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はじめに アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドの海外編も第3回目になり、今回はヨーロッパ編をお送りする。 マーケット概観西欧・中欧・東欧を含めた広い意味でのヨーロッパにおける主な作物別栽培面積は第1表の通りである。ヨーロッパではパン類が主食であるため当然ながら小麦等のシリアルが栽培の中心となっている。それらに続いて飼料中心のトウモロコシ、糖源としてのテンサイ、準主食としてのジャガイモ(特に東欧)、食用油源としてのナタネ・ヒマワリ、そしてヨーロッパの食卓になくてはならないワイン用ブドウ等々となっている。 農業形態はアメリカ型の粗放農業とは違ってどちらかというと日本型に近い集約農業で、日本でいうと北海道の地形と気候、そこでの農業形態を思い起こして頂くとそれがイメージとしてかなりぴったりくる。 これまで東欧を除くヨーロッパ各国政府はかなりの補助金を自国農業保護のために費やしてきているが、1999年に予定されているEUの通貨統合に参画するための基準(財政赤字の減少、インフレ率の抑制等)をクリアーするため各国とも緊縮財政を基本とし、しかも程度の差こそあれ各国とも財政赤字と、増加する失業者を抱えながらの補助金政策であるため、すでに各分野・作物別に補助金の削減・カット等が始まっており、ヨーロッパの農家にとって経済的に厳しい外的環境になってきている。 将来的にも、今後東欧各国やウクライナ等がEUに加盟してくれば安い生産物の西ヨーロッパへの流入が更に加速されることになり、厳しさに益々拍車がかかることになるであろう。 したがって各国ベースで見た場合の作物の栽培面積・割合も必然的に今後変遷していくものと考えられる。
第1表 ヨーロッパにおける主要作物 農薬メーカーの動きこのような状況下各ヨーロッパの農薬メーカーは、基本的には大きな伸長の期待できないマーケットの中で、著しく増大する研究開発費・環境対策・安全性評価費用等に耐え、なおかつ競合各社に打ち勝つべく自社体力を強化する必要に迫られており。不採算部門・商品の売却・切り捨てと同時に他社との合併・新しいアライアンスの構築を模索しているようである。 我々の記憶に新しい所ではヘキスト・シェーリングの農薬事業合併によるアグレボ、サイアナミッドによるシェルの買収(現在はアメリカンホームプロダクツ)、チバ・サンド合併によるノバルティス等がその代表例であるが、もっと小さなローカルの農薬メーカーの間でもこのような動きが活発化している。 中小規模メーカーの協力体制の代表例としてAGCHEM EUROPEやAGVANCE等があり、これらはヨーロッパ各国における開発および登録をメンバー各社が協力して行ない、販売は各社がそれぞれの国で独自に行なう事を前提に結成された、それぞれが独立した農薬メーカーの集まりで、総合力としてマルチナショナルな大メーカーに匹敵するファンクションを発揮する事を歌い文句に、日本等の開発力のあるメーカーから新規開発品目や既存品目を導入することを目指している。 欧米の大メーカーを起用するよりも各社をコントロールしやすく流通コストも安上がりに出来る事が多いというメリットがあるようである。 ところで現在の西ヨーロッパにおける農薬マーケットの規模は約7,500億円で世界の農薬マーケットが約3兆円とすると25%を占める巨大市場であり、地域ベースで見た場合北アメリカに次ぐ世界第2位の市場になっている。(第1図)(国ベースでは第1位アメリカ、2位日本、3位フランス)。 また西ヨーロッパにおける各農薬メーカー別シェアーは第2表の通りで全世界のそれ(第3表)と比べるとやはり地元でもあるヨーロッパメーカーのシェアーが高いようである。
EU DIRECTIVE(以下DIRECTIVE)・統一評価への動きEU DIRECTIVEとはこれまで個々の国が独自に評価し基準を設けていた全ての化学品に対してヨーロッパにおける統一基準を作ることで、各国における評価を簡便化しながらもより安全な化学品の利用を促進することを目的として制定されたガイドラインを指しており、農薬はもちろんのこと医薬品や動物薬にもそれぞれに別々のDIRECTIVEが制定された。これからEUメンバー国で農薬を開発・販売しようとすれば、剤の新旧を問わずDIRECTIVEのPOSITIVE LISTにその有効成分が収載される事が条件となっている。 現在各大手農薬メーカーは自社品目を継続してEUで販売していくため、このDIRECTIVEへの対応に多くの時間と費用を費やしており、またこれまでゾロ品を販売してきた後発の原体メーカーは中途半端な安全性評価資料ではDIRECTIVE定めるところの要求を満たせられない為、大手メーカーと手を組むか、自社で大きな投資をして自前の安全性評価資料を準備するか、あるいはヨーロッパでの販売を断念するかの選択を迫られている。 実際大手農薬メーカーもいくつかの収益率の低い自社品目については他社へ売却する、あるいは販売を断念する等の決断を迫られている。 このような状況下、ヨーロッパの農薬工業界は以下のような影響が出る事を心配している。
本来ヨーロッパの各国政府は自由競争を促進させることによってより安価な農業資材の農家への提供を望んでいるが、DIRECTIVEの制定によって比較的安価な既存品目を市場から締め出す事にもなりかねない情勢に危惧を抱いており、今後のDIRECTIVEの運用は弾力的にならざるを得ない可能性が高いと考えられる。 一方でゾロ品メーカーに有利な対応をすると、大手農薬メーカーの収益を圧迫すると共に新規化合物の創製意欲を削ぎ、かつ本来のDIRECTIVEの目的でもある十分な安全性の確保という目的が達せられなくなるという恐れもあり、理想と現実のギャップに対してどうバランスを取りながら対応する事になるのか今後のDIRECTIVEの行方には暫く目が離せない。
当社のヨーロッパにおける農薬ビジネス当社の海外における農薬事業は前々号でお伝えさせて頂いた通り当社の独自品目については1993年にUSAに設立したアリスタ ライフサイエンスアグロ社を中心に展開しているが、ヨーロッパにおいては同社との緊密な協力関係の下フランスアリスタ ライフサイエンス社が管轄し、各国での販売を地域および品目特性の実状に即して選別したディストリビューターを通じて行なっている。 販売・マーケティングおよび開発・登録それぞれの分野に通じた専門家を擁しており、日本の農薬メーカーに対しても開発から販売に至るまで一貫したサービスがご提供できる体制が整っている。 ((株)アリスタ ライフサイエンス 生物産業部アグロケミカル第1課)
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