手軽で気軽なバラ栽培に役立てるオルトラン粒剤の上手な使い方
農薬ガイドNo.114/((2008.8.30)
筆者:玉置 一裕
 
わが国の家庭園芸愛好者数は、総務省「平成18年社会生活基本調査」によると3,200万人。一時より減ってはいるが、現在はバラと野菜が人気を集め、特にバラ栽培は、主婦層を中心とした女性層にいっそう広がる勢いを見せている。
楽しみ方の内容も、従来の「園芸技術を駆使して育てて立派に咲かせる」から、「暮らしの中で手軽に気軽に栽培し花と集いを楽しむ」といった方向に変わってきている。 さまざまな家庭園芸用薬剤の中で、最も知名度が高いものの一つがオルトラン。特に粒剤タイプは愛好者の「手軽で気軽なバラ栽培」といったニーズに合致している。

変わる愛好者層・栽培するバラ

 休日のバラ園。ベビーカーに子どもを乗せた若いママが二つのポット入りのつるバラの苗を手にして「どちらが育てやすいのですか?」と店員に聞く。バラを育てるのは初めてだという。また学生風の女性二人が専門用語を並べながら、バラについてあれこれ議論している。手に持つのは、ローズウォーターやバラを使った香粧品の製品情報が掲載された女性雑誌-かつてバラが「高嶺の花」だった頃は、決して見られなかった光景だ。
バラの愛好者層や楽しみ方の変化と、栽培されるバラの種類の移り変わりが、現在のバラ栽培を「手軽で気軽な~」と方向づけている。
2000年ごろまでバラ栽培の主流は、ハイブリッド・ティー(四季咲き大輪種)。愛好者は主に男性で典型的なのは「真紅の大輪の剣弁高芯咲きの花を立派に咲かせる」という人たちだ。この層は、一輪の花を立派に咲かせるために園芸技術を駆使する。植物の生理はもちろん用土・肥料・薬剤に関する知識は深く、薬剤は「効く」となれば普通物以外でも入手して、組み合わせて縦横無尽に使用する。


▲ きりっとした真紅の剣弁高芯咲きの代表種‘クリスチャン・ディオール’

 また1997年頃からのガーデニングブーム以降「やさしい色合いのロゼット咲きのオールドローズを無農薬で育てたい」という人が増えた。主婦層中心だ。この層は化学品を敬遠し有機栽培で、害虫防除には木酢液をはじめとする天然由来の原材料を使用した自然農薬を利用する傾向が強い。


▲写真オールドローズはやさしい雰囲気が身上。‘マダム・ハーディ’

剣弁高芯咲きハイブリッド・ティーも、オールドローズもそれぞれ異なった美しさがある。「バラ栽培」とひとくくりにするとこの両者は一見反対の方向に見えるが、実は栽培するバラの種類の性質とそれに適した栽培の方法が違うだけだ。
ハイブリッド・ティーの一輪を立派に咲かせるためには太いシュートを長くのばす必要があり、当然ながら多肥栽培となる。害虫や病気など傷みなく葉傷なく、立派に咲かせようとすれば、薬剤も多種類を駆使する必要がある。
一方、主に春、一季咲きのオールドローズを自然な感じで咲かせて楽しもうとすれば、無農薬でも十分だ。
しかしいずれの楽しみ方も、「バラ栽培は手間がかかる」といった、一般の印象からは、逃れられないでいた。

