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マルハナバチ研究会主催の「第5回ナスにおけるマルハナバチ利用技術研究会」が、11月12日(金)、高知商工会館にて行なわれた。全国の主要ナス産地から300人近くが集まり、会場は満員。過去4回のマルハナバチ研究会は、トマトでの利用技術確立のために開かれたが、今回はじめてナスを対象に開催され、その関心の高さが感じられた。
▲超満員での開会挨拶 開催の背景1992年のわが国へのマルハナバチ導入以来、トマトと平行してナスでもマルハナバチ利用は検討されてきた。しかし、ナスでは明確にされない課題が多く、組織的な導入は行なわれないままであった。課題とは、冬場の花粉稔性低下などに絡む利用可能条件の見極めや、受粉による種子形成が品質面で市場に受け入れられるか、マルハナバチを導入してもアザミウマ防除体系が確立できるか、などがあった。 その一方で、オランダなどの西欧諸国では、トマトと同様にナスでもマルハナバチ利用は一般化しており、日本からの視察者は、快適なガラス温室の中で米ナスに近い品種をマルハナバチがあちこちで訪花する風景を別世界のように感じていた。 ところが、ここ1、2年、全国の試験機関や現地圃場からナスでもマルハナバチは導入可能との知見が数多く報告されるようになり、千葉、三重、高知、熊本、宮崎などでは、小規模ながら組織導入が始まってきた。 なかでも高知県は、冬春ナスの日本一の産地であり、ナスの花粉稔性の調査などを総合的に積み上げた上で、ナスでのマルハナバチ導入を実用に移した。そのため、今回の研究会は、知見豊富な高知県にて開催されることになった。
▲マルハナバチの巣箱
▲ククメリスを葉上に放飼 講演内容冒頭の挨拶は、今回の発起人である四国農業試験場の藤野雅文氏より、「ナスでのホルモン処理は重労働。省力化と環境保全の手段として、マルハナバチが期待される」。 これに続く第1題目の講演は、三重大学の松浦 誠教授。マルハナバチの生態について、農業分野での利用を絡めた説明があった。 高知県農業技術センターの前田幸二氏からは、ナスの花粉稔性の詳細な調査をもとに、「竜馬」の品種では慣行の夜温12℃設定ならマルハナバチは一作を通じて使用可能である、との報告があった。 高知県安芸農業改良普及センターの岡林俊宏氏からは、ナスの秀品率を最も左右する要因はマルハナバチ導入にかかわらず開花から収穫までの所要日数の早さであること、アザミウマの天敵ククメリスカブリダニや、ハスモンヨトウ対策の黄色蛍光灯、ネット展張などを組み合わせるなどして総合的な防除技術を確立するとマルハナバチ導入が可能になる、という現地事例が紹介された。 高知県高幡農業改良普及センターの森田克彦氏からは、地域の試験事例のなかで、ホルモン処理併用区よりも、マルハナバチ単独区のほうが収量と秀品率が良かった、と報告。 佐賀県佐城農業改良普及センターの堤 健二氏からは、長ナスの「筑陽」の試験でもマルハナバチの有用性が証明されたこと、台木選定や整枝法も含めて、マルハナバチ導入時には樹勢管理を配慮すべきこと、なとが説明された。 総合討論講演後の総合討論は、来場者からの質問や地域事例の報告も交えて、次の項目が議論された(抜粋)。 Q.各地での普及状況は?
Q.花粉稔性と着花率の関連は?
Q.マルハナバチ受粉果実への市場からの評価は?
Q.栽培方法などの変化はあるのか?
(記録:(株)アリスタ ライフサイエンス 橋本文博)
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