アリスタIPM通信 粘着ロールやタイベックを使ったアザミウマ類の密度抑制効果について
 
 
粘着ロールやタイベックを使ったアザミウマ類の密度抑制効果について
 
2011年システム化研究会成果
宮城県農業・園芸総合研究所 宮田將秀先生(現宮城県庁)寄稿
 
 

アザミウマ類やコナジラミ類を対象としたIPMの一手段として、粘着板や粘着ロールの使用が考えられます。また、光を乱反射させるタイベックの実証も各地で取り組まれています。これらの資材を使ったアザミウマ類の密度抑制効果について、2011年に宮城県農業・園芸総合研究所で実施した試験事例を紹介します。
(*タイベック・・・米国デュポン社が開発した高密度ポリエチレンのフラッシュスパン不織布。)

 
粘着ロールによるトマトのアザミウマ類の密度抑制効果
試験は施設栽培のトマトで実施しました。トマトは6月10日に2条植えで定植し、6月16日に粘着ロール(黄色ホリバーロール)を設置しました。設置は畦の中心に、高さが常に株の頂部になるように随時、調整できるようにしました。また、それに加えてハウスの側窓の開口部側にも、30cmの高さに固定して設置しました(図1)。
試験区は粘着ロール設置とアザミウマ用殺虫剤散布を組み合わせた区と、殺虫剤散布のみの区、無処理区としました。なお、無処理区以外の試験区には定植時にアセタミプリド粒剤を処理しました。
図1 ホリバーロールの設置のようす(施設トマト)
図1 ホリバーロールの設置のようす(施設トマト)
 
 
結果を図2に示しました。発生種はミカンキイロアザミウマで、無処理区のミカンキイロアザミウマ密度は試験開始から急増しましたが、殺虫剤散布+ロール区と薬剤散布区では低く推移しました。また、殺虫剤散布+ロール区と殺虫剤散布区を比べると、殺虫剤散布+ロール区の方が殺虫剤散布区よりもやや低く推移しました。
今回、アセタミプリド粒剤と殺虫剤散布の組み合わせだけでも防除効果は比較的高かったので、それに粘着ロール併用による効果の顕著な向上は確認できませんでしたが、定植まもない時期のアザミウマ類の急増期になるべく密度を抑制させる手段として、特にアザミウマが媒介するウイルス病対策として、粘着ロールは有効だと考えられました。設置場所や設置方法についてはさらに検討の余地はあります。
 
図2 ミカンキイロアザミウマの発生推移(施設トマト)(処理区は左軸、無処理区は右軸)
図2 ミカンキイロアザミウマの発生推移(施設トマト)(処理区は左軸、無処理区は右軸)
 
 
タイベックによるネギのネギアザミウマの密度抑制効果
試験は露地栽培のネギで実施しました。ネギは5月9日に定植し、8月8日にタイベックを設置しました。タイベックは15cm幅に裁断し帯状にしたものを、株の真上に高さ30cmに設置しました。試験中の設置の高さは固定しましたので、ネギの成長によってタイベックは挟み込まれますが、そのままとしました(図3)。試験区は8月2日に殺虫剤を散布した後にタイベックを設置した区と、殺虫剤散布のみの区、無処理区としました。

図3 タイベックの設置のようす(露地ネギ)
図3 タイベックの設置のようす(露地ネギ)
 
 
被害度の推移を図4に示しました。タイベック+殺虫剤区と殺虫剤のみの区での被害度は試験期間をとおして無処理区よりも低く、8月15日までは同様に推移しました。その後、タイベック+殺虫剤区での被害度は殺虫剤のみの区よりも低く推移しました。
ネギアザミウマも近年、薬剤抵抗性個体群が確認されるなど、有効な薬剤を温存させるための技術が求められています。今回、露地栽培のネギで薬剤を補完する防除技術の一つとして、タイベックの設置による効果を確認することができました。今後、すべての畦に設置する必要があるかどうかなど、効率的な設置方法について検討する必要があります。
 
図4 ネギアザミウマによる被害度の推移(露地ネギ)
図4 ネギアザミウマによる被害度の推移(露地ネギ)
 
 
 
※2012年4月26日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。