ブドウ病害に対するオーソサイド水和剤の防除効果
農薬ガイドNo.108/B(2004.6.30) - 発行 アリスタ ライフサイエンス株式会社 筆者:深谷 雅子
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 はじめに

 秋田県のブドウ栽培面積は約290haで、「キャンベル・アーリー」、「スチューベン」、「ナイアガラ」および「巨峰」等が栽培されている。これら品種のほとんどは露地栽培であり、開花期が梅雨期にあたる本県では天候不順になりやすく、種々の病害の発生が問題になる。特に灰色かび病、晩腐病、およびべと病は本県の重要病害である。
 また、収穫期には秋雨前線が活発化して降雨が続き、果実腐敗を引き起こし、品質低下を招くなどの問題も生じている。このため、生育期前半の防除に重点を置き、一次感染を抑えるとともに果粒肥大期には早めに果房に袋かけや笠かけを行ない、二次感染を防止する対策を講じている。
 秋田県のブドウ病害防除体系の中で、オーソサイド水和剤は灰色かび病や晩腐病の予防剤として位置づけられている。以下に両病害の発生状況を述べるとともに、これまで実施した防除試験の結果を紹介する。

1.発生状況

(1)灰色かび病

 秋田県での灰色かび病の初発は5月中~下旬(展葉数が5~6枚頃)に葉で認められる。発芽後、風の強い日が続くと、展葉間もない葉が裂傷を負い、その傷口から本菌が感染するため発生の多い傾向がある。葉の病斑は次第に拡大して離脱する場合もあるが、多くは生育後半まで残っている。
 灰色かび病の主要な感染時期は、開花直前から幼果期にかけてである。開花期前後に低温・多雨の気象条件になると花穂での発生が多い。さらに落花期に低温で落花がスム-ズに進まず、果粒に花冠やおしべ等の花器残さが付着した状態が続くとそれらが二次伝染源となって幼果や成熟果の発病を引き起こす。収穫期に長雨が続くと、裂果しやすくなり、発生が助長される。熟果の発病は有袋果実で多い。これは発病した花器残さが風雨などで果房から離脱するのが抑制されること、袋内が発病に適した湿度条件に保たれることなどによると考えられる。
 なお、多湿になりやすいハウスやトンネル被覆など施設栽培のブドウでは本病の発生が多い傾向がある。

(2)晩腐病

 病原菌は結果母枝や巻きひげ等で越冬しており、秋田県では主に6月上旬に一次感染が始まる。なお本県の平年の開花期は、キャンベル・アーリーが6月3半旬、巨峰が6月4半旬である。
 晩腐病の初発は開花前の花穂で認められ、花蕾が褐変する。果実では果粒に水が回り、着色が始まる頃に病斑が現れる。果実の熟度が進むにつれて潜伏期間が短くなり、成熟期には本菌の感染後、約3日で発病する。発病果粒は腐敗し、やがてミイラ化する。露地で無袋栽培の場合には、収穫期に降雨が続くと短時日のうちに甚大な被害を被ることがある。したがって、薬剤防除は一次発生量を抑え、二次伝染源の密度を低下させることを目的に行なう。そのため、越冬源上の胞子形成を抑制させる発芽前防除と花蕾や果実への感染を防止する生育期防除が実施されている。
 また、本病は感染期間が長く、しかも収穫期に甚大な被害を被るため、薬剤による防除とともに袋かけや笠かけ等で降雨を遮断し、成熟果への感染を抑えることも重要である。

2.オーソサイド水和剤のブドウ灰色かび病に対する防除効果

 1976年頃、秋田県ではブドウ灰色かび病に卓効を示していたチオファネートメチル剤の効力低下を生じた。その原因はチオファネートメチル剤やベノミル剤(ベンズイミダゾール系剤)に対する耐性菌の出現によるものであった。そこで代替剤の検索を1977年から1981年にかけて行なった。そのうち1977年と1978年の試験を紹介する。
 薬剤散布は5月下旬(新梢20㎝頃)から6月下旬(落花直後)にかけて約10日間隔で4回行なった。その結果、オーソサイド水和剤800倍液は発病が少なく、防除効果が認められた(第1図、2図)。また、第2図はベンズイミダゾール系剤耐性菌が高率に出現している圃場での試験結果である。ここに示すようにオーソサイド水和剤はベンズイミダゾール系剤耐性灰色かび病菌に対しても防除効果が認められた。


▲第1図 ブドウ灰色かび病に対する各薬剤の防除効果


▲第2図 ブドウ灰色かび病に対する各薬剤の防除効果

3.オーソサイド水和剤のブドウ晩腐病に対する防除効果

 今回は特にタイリクとピーマンの関係に着目した。
 天敵であるタイリクの産卵特性を理解し、栽培方法の工夫としてタイリク放飼前に芽欠きを行なっておくことや、ピーマンでは新枝の第2節目と第3節目の芽欠きを控える、欠いた芽は集めて株元に置くなどのきめ細かな気配りが大切であり、天敵農法の成功のカギとなるのではないだろうか。
 また、今後、他の天敵や各種作物でもこのような関係を明らかにし、うまく天敵を定着させる栽培管理方法を見つけて実行していくことが大切である。


▲第3図 ブドウ晩腐病に対する各薬剤の防除効果

4.ブドウ病害防除におけるオーソサイド水和剤の使用方法

 オーソサイド水和剤の使用基準は使用時期が収穫30日前まで、使用回数は年間2回までである。
 秋田県では、ブドウに対する防除回数は休眠期を含め年間10回となっている。オーソサイド水和剤はこの防除体系の中で灰色かび病と晩腐病の両病害を予防する剤として使用され、7月上旬および下旬の果粒肥大期の基幹薬剤となっている。
 果粒肥大期には、薬剤散布後に薬液が乾きにくいと果粒の頂部に薬斑が残りやすい。オーソサイド水和剤も最終散布に使用した場合、その後の気象条件や栽培管理によって薬粉がリング状に残る場合がある。これを避けるために枝が何本も交差するような過密状態の新梢を間引き、また摘房を行なって、園内の通風が良くなるように管理しておくことが大切である。
 オーソサイド水和剤は、秋田県では使い慣れた予防剤として、長年、使用されている。本剤の効果を十分に発揮させるためには、病原菌が繁殖しにくい樹の管理はもちろんのこと、散布のタイミングを逸せず、降雨前に葉や果実に散布ムラのないようにかけること等、基本的な技術の徹底が必要と考えられる。

(秋田県果樹試験場)


▲ブドウ灰色かび病 落花10日後頃の果穂の発病


▲ブドウ灰色かび病 成熟期の発病(有袋栽培)


▲ブドウ晩腐病 成熟期の発病

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