アリスタIPM通信 これから始まる促成栽培でのIPMプログラムの重要ポイント
 
 
これから始まる促成栽培でのIPMプログラムの重要ポイント
 
これまで実施してきたスパイカルEXやスワルスキーを利用したイチゴ、ナスの促成栽培におけるIPMプログラムでの実証試験において明らかになってきたことをまとめ、本年度の促成栽培で天敵を利用したIPMプログラムをうまく実施できるよう、その重要ポイントを解説します。

1.イチゴにおけるスパイカルEXとスパイデックスの同時放飼

昨年の天敵を利用したイチゴでのIPMプログラムを実施した生産者の効果に関する集計結果では、ゼロ放飼(ハダニを化学農薬でゼロにしてから天敵を放飼すること)がうまくいっている場合には、その後のハダニの発生が非常に低密度で推移していたこと、逆に失敗例の大半はゼロ放飼が不十分であったことがわかりました。

この原因として、化学農薬を使用しても抵抗性の発達によって効果が不十分だったり、適切な薬剤を選ばなかったことでハダニが減っていない、ハダニの成虫や幼虫は死亡させたが産み落とされた卵を十分に殺すことができていなかったなどが挙げられました。ゼロ放飼に利用する薬剤として、私たちが推奨するコロマイト、アファーム等による天敵導入前の薬剤処理でも地域によっては抵抗性により十分な効果が出ない場合もあり、またこれらの薬剤は卵に対する活性は比較的弱いことも失敗例につながったと考えます。

そこで、スパイカルEXとスパイデックス(チリカブリダニ)を同時に放飼することをお奨めします。
薬剤散布をしてもハダニを取りこぼした場合のフォローを捕食力が抜群なスパイデックスに行なわせることで、完全なゼロ放飼に近づくことができ、年明け以降のハダニ密度を低いまま維持することができるからです。

チャート1.  スパイカルEXとスパイデックスの同時放飼によるハダニ防除プログラム

チャートは、10月下旬のゼロ放飼でコロマイトを使用した一例ですが、薬剤の選定については地域の農業改良普及センター等指導機関の基準に従ってその地域に最も適したハダニ用防除薬剤を選択して構いません。




2. ナス促成栽培における天敵利用プログラムの時期別作業ポイント

ナス促成栽培で天敵を利用したIPMプログラムを行なうに際して、留意すべきことは
1. 初期放飼を早めに行い十分にスワルスキーの密度を高めること、
2. 厳寒期の天敵密度低下時は影響のある薬剤を利用してもアザミウマの密度をゼロにしておくこと、
3. スワルスキーの春放飼のタイミングを間違えず、天敵の増加をあわてずに待つことにあります。

グラフに示すように徳島県での事例では、秋放飼を9月下旬で実施しており十分な増加が認められています。

スワルスキーの秋放飼には、日中の外気温が20℃以上あるときに実施してもらうとうまく行きます。

 

 

以下に各時期ごとの作業を示します。


放飼時期と11月までの作業
■ 物理的防除資材の設置
  ・ホリバー青色100枚/10a
  ・防虫ネット(サンサンネット目合い1mm以下又はスリムホワイト30等)
■ 定植時粒剤処理:スタークル/アルバリン粒剤等
■ 2週間後にスワルスキー(2本/10a)の葉上直接放飼
  ・放飼前アザミウマの発生があれば、スタークル/アルバリン顆粒水溶剤散布のこと

ポイント:
スワルスキー放飼前にアザミウマが発生しているときには、スタークル/アルバリン顆粒水溶剤などスワルスキーに影響のない薬剤をスワルスキー放飼2日前に散布します。
ゼロ放飼のためにスピノエース、アファームなどの薬剤を散布すると、影響期間の2週間を経過する頃にはアザミウマの卵がふ化してきたり、外部から侵入して密度が増加し、スワルスキーの放飼適期を失うことが事例として発生しています。スピノエース、アファームを使用するならば、定植前が適当です。

スワルスキー放飼後

スワルスキー放飼2週間の薬剤散布は行なわないようにすることで、放飼2週間でスワルスキーの速やかな定着と増加が期待できます。10月中旬以降~11月末までは、これらの物理的防除手段とスワルスキーの密度によってアザミウマ密度増加が充分抑制されます。

12月以降3月までの作業
■ 12月の作業
  ・アザミウマの密度が目立ったら、影響の少ない薬剤の処理を行なう。
■ 1月の作業
  ・アザミウマの発生有無にかかわらず、アファーム乳剤やハチハチ乳剤のような高活性を期待できる薬剤を散布し、アザミウマ密度をゼロにする。
■ 2月~3月中旬(スワルスキー春放飼前)
  ・この時期にアザミウマ密度が増加した場合には、3月中旬のスワルスキー放飼までに影響の残らない薬剤を利用する。

ポイント:
“ナス”促成栽培では、1月の極寒期はスワルスキー密度が極端に低下します。ここで無理にスワルスキーを温存させようとして薬剤散布を控えると、3月以降アザミウマ密度の急激な復活につながるということが分かりました。この時期は、あくまでアザミウマ密度をゼロにすることを心がけ、影響があってもアファームやハチハチなどの効果の確実な薬剤を利用してください。徳島だけでなく、熊本でもこのような方法で成功につながりました。


3月放飼以降の作業
■ 3月中旬以降
  ・スワルスキー春放飼は、必ず3月中旬以降に行なってください。
  ・放飼量は2本/10aとし、放飼方法としてコーヒーフィルターを利用するのがよろしいです。(フィルター400枚/10a)
■ 3月中旬(放飼後) ~5月末
  ・スワルスキー放飼後アザミウマ密度が増加した場合には、影響の少ない薬剤を散布する。

ポイント: 
これまでの結果から、スワルスキーの放飼が3月中旬以降に実施した場合に高い定着性と防除効果があることが分かってきました。しかし、春放飼後のスワルスキーの密度増加は、秋に比べて緩慢であり約1ヶ月かかって葉当たり1頭を超えてきます。

春放飼における葉上直接放飼の場合、施設内の環境の変化(急激な低温、薬剤の散布等)に対して対応できない場合がありますが、コーヒーフィルターを利用した場合にはフィルター内から徐々に分散するため時間はかかりますが確実に密度の増加が可能です。(コーヒーフィルター法の手順はアリスタIPM通信第4号を参照ください)

12月の作業も含め、アザミウマの密度が抑制できる天敵に影響のない薬剤としては、プレオ、スタークル/アルバリン顆粒水溶剤、マッチ乳剤、ノーモルト乳剤、カスケード乳剤などが挙げられます。

 
 
※2010年10月15日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。