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1.中国の農業概況日本の隣国である中国は世界人口の約20%(約13億)を有しながら、耕地面積は世界の耕地面積の7%しかないことは意外に知られていない。ここ数年、中国の食糧生産量は5億t前後と順調に伸びてきており、基本的には自給自足ができているが、増大しつつある人口を養うためには食糧増産は共産党政権の安定維持のためにも最重要課題の一つである。 前述のとおり中国の国土は960万平方キロメートルと日本の約26倍もあるが、農耕に適する面積は非常に少なく(約1億5,000万ha)、一方、で近代化にともない農耕地の工場、道路などへの転用が進んでおり、今後農耕地面積を増やすには限度がある。したがって、中国が食糧増産を続けて行くためには単位面積当りの収量を増やすことが最も重要であり、農薬が果たす役割が非常に大きいと言える。 中国における主要作物の作付け面積は第1表のとおりである。
2.中国の農薬製造の歴史、農薬市場の分析中国の農薬生産は1950年代に有機塩素系(BHC、DDT)からはじまり、その後有機リン系の殺虫剤に移行。80年代から90年代にかけて中国は有機塩素系農薬を全面禁止にし、それと同時にピレスロイド、カ-バメ-ト系の農薬の生産が始まった。90年代になってからは外資との合弁による原体合成、製剤、小分けが活発化しており、なかでもノバルティス、アグレボ、ゼネカ、デュポンなどの欧米勢が先行している。 中国の農薬生産能力は100%A.I.ベースで69万t、96年度の生産量は約35万t。生産品目数は181(殺虫剤89種、殺菌剤42種、除草剤42種、PGR8種)。近年の傾向を見ると殺虫剤・殺菌剤の生産量が漸減、一方で除草剤の生産量が顕著に増加している。これは近年の改革開放に伴い農村人口が都市部に流れ、農業の省力化が必要不可欠になったことと密接な関係がある。
前記のとおり中国の農薬生産能力は非常に大きいが、実際の国内需要は22万t前後。これに輸入の5万t程度を足しても合計でせいぜい28万tにしかならない。つまり中国の農薬業界は構造的に供給過剰の状態にあると言える。また生産品目が古く、同じ品目を多数のメーカーが生産しているケースが多い(たとえばメタミドフォスなど)。中国の農薬輸出入統計を第3表に示す。 中国の農薬市場規模を正確に把握することは非常に困難であるが、金額的には世界の農薬市場規模(約300億ドル)の10%程度と推定される。
3.農薬の流通形態中国では農薬は専売制をとっており、従来農薬を販売できるのは旧商業部傘下の農業生産資料公司(AMPC)のみであった。その後農業部傘下の植物保護公司、農墾公司、農薬製造メーカーにも門戸が開放され、さらに近年合弁外資にも自社品に限り国内販売が認められている。 農薬の流通形態はルートによりまちまちだが、おおむね第1図の通り。 輸入農薬については従来輸入許可証と輸入枠が必要であったが前者は廃止となり、後者も形骸化しはじめており、外資さえ調達できれば上記専売公司が輸入することは比較的容いになっている。 ((株)アリスタ ライフサイエンス 北京駐在員)
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