30代主婦にまで広がるバラ栽培

ガーデニングブーム以来10年以上経った現在、育てる品種も愛好者層も、楽しみ方も変わってきている。
栽培される品種の主流は「モダンシュラブローズ」※と呼ばれる品種群が中心になってきた。
愛好者の年代層は従来の中心層とされた50歳代だけでなく40歳代、30歳代まで下がってきており、現在ますます広がりをみせている。中には初めて植物を育てるのがバラであるなど、きちんとした植物や園芸の知識が無くして、バラ栽培を始めた人も多い。
その動機は、植物が好きでそれをいかにうまく育てるかということではなく、自分の暮らしの中にバラがあり、「バラのある豊かな生活」を楽しむといった方向が主流だ。極端に言うと、ファッションや旅、グルメ、スイーツ、そしてブログを書くのと同じ感覚だ。
講習会も実施しているある人気ナーセリーによると、バラ栽培を始めたきっかけを聞くと「バラが咲いた庭で“お茶”したいから」と答える人が8割を占めるという。
実際に栽培するにあたっては手軽であることも大切。働く主婦も増え、家事や育児等にも手がかかり何かと忙しい。したがってバラ栽培にもあまり手をかけずに咲いてくれること、ローメンテナンスであることが大事な要素となっている。

※モダンシュラブローズ 1867年。従来のハイブリッド・ティーやフロリバンダ(房咲き中輪種)等の系統にあてはまらないものが多く、比較的栽培に手間がかからない。主に半つる性だが、木立ち性タイプもある。ベランダ等での鉢植えはもちろん、草花と一緒に観賞する混植花壇(ボーダーガーデン)にも向いている。

ブランド品シュラブローズが主流

モダンシュラブローズで代表的なものが英国デビッド・オースチン・ローゼズ社作出作の「イングリッシュローズ」。イングリッシュローズはオールドローズとモダンローズを交配、オールドローズのやさしい色合いと花弁の重ねの多い咲き方に、モダンローズの四季咲き性を兼ね備えている。日本ではすっかりポピュラーになった「バラのブランド」だ。より華やかな雰囲気の、フランスのバラも愛好され、ブランド化している。たとえば仏デルバール社の作出品種は「フレンチローズ」として販売され、“おしゃれなバラ”として先端層に人気を集めている。
いずれも、花が魅力的なだけでなく丈夫で、初心者でも育てやすい。


 
▲しっとりとした色合いの深いカップ咲き、
フルーティな香り高いイングリッシュローズ‘ジュード・ジ・オブスキュア’


 
▲フレンチローズの代表種‘ナエマ’。ゲランの同名香水にちなむ花名、
やさしい桜ピンク色の深いカップ咲きと甘美な芳香で、人気を集める

手軽な栽培にうってつけ

オルトランは、家庭園芸用薬剤の中でも最もよく知られている「ブランド」。剣弁高芯咲き栽培が主流だったころからよく知られ、基本薬剤の一つとなっており知名度は高い。
現在の愛好者層、最近バラを栽培し始めた層は、それほど無農薬栽培だけにこだわる層ではない。初めて園芸を行いバラを栽培する層にとって害虫は、心理的に見るのもイヤなものだ。オルトラン粒剤は一度株元にまいておけば2週間効果が持続する。
作業性も大切だ。薬剤を希釈し噴霧器でわざわざ散布するのではなく「ぱらぱらまくだけ」なので抵抗感が少ない。薬剤散布を敬遠しがちな都会地の近隣の人にも、薬剤散布を行っているとは見えないので安心してまける。さらにオルトランは害虫や作物の適用範囲も広く、バラだけでなく、草花類や野菜類にも使える。商品の価格は同種の薬剤に比べ経済的だ。
現在主流のモダンシュラブローズの「手軽で気軽なバラ栽培」に、オルトラン粒剤はうってつけの薬剤といえる。

人気ローズアドバイザーが語るオルトラン粒剤利用の意義と上手な使い方

これまで世界で作出されたバラは、25,000品種とも30,000品種とも言われる。日本で現在流通するのは3,000品種以上ともいわれ年々その数は増え続けている。
産經新聞メディックスでは、これら増え続けるバラの品種の中、愛好者が品種を選ぶ目安として、バラを育種家やナーセリーのブランド毎にまとめた『New  Roses』を年1回発行している。読者アンケート等によるとこの本の中で毎回トップ人気を誇るのが、アリスタライフサイエンス提供の3人の人気ローズアドバイザーの対談コーナーだ。



