新規登録微生物農薬 ボタニガードES剤を上手に使うために
農薬ガイドNo.106/A(2003.8.30) - 発行 アリスタ ライフサイエンス株式会社 筆者:和田 哲夫
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 ボタニガードES剤は熱帯や温帯に広く分布し、多数の昆虫から分離される病原菌Beauveria bassianaに由来する微生物殺虫剤で、米国で1998年に農薬登録された。日本でも昨2002年農薬登録され、本年より販売している。
 本剤は微生物農薬としては対象害虫のスペクトラムが広く、これまでの糸状菌製剤に比べ高湿度の要求度が低いため、野外でも使用可能で使いやすく、ヒトおよび環境に対して安全性が高い薬剤である。

〔ボタニガード(Beauveria bassiana GHA株)の特性〕

 ボタニガードの有効成分はアメリカ農務省のVandenberg博士が米国オレゴン州の温室でコーンルートウォームから分離したBeauveria bassiana GHA株の分生子である。
 この分生子の生育適温は25~28℃で、33℃ではわずかに生育するが36℃では生育しないため、哺乳動物や鳥類の体温では繁殖しない。環境中での生存時間は35℃で数週間、それ以上の高温では数時間~数日間である。
 また、分生子は水懸濁液中でpH 5、7および9で48時間生存する。自然水系環境中で分生子は発芽するが、昆虫宿主がいなければ2日以内に死滅する。さらに、分生子は直射日光により急速に破壊されため、実測半減期は2.58時間である。
 Beauveria bassiana GHA株の対象宿主として、日本では圃場試験でコナジラミ類(オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ)、アザミウマ類(ミカンキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ)、コナガに寄生することが確認されているが、米国ではこれ以外にコガネムシ類、ゾウムシ類、ヨコバイ類、ナガカメムシ類、カスミカメムシ類、アブラムシ類、ウンカ類、メイガ類等多くの虫が農薬登録の対象宿主とされている。

〔上手な使い方〕

 ボタニガードを実際に使用する場合、温湿度条件を適正に保つことが即効性の意味から重要となる。分生子の速やかな発芽を促すためには、散布後15時間以上は温度18~28℃、湿度80%以上を維持することが重要である。
 使用方法は、500倍希釈液を対象害虫の生息場所である葉裏、成長点付近、花等に十分にかかるよう散布する。7日間間隔で2~3回散布を行なうとよい。
 夕方に散布し、施設を締め切るか、あるいは曇天、雨天時に散布する。春雨、梅雨、秋雨等の長雨が続く時期に散布するとより高い効果が得られる。好適な条件下では散布後10~14日すると対象害虫に白いカビが生えるのを観察できる。
 本剤の効果の発現に悪影響を及ぼす恐れがあるので、散布前後2~3日間は他の殺菌剤の散布を控える。なお、使用前に良くかきまわす必要がある。

(和田 哲夫)

作物名 適用害虫名 希釈倍率 10アール当り散布液量 使用時期 本剤及びボーべリア・バシアーナを含む農薬の総使用回数 使用方法
トマト
(施設栽培)
きゅうり
(施設栽培)
コナジラミ類 500倍 200~300L 発生初期 散布
なす
(施設栽培)
アザミウマ類
野菜類
コナガ

▲ボタニガードESの適用と使用方法

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