アリスタIPM通信 ガーベラにおけるカブリダニ製剤を基幹としたIPMの現地実証
 
 
ガーベラにおけるカブリダニ製剤を基幹としたIPMの現地実証
静岡県病害虫防除所 片山晴喜
 

静岡県内では、西部および志太榛原地区を中心にガーベラが約26ha栽培され、生産額は全国一位を占め、本県における主要な花きの一つである。

ガーベラ栽培ではコナジラミ類、アザミウマ類、ハダニ類、チャノホコリダニ、マメハモグリバエ、ハスモンヨトウおよびオオタバコガと多種類の害虫が発生する。これらの害虫は薬剤感受性が低下している種類が多いが、更に最近では、薬剤抵抗性が発達したタバココナジラミ バイオタイプQが加わり、生産者は頻繁な薬剤防除を強いられている。

一方で、いちご栽培では、チリカブリダニやミヤコカブリダニの利用が普及しつつある。また、ピーマン等でもスワルスキーカブリダニの登場によりコナジラミ類やアザミウマ類の防除への利用が始まった。このように市販されている天敵類の充実、果菜類におけるIPM技術の確立とノウハウの蓄積により、花き類生産場面でも天敵利用の可能性が高まっている。ガーベラは花茎を出荷するため、葉の被害はある程度許容される。そこで、現地のガーベラ栽培施設において、天敵カブリダニ類を基幹としたIPM防除体系の実証試験を実施した。

IPM防除体系の概略は第1表の通り。コナジラミ類、ハダニ類およびアザミウマ類に対して3種類のカブリダニ製剤を用い、天敵類に影響の小さい薬剤、微小害虫の成虫を捕殺する粘着トラップ、害虫の侵入を抑制する防虫ネットを組み合わせた。生産者、JAおよび農林事務所の協力の下、牧之原市のJAハイナン管内および浜松市のJAとぴあ浜松管内の各2園主の施設においてIPM防除体系の防除効果を慣行の薬剤防除と比較した。 

 
ガーベラ栽培では5~6月に株を定植し、2~3年間栽培を継続する。定植1~2週間は天敵への影響期間の短い薬剤を散布し、天敵放飼前に害虫の初期発生を極力抑え、定植4~6週間後にカブリダニ製剤を放飼した。秋および2年目の春と秋にカブリダニ製剤の追加放飼を行った。なお、H21年~22年の試験では3種類のカブリダニを各放飼時期に10a当りボトル製剤各3本を放飼したが、H23年~24年の試験ではスワルスキーカブリダニ同2本(5万頭)とミヤコカブリダニ同1本(5千頭)を毎回放飼し、チリカブリダニはハダニ類が増加したときに2本(4千頭)を放飼することした(第2表)。なお、浜松市のD氏の圃場では  スワルスキーおよびミヤコカブリダニはパック製剤(100パック/袋)を用いた。
天敵放飼後の薬剤防除については、天敵に影響の小さい薬剤のリストを生産者に示し、薬剤の選定  および実施時期については生産者の判断に任せた。
 
 
カブリダニ類および害虫の発生状況を把握するため、放飼直前から月に2回1区当り40~60株を見取り調査した。牧之原市のB氏の調査結果を第1~2図に示した。天敵放飼1週間後に葉上のカブリダニ類密度は増加したが、その後は減少し、放飼54日後には確認できなかった(第1図)。その後の追加放飼では株の生育により葉数が増したためか、放飼1~2週間後に葉上密度がわずかに増加する程度で、それ以降は確認できなかった。しかし、ハダニ類の発生は試験期間中に長期間抑制された。また、コナジラミ類は1年目の夏季に増加したが、薬剤防除の後は長期間に渡り低密度に維持でき、2年目の初夏に若干の発生が見られた程度であった。

慣行防除区では夏から冬までハモグリバエ類の被害が増減を繰返した。しかし、IPM区では天敵を放飼したわけではないが、被害の増加は認められず、調査期間中 被害はわずかに発生した程度であった(第2図)。
各試験のIPM区における各種害虫の発生状況について、慣行防除区と比較した概要を第3表に示した。IPM区のコナジラミおよびハダニ類の発生は慣行防除区と同等又は少なく、マメハモグリバエは全ての試験で少ない発生であった。他方、チャノホコリダニの被害はIPM区で多い場合も認められた。

生産者から各区の散布実績を聞き取り、各区の薬剤散布状況を比較した結果を第4表に示した。いずれの試験でもIPM区は慣行防除区より散布回数が減少し、その程度は19~40%に達した。殺虫剤は36~45%と大きく減少したが、ダニ剤は21~35%減少する場合と22~33%増加する場合があった。これはホコリダニ被害の増加に対応したものであった。また、殺菌剤も散布回数の減少に応じて3地点で18~28%減少した。
 
 
 
 
ピーマンやナスにおけるスワルスキーカブリダニの放飼試験では、放飼後長期間、カブリダニが作物上に定着することが報告されている。しかし、ガーベラの試験では、カブリダニ類は放飼直後に密度を増加させるが、1~2ヶ月後には見取り調査で確認されなくなった(第1図)。スワルスキーカブリダニは花粉によっても増殖が可能であり、ピーマンやナスではスワルスキーカブリダニは害虫以外にも花粉も利用していると考えられている。一方、ガーベラは開花初期に収穫されるため、株上に花粉はほとんど存在しないと思われ、害虫密度も比較的低く管理されていることから、餌の量が全般的に少ないと推測され、スワルスキーカブリダニにとって増殖しにくい環境かもしれない。

H23年~H24年の試験では、花のアルコール洗浄を試みた。その結果、収穫期の花から放飼したカブリダニ類が分離され、多い時には花当たり1頭以上に達した。ガーベラ栽培では1週間に株当り1本の花が収穫されるので、1週間に最大で10a当り4,000~5,000頭のカブリダニが圃場から持ち出される計算となる。これは放飼量の1/10に相当し、ガーベラ上でカブリダニの生息密度が上昇しにくい要因の一つの可能性がある。しかし、IPM区では殺虫剤、殺ダニ剤を2~4割削減しても害虫の発生量は慣行防除と同等か減少したことから、天敵カブリダニ類の防除効果が現れた結果であると推測される。

マメハモグリバエには数多くの土着寄生蜂が知られる。今回、IPM区では寄生蜂を放飼していないが、いずれの試験でもハモグリバエの被害は減少した。浜松市のIPM圃場ではハモグリバエ潜孔のある葉からヒメコバチ類が羽化したことから、土着寄生蜂の活動により、マメハモグリバエの発生が抑制されたと推測される。IPM区ではカブリダニ類に影響の小さい薬剤を利用したため、慣行防除区に比べて土着寄生蜂への影響も小さかったものと考えられる。

現在、カブリダニの放飼は、春から秋に3ヶ月間隔で実施している。しかし、前述のようにカブリダニの密度が高く維持されにくいため、今後は放飼間隔の短縮やパック製剤の利用、さらに防除資材のコストを検討し、最適なガーベラ栽培に適した放飼方法を確立したい。
 
 
 
※2013年2月28日現在の情報です。製品に関する最新情報は「製品ページ」でご確認ください。