべての株に少しずつまんべんなく放飼する。スワルスキーを放飼するときには、米ぬか+ビール酵母+砂糖を混合したものを餌としてあらかじめ撒いておくと、その後の増え方も明らかに違う。こういったことが、天敵を増やすことのできる人とできない人との差になるのではないかな。ふすまは、購入できるものは外国産のものがあって、燻煙処理をしていたり他にも防除に何を使っているかわからないので混合餌には使わない。
 
 
一番のメリットは労力と体の負担の軽減

天敵を使いだして農薬をあまり使わなくなったことによるメリットは、一番は労力と体の負担の軽減。一番農薬を浴びるのは農家ですからね。天敵をうまく使っていけば体への負担も少ない。天敵は高いという人は多いけれど、自分の健康への負担を考えるべきですよ。天敵は高いという人に、ぼくは “暑い中一度薬剤防除をすると2時間はかかる。農薬代だって2万円はかかる。それを年間人によって違うけれど、相当な回数撒くでしょう。それに比べると天敵は最初入れればあとはタダで代わりに働いてくれるよ” と言う。あと、害虫があまり出ないのでなすの実へのキズも少ない。
ぼくもまだまだ勉強しなければならないけれど、天敵を使わない防除はもう考えられないですね。
 
 
※2012年7月30日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。