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粒剤による防除効果キャベツ生育初期のコナガを防除するために粒剤施用を行なった。試験は長久手町の農総試内の圃場で行ない、キャベツ品種はYRわかばを供試し、定植直前にアセタミプリド粒剤、ベンフラカルブ粒剤、カルボスルファン粒剤の所定量をセルトレーのキャベツ苗に処理しその苗を定植した。 その結果、アセタミプリド粒剤1g/株処理は処理34日後の密度指数が25.8と低く、定植後約1か月間はコナガの密度を抑えられることがわかった。ベンフラカルブ粒剤、カルボスルファン粒剤でも処理24日後の密度指数はそれぞれ57.7、59.9となり、ある程度の効果がみられた(第2表)。また、これら3粒剤はコナガ以外のアブラムシ類、アオムシに対しても効果が高いことを調査で確認している。コナガの密度は天敵の存在にも左右されるが、粒剤は散布剤と比較して、薬剤が直接天敵にふれる機会が少ないため、散布剤ほど天敵への影響はないと思われる。粒剤の苗処理は非常に省力的であり、また、害虫の初期定着を遅らせることができ、初期定着直後は害虫の若齢期の固体が多くなるため、散布剤の効果が出やすくなる。それにより薬剤の散布回数を削減することが可能になる。
▲コナガによる被害
散布剤による防除効果圃場において散布剤のコナガに対する防除効果を検討した。試験は長久手町の農総試内の圃場で行ない、キャベツ品種はYRわかばを供試し、各散布剤所定濃度の薬液を動力噴霧器を用いて10a当り250lの割合で散布した。 その結果、A水和剤(BT剤)、ゼンターリ顆粒水和剤、クロルフェナピルフロアブルは散布12日後まで幼虫密度を低く抑え、高い防除効果が認められた。B水和剤(BT剤)は、他のBT剤に比べ効果はやや劣った(第3表)。
次に、BT剤に抗生物質殺菌剤を混用することによって、コナガに対する防除効果の低下がみられるかどうかを検討した。BT剤はゼンターリ顆粒水和剤を、抗生物質殺菌剤はストレプトマイシン剤とカスガマイシン・銅水和剤を供試し、各薬剤とも1,000倍で混用した。その結果、各混用区とも散布12日後まで幼虫数を低く抑え、高い防除効果が認められ、ゼンターリ顆粒水和剤1,000倍単用区と差はみられなかった(第4表)。抗生物質殺菌剤混用によるゼンターリ顆粒水和剤の効力低下は認められなかった。今回の試験は混用後、直ちに散布を実施したものであるが、混用後23時間経過した薬液を散布した場合、BT剤の効果が低下するという報告もあり、BT剤と抗生物質殺菌剤を混用する場合は混用後直ちに散布する必要がある。
現在のところ、コナガに対して効果の高い殺虫剤はBT剤、クロルフェナピルフロアブル、エマメグチンベンゾエート乳剤ぐらいで、数がかぎられており、系統の異なる殺虫剤のローテーション散布は難しい状況にある。また他府県の報告を見るとBT剤に対する抵抗性を獲得したコナガが出現してきている。愛知県においてはまだそのような事例は確認されていないが、BT剤が頻繁に使用されている現状を見ると、近いうちに抵抗性を獲得する恐れは十分にある。
おわりに現在、コナガに有効な殺虫剤が数種開発されてきており、それらの殺虫剤は近い将来、農薬登録されると思われる。BT剤についても各農薬メーカーから新しい剤が出てきている。コナガに有効な殺虫剤を長持ちさせるためには、同一殺虫剤の連続散布は避け、散布回数をできる限り減らすことである。そのためには、ナズナ、イヌガラシ、スカシタゴボウなどのコナガの多く寄生する雑草は除去し、粒剤施用によりコナガの初期密度を下げ、フェロモントラップなどを利用して発生状況を的確につかみ、各圃場の発生状況に合った必要最小限度の殺虫剤の使用にとどめる必要がある。 (愛知県農業総合試験場 園芸研究所)
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