輸入野菜の攻勢に対する防御

和田 哲夫


 カボチャやレンコン、竹の子のような重量野菜がかなりの量、輸入されており国内の農業生産に大きな影響を与えている。近年、韓国、中国そして東南アジア、中南米からの野菜の輸入が増加している。
もちろんヨーロッパ、とくにオランダからのパプリカやトマトは順調に数量を伸ばしている。
房どりトマトについてはニュージーランドからも輸入されている。

 このような輸入攻勢のなかで国内産のシェアおよび価格を維持する方法はあるのだろうか。

 実はこの現象はすでにヨーロッパで、それもオランダではすでにデジャビュというか
経験ずみなのである。

 オランダでは90年代なかばより急激に生産量が増加してきたスペイン産のトマトの攻勢により北ヨーロッパのトマト価格が暴落した。
しばらくはkgあたり30円などという価格まで下落したがその後、オランダは妙案を出すことに成功したのである。

 それは80年代後半から利用が増えてきた安全性を標榜する天敵利用によるオランダ産野菜のマーケティングである。
 オランダのハウスで栽培する果菜類は80年代前半オランダ野菜の最大の輸入国であるドイツよりまずハウス内で化学物質を多量にかけられて栽培しているのではと強いクレイムを受けていた。
 これにたいしてオランダは偶然実用化が進んできた天敵利用を全面に押し出してドイツのバイヤーの説得したのである。

 つまりオランダにとってはスペインからの輸出攻勢は形は違うものの自国の農産物を守るという点で2度目の攻防戦であったわけである。
 スペイン産が北ヨーロッパのマーケットを席捲したあと、オランダ政府および輸出会社および市場は欧州各国のスーパーマーケットチェインに対して、天敵利用による生産が可能であり現実に90%以上のオランダのハウスで天敵によって害虫防除が行われていることを認識させるキャンペーンを行ったのである。

 結果は現在オランダ産とスペイン産のトマトやパプリカは価格で差がでるばかりでなくスーパーマーケット側からスペイン産の締め出しに近い、スペインでの天敵利用を強制しはじめたのである。
しかし天敵利用は今日やろうと思ってもすぐにできるものではない。

 昨年1999年より実用性レベルでの普及が開始されたが、今年2000年には一挙に拡大することが予想されている。
ただしまだスペインのような乾燥、かつ高温の条件下での天敵昆虫の安定的利用はそう簡単に実現はしないであろう。
その間オランダはひとり安全性を錦の御旗に独占的な販売を継続できるのである。

 振り返ってみて、日本でのとりあえずの競争相手は韓国のトマト、パプリカなどである。
韓国では国の補助により多くのオランダ型ハウスが建てられ、非常にコストエフェクティブな生産が可能となっている。またス人件費も日本に比べればまだまだ安いため日本のハウス栽培農家にとってはきわめて大きな脅威といえるだろう。

 ところが韓国ではまだ天敵の輸入は原則禁止であり、実用レベルでの普及にはいたっていない。韓国の農水省にあたる農村振興院では、オランダ、アメリカ、日本での生物農薬の知見を取り入れようと、国際シンポジウムなども活発に開かれはじめている。
しかしこれもスペインの轍をふむのかどうかは分からないにしても、日本の天敵利用がまだ数歩進んでいることは否めない。
 このような有利性を活用することは、品質、食味、鮮度などの追求ととも、戦略上極めて
重要と考えられる。

2000年6月16日 和田 哲夫


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