このコーナーは2008年版で3回目。3氏とも当初からバラの手軽な気軽な栽培=現実的な栽培の推進を図る趣旨に賛同し、参加してもらっている。
園芸誌はもちろん一般誌、TVや新聞、そして講習会や講演会を通じてますます人気が高まる3人のアドバイザーたちに、オルトラン使用の意義、効果的な使い方について語ってもらった。

○大野 耕生(おおの・こうしょう)さん:ローズグロアー




「バラ界の貴公子」と呼ばれる。テレビ・ラジオ・雑誌・講演会で、手軽なバラ栽培普及を行う。甘いルックスとソフトな語り口にファンは多い。バラとファッションや生活との関わりを追求。


まくだけ手軽

家庭でのバラ栽培に、オルトラン粒剤は最も手軽です。薬剤の濃度をはかって希釈するなど、細かい作業が必要ないからです。 またオルトランは農薬ですが、ぱらぱらまくだけなので、薬剤散布を敬遠しがちな人たちにも、心理的な抵抗感が少ないと思います。(談)



大野さんおすすめのバラ:シャンテ・ロゼ・ミサト
黒赤の蕾からライラック~ピンクのグラデーションのやさしい花色に開花するカップ咲き中輪種。ハーブ類が入り混じったような独特の芳香がある。樹は直立性で、とても丈夫。歌手・渡辺美里さんにファンの大野耕生さんが捧げた


○有島 薫(ありしま・かおる)さん:ローズアドイバイザー/三越日本橋本店屋上チェルシーガーデン




ブログのハンドルネームは「フレグランス」さん。講演・執筆等を通じ、バラの手軽な栽培を永年推進。コンパクトな鉢栽培ノウハウには定評があり、実践に基づいた理路整然としたアドバイスに、ファンの信頼は厚い。


4月~9月に定期的に散粒

オルトラン粒剤は、害虫の防除にいちばん手軽に使える薬剤だと思っています。薬剤は散布するとき自分にかかることもありますが、オルトラン粒剤は土の表面にばらまくだけなので、その不安もなく、とても手軽です。
実際にはアブラムシが発生する4月中旬くらいから9月いっぱいくらいまで継続して利用しています。夏の剪定以降もアブラムシが発生するからです。
散粒のポイントは、土の表面が湿っているときにまくこと。雨がふった後や、晴れたときでも水をまいておいて散粒し、その後にもう一度水をまくなどしています。量は鉢植えでは1鉢あたり1回2gを基本としています。(談)



有島さんおすすめのバラ:フレグランス・オブ・フレグランシズ
大野耕生さんが有島さんに捧げた大人の気品を持つ花。薄墨桜を思わせるグレイッシュ・ラベンダー色で、花びらの周囲が濃く中心に向かって淡くなり、周囲に若紫色の糸覆輪を残す。大輪。名の通りの芳香も魅力。切り花としても販売される、ガーデン用との兼用品種

○小山内 健(おさない・けん)さん:バラ鑑定士/ローズソムリエ/京阪園芸販売部栽培課




豊富な知識と栽培経験から、分かりやすいたとえで手軽なバラ栽培をアドバイス。テレビ東京系TVチャンピオン「全国バラ通選手権」2連覇。育種プロデュース、執筆・講演での栽培アドバイス、また埋もれた銘花の鑑定・発掘にも注力している。


安定した効果

アブラムシに代表される小さな虫は、特に初心者の方にとってイヤなもの。手で取るととても手間がかかります。
そういったときオルトラン粒剤はぱらぱらまいておけば、知らない内に害虫はいなくなります。いつでも手軽に利用でき、安定した効果が得られます。定期的にまいておけば安心です。(談)



小山内さんおすすめのバラ:てまり・みやこ
‘てまり’(右)は、わずかにアプリコットを含むソフトピンク色のロゼット咲き、‘みやこ’(左)は、やさしげなピンク色のディープカップ咲きで散るまでかたちを崩さない。いずれも人気種‘粉粧楼(ふんしょうろう)’との交配により誕生した中輪・芳香種。花付き、花保ちに優れ、花傷みがしにくい。切り花とガーデン用苗、いずれでも販売
(産經新聞メディックス New Roses編集)