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1.はじめにキュウリうどんこ病はキュウリの代表的な病害で、露地、施設を問わず、全国各地で発生する。葉の表面にうどん粉をまき散らしたような白いかびが生えるので、診断は容易である。本病の防除は主として薬剤によることが多い。サルバトーレMEもその一翼を担うことが期待される。
2.キュウリうどんこ病の病原菌キュウリうどんこ病の病原菌はSphaerotheca fuligineaで、子のう菌に属する。白い菌そう上にできる胞子は無色、単胞、楕円形の分生子で、分生子柄上に連鎖する。粉のように見えるのはこの分生子の集まりである。ときに、菌そう上に黒い小粒が形成されることがある。これは子のう殻で、中には子のう胞子が形成される。本病菌はキュウリの他、メロン、セイヨウカボチャ、ユウガオ、ヒマワリ、コスモス、ヒャクニチソウ、ホウセンカ、エノキグサを侵すがスイカは侵さない。カボチャ、ホウセンカ、コスモスなどの被害葉上に形成された子のう殻によって越年して、翌春、ここから子のう胞子が飛散し、空気伝染する。また、周年栽培されるような地帯では、植物体上に形成された分生子で越年し、1年を通じて発病、蔓延を繰り返す。
3.発病の条件分生子は15~35℃で形成され、最適温度は28℃である。湿度は45~85%が適湿で、95%以上では分生子形成は阻害される。分生子の飛散は昼間、特に10~15時の時盛んに行なわれ、夜間はほとんど飛散しない。また、曇天よりも晴天の日に飛散が多い。空中を飛散してきた分生子がキュウリの葉に付着すると、適当な条件下で発芽する。気温が15~30℃の時発芽し、最適温度は25℃付近である(第1表)。湿度は99%でよく発芽し、95%以下での発芽率は低い(第2表)。発芽した分生子は葉の表皮細胞のクチクラ層から直接貫入する。最適条件下では分生子が葉の表面に付着してから発病までの潜伏期間は5~6日である。 このように、分生子形成~感染は温度と湿度が大きく影響する。実際、湿度条件を異にするガラス室でキュウリを栽培したところ、乾燥条件ではうどんこ病が激しく発病したが、湿潤条件では発病は激減した(第3表)。
4.防除対策うどんこ病は乾燥条件の他、多肥栽培で加繁茂になった場合、風通しの悪い圃場などでも多発しやすい。窒素の過用を避け、茎葉が過繁茂にならないように注意する。栽植密度を低めにして風通しを良くする。 防除薬剤としては多くの薬剤の登録があるが、同系統の薬剤を連用すると、耐性菌が発生しやすいので注意する。第4表と第5表にキュウリうどんこ病に対するサルバトーレMEの防除効果を示した。両試験とも本剤はキュウリうどんこ病に対しキノキサリン系水和剤と同等の高い防除効果を示している。第4表ではアゾキシストロビン水和剤の防除効果も高かったが、この薬剤は、現在ではすでに耐性菌が発生し、現場では防除効果の低下が認められている。サルバトーレMEはエルゴステロール生合成阻害剤であり、このグループの薬剤は連用すると防除効果が次第に低下することが知られている。本剤の使用にあたっては、連用を避け、他の系統の薬剤とのローテーション散布を行なうことが重要である。 (千葉県農業試験場)
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