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前回は両国における農業・テンサイ事情について見聞きしたことを述べたが、今回は引続き両国における主要病害虫の発生と防除状況について述べたい。 1.イタリア・フランスにおける主要テンサイ病害虫イタリアではそう根病が褐斑病と並んで最も深刻な病害である。ミラノ東部とツーロン近郊のみは比較的発生が軽微だが、それ以外の全てのロンバルディアでは激しく発生している。防除法は、今のところ耐病性品種に頼るのみ。発病を半分におさえることのできる品種も中にはあるが、収量・耐病性のバランスを兼ね備えている品種は少なく、選択に苦慮しているようである。抵抗性品種の評価方法として、Rhizomania signal(Na×K/ α―N)の説明があった。 褐斑病はポー川南部・西部はやや少発生だが、その他の地区は甚発生の状況。6月末~7月初の初発が一般的で、防除は15~20日間隔で3~4回、収穫が遅い畑は6回散布することもある。通常、感受性品種には6月下旬から散布を開始し(うどんこ病防除を兼ね、イオウを散布する)、耐性品種には7月中旬頃から散布を開始する。
▲イタリアにおけるうどんこ病 (発病著しく葉は黄化している)
その他の病害としてはうどんこ病・斑点病の発生があるが、褐斑病防除薬剤が効くので大きな問題にはなっていない。うどんこ病の発生地域はポー川流域の南部とイタリア中心部および南部である。多発地域では、1回目にイオウ、2回目にEBIとスズの混用を行なっている。さび病も発生するが経済的損失は少ないようである。 害虫としてはハリガネムシ、トビハムシ、ゾウムシ、カメノコハムシ、ヨトウ等。日本では耳にしない害虫も2、3あった。稀にアブラムシ(Yellow virus)の発生もあるが大きな問題ではない。 最も問題なのはシスト線虫で、品種・農薬では対処できず、アブラナ科野菜をCatch cropとして輪作を行なって線虫密度を下げているが効果は不十分とのことである。また、抵抗性品種について試験中。シスト線虫発生地域はそう根病発生地帯とほぼ一致しており、テンサイ作付の歴史が古い地域である。
EBI耐性菌についてAgronomica社に質問したところ、イタリアでの褐斑病防除はEBI剤+接触保護殺菌剤(スズ剤、銅剤等)の混用散布が主流であり、混用によって作用点が増え、耐性菌の出現を回避できるとの考えのようであった。EBI剤の使用回数制限の考えはなく、ほぼ毎回EBI剤を混用している。実際に今のところ、EBI耐性菌は全く出現していない。単用でローテーションを組み、かつ使用回数を2回以内として耐性菌出現に備えている日本の考え方とは異なり、耐性菌発生の懸念はさほど抱いていないように見受けられた。しかし、ANBのDr.Tugnoliは褐斑病は薬剤耐性菌が生じ易いので耐性品種の抵抗性強化は必要との意見で、薬剤耐性菌に対する見方は様々であった。
▲フランスにおける萎黄病
フランスにおける主要病害は褐斑病、うどんこ病、斑点病、さび病で、発生面積はうどんこ病がもっとも大きい。収量への被害は褐斑病がもっとも大きく、無防除で20%減収、うどんこ病は10%減収する。したがって、褐斑病、うどんこ病が最重要病害である。殺菌剤の散布は収穫45日前まで2回、多くても3回、散布水量は150~200リットル/haだが100リットル/haも試験中である。散布水量は日本の15~20%と少なく合理的でありコスト低減になる。 そう根病も問題であり、Saint Louis Sucre社(フランス第2位の製糖会社。ピカルディ-、シャンパ-ニュ、ノルマンディ-地方を中心に7万7千ha、8,000農家のテンサイ産地を抱えている)では、使用されているテンサイ品種の15%がそう根病耐性品種である(全仏では25%)。実際のところ、収量への影響はそれぞれの品種の収量特性による差異が大きく。そう根病の発病による差異はさほど大きくないとSLS社のMr. Chassineは語っていた。また、当地方の土壌はpH8.0位の粘土質系土壌であるが、さらにライムケーキを畑に戻しているという(20~25t/ha、販売価格25フラン/t)。土壌pHが高いにもかかわらず、ライムケーキを散布している実態は、そう根病の発生から見ると懸念されるものであるが、テンサイの発芽・生育向上のために必要とのことであった。シスト線虫は著しくはないが発生が見られ、アルジカルブ剤の効果は確認されているが高価なので使用されておらず、そう根病同様に薬剤対応は取られていない。 2.テトラコナゾ-ルについて本化合物は、Isagro Ricerca社が1980年~90年にかけて発見・開発した、“新世代のトリアゾール”である。本剤は、N―ヘテロ環(トリアゾ-ル共通の構造)と、各々のトリアゾ-ル独自の構造(テトラコナゾールの場合はテトラフルオロエチル基:OCF2CF2H)との構造上の距離が従来のトリアゾ-ルよりも長く、そのため下記のような様々な特長を持っている。(Isagro Ricerca社による説明)。
(北海道てん菜協会技術部長)
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