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オセアニア(大洋州)とはオーストラリアとニュージーランドをはじめとする太平洋周辺の諸地域を指すもので、この30年間で11カ国の島国が独立した。 さて、本論であるオセアニアの農業・農薬事情へと進む。オセアニアは広大な地域であるが、オーストラリア、ニュージーランドが面積、経済規模ともに圧倒的に大きいため、この2カ国について述べることとする。 オーストラリア概要 オーストラリアは面積769平方キロ、人口は約1,900万人で面積は日本の20倍、人口は約6分の1である。人種は欧州系が90%、アジア系、アボリジニが4%、1.5%である。
オーストラリアの農業(1)Crop Area:(以下mil=百万)前述のように広大ではあるが、その大部分は砂漠を中心とした乾燥地帯で、国土面積770mil haの内、牧畜、休耕地なども含めた農業地帯の総面積こそ460mil haとその6割程度と言われているものの、実際に作物を生産しているエリアはCrop AreaおよびPastures and Grasses Area共に約22mil ha程度の合計44mil haであり、国土の6%弱を占めるに過ぎない。この内、Crop Area(22mil ha)の内訳を示したのが第1表である。
*1:数字が明らかでない作物も含むので、表の合計とは一致しない
面積的には穀類が17mil haで8割弱と圧倒的で、特用作物、果樹、野菜と続く。作物別では小麦がほぼ50%、次いで大麦の16%、ルピン(豆)の7%が上位であるが、近年油糧作物であるカノーラが98~99年度で80%増の1.2mil haと伸長目覚ましい。 一方、生産指標としてのvalueで見ると、小麦がAUD3.8mil(総valueの24%)でトップをキープしているが、コットン(9%)、シュガーケーン(8%)、グレープ(6%)と小麦以下は大きく変わる。単に単位面積当りのvalueでは主な穀物は影をひそめ、バナナ、野菜、タバコなどが穀物をワン・オーダー上回る。州別のCrop Areaは右段の通りで、西オーストラリアと東南のNSWで約6割である。
(2)ローテーション作物 オーストラリアは南半球にあり、日本の夏冬とは逆に考える必要がある。穀物生産は大きく分類すると冬作(小麦、オート麦、大麦など)と夏作(コメ、メイズ、ソルガム)に別れる。 (3)農薬事情オーストラリアの農薬マーケットは97年度で約6億8千万USドルと世界で11番目である。剤別では除草剤が3分の2を占め、次いで殺虫剤が約2割強、殺菌剤は1割弱となっている。作物別で見ると、穀物等broadacreが62%、次いでコットン、野菜が大きい。
(4)農薬販売チャンネル農薬の販売は現地ホールセラーを通じたものが大半で、これらホームセラーは政府の許可を得て販売を行なっている。近年ホールセラーのM&Aによる再編が急ピッチで進んでおり、メーカーの販売戦略にも影響を与えつつある。 オーストラリアで特徴的なのは農業分野のコンサルタントの存在で、大農家はそれぞれ農業コンサルタントと契約し、その助言に基き栽培を行なっている。これらコンサルタントは農薬などに対しても広範な知識をもっており、メーカー、ホールセラーにとってコンサルタントへの営業活動も重要な仕事の一つである。 (5)農薬登録制度 オーストラリアでは過去農薬登録は州単位で行なわれていたが、1988年に現在のAustralian
Federal Aguriculture and Veterinary Actが制定され、1993年にはNRA(National
Registration Authorit)の管轄による国単位での登録制度へと移行した。 (6)GMO最近、日本でもスターリンク問題が話題となる中、世界的にGMO(遺伝子組み換え作物)に関する議論が沸騰しつつあるが、オーストラリアはこの問題に対し微妙なスタンスを取っている。まずオーストラリアで販売される食品については、厳格なGM食品の表示制度を採用した。この制度は、オーストラリア、ニュージーランド両国の厚生省による2年にわたる議論の末に決まったもので、2001年7月以降表示の義務付けが必要となる。オーストラリア連邦政府ではGM原料の含有量が1%未満であれば表示義務を免除するという妥協案も提示されたが、一分の例外を除き最終的には却下された。2000年7月に実施された住民アンケートでは、65%がGM含有食品を購入しないとする一方、27%は購入するとの結果となっている。一方、オーストラリアにとって穀物は重要な輸出作物であり、その低コスト化は至上命題である。 この観点からオーストラリアはGM作物の検討を急ピッチで進めており、2000年9月にはRoundup Ready SoybeansとPest Resistant Ingard cottonの安全性認可を行なった。その他、GMコットン、GMカノーラ、GMクローバー等もフィールドでの安全性試験を実施中である。 ニュージーランド概要ニュージーランドは面積27万平方キロ(日本の7割)、人口383万人(日本の3%)で、オーストラリアの南東に位置する島国である。オーストラリア同様、国家元首にはイギリス女王エリザベスⅡ世を戴いている。 農林水産業の就業人口は10%で、食肉、酪農品を含む農業製品の総輸出に占める割合は4割弱を占める。 ニュージーランドの農業国土が狭く、さらに酪農が中心であることから作物の耕地面積は小さく300mil ha程度で、主な作物の耕作面積は、大麦77,000ha、小麦51,000ha、リンゴ17,000ha、キウイ12,000ha、ポテト10,000haである。同国の特徴の一つが特産のキウイ・フルーツで、リンゴと並ぶ重要な輸出作物である。昨年のキウイの輸出額は2億USドルで、その84%が欧州と日本向けである。 余談ではあるが、オーストラリア人はニュージーランド人をキウイーズ(キウイフルーツ)と、ニュージーランド人はオーストラリア人をワラビーズ(カンガルー、小型の有袋類)と愛称で呼び、両国で盛んなラグビーの試合ではこの愛称が新聞を賑わしている。 一方、酪農についても少し述べておく。人よりも羊のほうが多いと言われる同国であるが、実際にはヒツジが4,600万頭、畜牛が1,200万頭であり、多いどころか人口の15倍にも達する。すさまじい数と言えよう。 農薬事情農薬マーケットとしては前記作物用以外に牧草地が加わるため、約8,000万USドルと作物面積に比べて多少多めになる。剤の種別構成はオーストラリア同様、除草剤が大きくマーケットの55%程度、次いで殺菌剤23%、殺虫剤17%となっている。殺菌剤が多いのは果物の作付面積が大きいためである。除草剤は牧草地向けが多く、Phenoxyタイプのホルモン剤、およびGlyphosateが主要の位置を占めている。次にマーケットが大きいのはDithiocarbamateに代表される果樹+野菜の殺菌剤である。殺虫剤は果樹と牧草地での有機リン剤が中心となっている。
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